ホタテ貝殻が新たな価値に 湧別・マルナカ相互商事、廃棄物削減へ
北海道オホーツク海に面した湧別町の食品加工会社「マルナカ相互商事」は、これまで産業廃棄物として処理していたホタテの貝殻を有効活用した新商品を開発、販売を開始した。
貝殻を粉末にして袋状に加工したパッケージや、箸として製品化。廃棄物削減と新たな収益源の確保を両立させる「アップサイクル」への取り組みとして注目を集めている。
同社は、主力商品のホタテ貝柱をはじめ、魚介類の加工販売を長年手がけてきた。しかし、事業拡大に伴い、年間相当量のホタテ貝殻が産業廃棄物として発生。処理費用も大きな負担となっていた。
ホタテ貝は東北・北海道地域で産出され、これらの地域の主要産業となっている一方、年間約20万トン以上の貝殻が廃棄物となり、処理問題が生じている。
近年、世界的な環境問題への意識の高まりを受け、同社は新たな取り組みとして、廃棄されるホタテ貝殻の有効活用、いわゆる「アップサイクル」に着目した。貝殻は、炭酸カルシウムを主成分とし、肥料や飼料への利用など、様々な可能性を秘めている。
産業廃棄物(「動植物性残さ」)に該当するホタテの貝殻は、これまでもアクセサリーの一部や土壌改良材、家畜用飼料、野菜洗浄材などとしても利用されてきたが、一定量、産業廃棄物となり、ホタテ貝生産量の増加とともに処理・処分にも困難をきたしている現状があった。
近年プラスチックカトラリーにホタテ殻を混ぜたものが採用されたり、洗剤やチョークなど様々な方法で再利用されてるようになり、再加工しやすい素材として注目されはじめている。
企業努力で生まれた新たな商品
開発にあたり、同社は貝殻の粉末化技術を持つ企業と連携。試行錯誤を重ね、粉末の粒度調整や配合比率などを最適化することで、実用的な製品化にこぎつけた。
新商品は、貝殻の粉末を配合した袋状の保冷剤入りパッケージと、箸の2種類。パッケージは、従来のプラスチック製と比べて環境負荷を低減できるだけでなく、ホタテ貝殻に含まれる天然の抗菌作用が期待できるという。また、貝殻の粉末を51%配合した箸は、独特の風合いと耐久性を兼ね備え、食洗機や電子レンジにも対応している。
環境配慮と商品魅力を両立
マルナカ相互商事の代表取締役社長、中山則新氏は「廃棄物を単に減らすだけでなく、新たな価値を生み出す『アップサイクル』という考え方に共感し、今回の商品開発に至った。試行錯誤の連続だったが、社員一丸となって取り組んだ成果が出て嬉しい」と語る。
新商品は、応援購入サービス「Makuake」で先行販売され、目標金額の1045%を達成するなど大きな反響を呼んだ。購入者からは、「環境に配慮した商品で、安心して使える」「貝殻の風合いが良く、食卓が華やかになった」といった声が寄せられているという。
同社は今後、アップサイクル商品の販路拡大や、新たな商品開発にも積極的に取り組む方針だ。中山社長は「今回の取り組みをきっかけに、地域循環型のビジネスモデルを構築し、持続可能な社会の実現に貢献していきたい」と抱負を語った。