日本初の完全生分解ヴィーガンレザーが誕生 農作物の搾りかすが“革”になる――渋柿と甜菜が支える新素材

EUMIS biomaterials(東京都大田区)は4月22日、本革や合成皮革(ヴィーガンレザー)に代わる循環型バイオマテリアル「EUMIS skin」を開発したと発表した。プレスリリースによれば、耕作放棄地に実る渋柿を発酵させた伝統素材「柿渋」と、甜菜糖製造過程で廃棄されるパルプを独自技術でセルロースナノファイバー化した二つを主要原料に用いることで、100%植物性かつ生分解機能を実現した。
口に入れても安全というほど“食品に近い”質感が特徴で、果実の香りや種の粒が残るなど天然素材ならではの風合いが感じられるという。EUMISによると、世界で200社超が植物性レザーに挑む中、完全植物由来で生分解性を備える製品は1割未満とされ、日本発の事例は同社が初めてだ。
背景 ファッション産業の大量廃棄が突きつける循環経済への転換
アパレル業界は石油産業に次ぐ環境負荷を抱える。エレン・マッカーサー財団の報告書(2017年)は、世界で**「1秒ごとにトラック1台分」の衣料品が焼却・埋立処分される**と指摘し、直線型経済の限界を浮き彫りにした。地球環境市民会議 – 市民の立場から温暖化のない未来をつくる 地球環境市民会議
さらに、ヴィーガンレザーの主流であるPU/PVC系合成皮革は石油依存から脱却できず、温室効果ガス排出やマイクロプラスチック問題を温存する。市場規模は2023年に95億ドル規模へ拡大したが、持続可能性への疑問符は残ったままだ。
EUMIS skinはこうした“革新的代替”が抱える矛盾に応え、生物圏循環が可能なマテリアルとして位置づけられる。
NEDO NEP採択で事業化へ――ご当地skin構想が地域に循環を生む
EUMISは4月、NEDOの「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業(NEP)開拓コース」に採択された。プログラムを梃子に、小ロット量産体制を整えつつ、地域の未利用資源でバリエーションを生む“ご当地skin”の製造を進める。各地に小規模工房と回収・堆肥化システムを配置し、地域課題の解決と雇用創出を同時に狙う計画だ。農家、自治体、ブランドなど多様なステークホルダーが交わる拠点とすることで、循環型コミュニティのハブを目指す。
「自然の循環とものづくりの共存」を掲げる仕立て屋の挑戦

爪長代表は仕立て屋としてオーダーメイドに携わってきた。「ものづくりは資源を消費し廃棄を生む。それでも人生を彩る行為を諦めたくない」と語り、コロナ禍に自宅キッチンから素材開発をスタートさせた。「EUMIS skinは矛盾を抱えたファッションの『次の選択肢』になる。一人ひとりが循環を支える時代をつくりたい」。その言葉通り、EUMISは自然の摂理に沿った“第3の革”を提示し、アパレル産業のサステナブル転換に一石を投じた。