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政府は18日、2035年度に温室効果ガスを2013年度比で60%削減する「地球温暖化対策計画」を閣議決定した。一方、各省庁は2035年度に65%減、2040年度に79%減とする独自の排出削減目標を定め、再エネ推進など具体策を打ち出した。しかし、審議会では「政府目標は国際基準に満たない」との異論が続出し、さらなる取り組みが求められている。
政府が2035年度60%減を閣議決定、省庁は独自に65%減を目指す
政府は18日、温室効果ガスを2035年度に2013年度比で60%削減する新たな目標を含む「地球温暖化対策計画」を閣議決定した。これにより、2040年度には73%減を目指す方針も示し、2月中に国連に目標を提出する予定である。
一方、各省庁は事務・事業活動でより高い削減目標を設定した。2035年度に65%減、2040年度に79%減を目指し、政府保有建築物への太陽光発電設備100%設置、公用車の100%電動化など、再生可能エネルギーの最大活用を柱とする。
国際基準とのズレ、審議会や企業から批判の声
環境省と経済産業省の合同審議会では、政府の「35年度60%減」案に対して「目標が低すぎる」との異論が続出した。同審議会では、2035年度に2019年比で60%減が求められる国際基準(IPCC報告)に照らせば、日本の「13年度比60%減」は66%減に相当するはずだと指摘された(国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)による)。
さらに、与党・公明党や脱炭素を推進する企業グループからも「政府の目標は不十分だ」との声が相次いだ。
省庁の取り組み、太陽光発電100%や電動公用車を推進
政府実行計画によると、省庁は次のような取り組みを行うという。
また、建築物の省エネ性能向上や、フロン類の排出抑制なども同計画に盛り込まれた。
・太陽光発電:2040年度までに政府保有建築物に100%設置(政府実行計画による)
・公用車の電動化:2030年度までに公用車の100%電動化
・再エネ電力調達:2030年度に調達電力の60%を再エネ由来、2040年度には80%以上を脱炭素電源に
世界の動向、日本の目標は十分か
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)によると、パリ協定に基づく新たな温室効果ガス削減目標の提出期限である10日までに、世界190カ国中9割が提出できていなかった。その中で、日本は意見公募(パブリックコメント)の精査を理由に提出を延期していた。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「35年までに2019年比60%減が必要」と報告しており、日本の「13年度比60%減」は国際基準を下回ると警鐘を鳴らしている。
専門家の指摘と今後の展望
専門家は「政府の目標は実現可能性を考慮した現実的なライン」とする一方で、「IPCCが求める国際基準には及ばず、さらなる削減努力が必要」と強調している。また、与党関係者からも「2050年ネットゼロの達成には2035年度時点でより高い中間目標が不可欠」との声が出ている。
政府は2月中に国連へ新目標を提出する方針だが、今後は中央環境審議会によるPDCA(計画・実行・評価・改善)を通じて進捗を監視し、再生可能エネルギーの導入状況や実効性を検証することが求められる。
【参照】
政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の削減等のため実行すべき措置について定める計画の閣議決定について(お知らせ)(環境省)