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近年、社会から企業に対してESG経営が求められる中、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が注目を集めています。
2023年9月、TNFD最終提言v1.0が公開されてからというもの、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と同様に、株式市場での情報開示が義務化されるのではと、気になる経営者も多いのではないでしょうか。
本記事では、
・TNFDとは何かをわかりやすく解説
・TCFDとの違いと関係性は?
・TNFD情報開示に賛同するメリットは?
これらについて解説します。
SDGsが発足して以来、企業や法人にとってESG経営戦略は不可欠となりつつあります。
本記事を参考に、TNFD賛同の判断材料になれば幸いです。
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)とは?
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TNFDは、「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の頭文字をとったもので、「ティーエヌエフディー」自然関連財務情報開示タスクフォースの訳となります。
企業の事業活動が、自然環境にどのように影響するかを評価し、投資家やステークホルダーに対して開示するための国際的な枠組みのことを指します。
これは、企業が自然資本(自然環境、生物多様性)との相互関係を理解し、持続可能な経営を推進することを目的としています。
TNFD設立の背景
TNFD設立背景には、急激な地球環境の変化と生物多様性の減少に対する国際的な危機感があります。
国際自然保護連合が公開している、「IUCN接滅危惧種レッドリスト」では、全評価種の27%に相当する、42,100種以上が絶滅の危機にあるとされています。
(引用:IUCNレッドリスト|IUCNホームページ)
TNFDは企業が自然環境との相互作用を評価し、そのリスクと機会を開示するためのガイドラインを提供することを目的として設立されました。
TNFDとTCFDとの関係は?
- TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
- TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
この2つはの目的は類似しており、企業が環境関連の影響を理解し、投資家やステークホルダーに対して、透明性のある情報開示を目的としています。その一方、影響する対象に違いがあります。
TCFDは、気候変動に関連する財務情報の開示に焦点を当てています。
これには、温暖化によるリスクや機会が含まれます。
TNFDはTCFDより広範に、自然資本全体(生物多様性、生態系、土地利用など)に関するリスクと機会に焦点を当てています。
これは気候変動だけでなく、生物多様性の喪失や生態系サービスの変化など、より幅広い自然環境の問題をカバーしています。
TNFDとTCFDは互いに補完的な関係にあり、気候変動は生物多様性に影響を与え、逆もまた同様です。
したがって、これらの枠組みは企業が環境リスク全般を総合的に理解し、対応するのに役立つものとなります。
TNFDが注目される理由は?
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なぜ、企業や投資家がTNFDに注目するのでしょうか?
その理由について紹介します。
ESG経営の具体的な実践となる
TNFDに賛同することは、ESG経営の具体的な実践となることが理由のひとつです。
(引用:持続可能な開発目標|外務省ホームページより)
SDGs(持続可能な開発目標)には、
- 目標13「気候変動」
- 目標14「海洋資源」
- 目標15「陸上資源」
これらへの影響を軽減させ、持続可能な企業の経営活動を行うことを目標としています。
TNFDに賛同し情報開示を行うプロセス自体が、ESG経営の実践となります。
ESG投資の指標となり事業拡大の機会になる
投資家や消費者は、ESGの観点から企業を評価する傾向が強まっています。
実際に、東京証券取引所のプライム市場に上場する企業に対しては、有価証券報告書における気候関連問題の情報開示を実質義務化しています。
【ガバナンス・コードにおける情報開示原則】補充原則3-1③:特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。 |
(引用:コーポレートガバナンスに関する報告書|日本証券取引所グループより)
これは、TDFDに限ったことですが、今後はTNFDでも同様の取り扱いになることが予想されます。
TNFDに基づく開示は、これらのステークホルダーに対する信頼を構築し、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性があります。
