2005年の開港以来、環境への配慮を続けてきた中部国際空港。その取り組みは、SDGs、そしてサステナビリティへと進化を続けている。
地域との共創、そして未来への展望。サステナビリティ推進室の鈴木氏に話を聞いた。
開港当時からの環境意識とサステナビリティへの進化
2005年、伊勢湾に浮かぶ海上空港として誕生した中部国際空港(セントレア)。その開港には、環境への配慮が色濃く反映されている。
「入社した時は、ここはまだ半分海でしたね。海から空港になるまでずっと見守ってきた感じです。」と語るのは、サステナビリティ推進室の鈴木氏。
開港準備段階から空港建設に携わり、経理、シェアードサービスセンター、システム改革と、多岐にわたる業務を経験してきた。
コロナ渦においては財務にてESG債発行に尽力し、その経験がサステナビリティ推進室担務の契機となった。
開港当時から導入された燃料電池バスや大規模な太陽光発電設備。これらは、中部国際空港が未来を見据え、持続可能な社会の実現に向けて、早くから取り組んできた証だ。
地域との共創が生み出す力
中部国際空港の大きな特徴の一つは、その立地条件を活かした環境への配慮だ。
伊勢湾の豊かな生態系への影響を最小限にするため、海流の流れを阻害しないような独自の形状を採用している。
「北西の方向には木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)があって、この流れがちょうどぶつかるのが空港の辺りなんですね。空港の周りは昔からの海苔の産地でもあるので、影響のないように、このような流線型になっています」と鈴木氏は説明する。
また、中部国際空港は、株主構成にも特徴がある。
「我々の株主構成をご覧いただくと、半分は地元企業を中心とする民間企業、残りは国が40%、地方自治体が10%となっています。成田空港さんは100%国が株を持っていますが、我々は地元の民間主導で、国はもちろん地方自治体との連携も強いんです。」と鈴木氏。
官民一体となった運営体制は、地域の声を直接経営に反映できるという強みを持っている。
開港当時から、多くの地元企業や自治体からの出向者が共に空港建設を担ってきた歴史が、今もなお地域との密接な関係性を築いているのだ。
ゼロカーボンへの挑戦
中部国際空港は、「セントレア・ゼロカーボン2050」を掲げ、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%以上削減、2050年度までにゼロカーボンを実現することを目指している。
「2030年が目前に迫っているので、この目標を達成するために一生懸命検討しているところです」と鈴木氏。
その具体的な施策の一つとして、開港当時から導入されている高効率コージェネレーションシステムがある。
都市ガスを利用したガスタービンによる発電と、その排熱を利用した冷暖房を組み合わせることでエネルギー効率の最大化を図っている。
2023年にはガスタービンをガスエンジンに転換し、CO2排出量を10%以上削減。
「これは都市ガスでエンジンを回し、その回転で発電するんです。エンジンから出る熱もターミナルビルの空調に使うので、エネルギーの使用効率がものすごくいいんです。」と、その仕組みを解説してくれた。
地域と連携した環境活動
中部国際空港の環境への取り組みは、空港内にとどまらない。愛知県東浦町と連携し、家庭から排出される廃食用油を回収し、SAFにリサイクルするプロジェクトも推進している。
「自治体さんと協定を結んで、廃食油をSAFにつなげる取り組みを行っている空港は我々だけだと思っています」と鈴木氏は胸を張る。
また、「山づくりから始める海づくり」というコンセプトのもと、木曽三川の上流域での植林活動、鬼崎海岸での清掃活動など、地域との連携を強化した環境保全活動にも積極的に取り組み、地域社会全体の持続可能性を高めることに繋がる活動を展開している。
持続可能な社会の実現へ向けて
中部国際空港は、開港以来、環境への配慮を基盤とした経営を続けてきた。その取り組みは、SDGs、そしてサステナビリティへと進化してきている。
「空港という事業は、しっかりと土を耕して、日々の管理を継続していく農業と感覚が近い」という鈴木氏の言葉通り、持続可能な社会の実現に向けた確かな一歩を踏み出している。
◎会社概要
会社名:中部国際空港株式会社
本店所在地:愛知県常滑市セントレア一丁目1番地
設立日:1998年5月1日(1998年7月1日 中部国際空港の事業主体として国の指定会社となる)
資本金:836億6,800万円
主な事業内容:
1.中部国際空港及び航空保安施設の設置及び管理
2.旅客及び貨物の取扱い施設等の機能施設、店舗等の利便施設の建設及び管理
3.上記に付帯する事業
従業員数:274名 ※2024年3月31日現在