企業のイメージアップにつながる
企業が自然環境への責任ある対応をすることは、企業のブランド価値を高め、顧客や従業員からの支持を得ることにつながります。
また、ESG経営の情報開示を積極的に行う企業は、自然環境のみならず、人的資本の情報開示もしている傾向にあります。人的資本の情報開示は、2023年から義務化され関心が高まっています。
このように情報開示を積極的に行う企業は、社会からのイメージも良く応援される企業へとつながることも期待できます。
TNFDの具体的な開示内容
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TNFDの具体的な開示内容、情報開示のプロセスについて紹介します。
TNFD最終提言v1.0が公開
2023年9月に公開されたTNFD最終提言v1.0では、企業が取り組むべき自然関連のリスクと機会について詳細が示されています。
この最終提言がされて以降、企業や金融機関が、TNFDの採用に動き出しています。
最終提言の中で発表された、具体的な開示項目を紹介します。
(引用:プレスリリース自然関連課題に関するTNFDの最終提言が発表|TNFD)
TNFD開示項目の4つの柱
最終提言で公開された項目は、4つの柱で構成されています。
- <ガバナンス>:企業が自然関連課題を監視・管理するために用いるガバナンスのプロセス、統制および手順
- <戦略>:企業が自然関連課題を管理するために用いるアプローチ
- <リスクと影響の管理>:企業が自然関連の依存、インパクト、リスク、機会の特定と評価を行い、優先順位の決定と監視のために使用するプロセス
- <指標とターゲット>:自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を評価し、管理に使用される測定指標と目標
ガバナンス | A. 自然関連の依存性、影響、リスク、および機会の監視 |
B. 自然関連の依存性、影響、リスク、および機会を評価し管理する際の経営陣の役割 |
C. 組織の人権ポリシーとエンゲージメント活動、および先住民族、地域コミュニティ、影響を受ける利害関係者、その他の利害関係者に関する経営陣の監視 |
戦略 | A. 短期、中期、長期にわたり組織が特定した自然関連の依存性、影響、リスク、および機会 |
B. 自然関連の依存性、影響、リスク、および機会が組織のビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、および財務計画に及ぼした影響、および適切な場合における移行計画や分析 |
C. 異なるシナリオを考慮に入れ、自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンス(回復力) |
D. 組織の直接の運営における資産、または活動の場所を開示し、可能な限り、上流および下流のバリューチェーンで優先ロケーションの基準を満たすもの |
リスクと影響の管理 | A(i) 組織が運営における自然関連の依存性、影響、リスク、および機会を特定、評価、優先順位付けするプロセス |
A(ii) 組織がバリューチェーンにおける自然関連の依存性、影響、リスク、および機会を特定、評価、優先順位付けするプロセス |
B. 組織が自然関連の依存性、影響、リスク、および機会を管理するプロセス |
C. 自然関連のリスクを特定、評価、優先順位付け、監視するプロセスが組織の全体的なリスク管理プロセスにどのように統合され、それに影響を与えるか |
指標とターゲット | A. 組織が戦略とリスク管理プロセスに沿って重要な自然関連のリスクと機会を評価し管理するために使用するメトリクスを開示 |
B. 組織が自然への依存性と影響を評価し管理するために使用するメトリクスを開示 |
C. 組織が自然関連の依存性、影響、リスク、および機会を管理し、これらに対するパフォーマンスを評価するための目標および目的 |
(引用:Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)
情報開示プロセスはLEAPアプローチ
TNFDでは、企業の情報開示プロセスとしてLEAPアプローチを推奨しています。
LEAPアプローチは、企業が自然資本との相互作用を体系的に理解し、リスクを管理し、持続可能な戦略を実行するためのガイドラインとなっています。
1.Locate(位置付け・発見)
企業の自然資本への依存度、影響を受ける領域を特定します。これには企業活動が直接影響を受ける地域や、サプライチェーンを含む広範囲のエリアが含まれる場合があります。
2.Evaluate(診断)
特定された領域における自然資本の依存と影響を評価します。ここでは、環境的な変化が事業活動、財務、戦略にどのような影響を与えるかを分析します。
3.Assess(評価)
自然資本に関連するリスクと機会をさらに詳細に分析し、企業に与える潜在的な影響の大きさを評価します。この段階では、リスクの優先順位付けや管理戦略の策定も行われます。
4.Prepare(準備)
リスク管理計画や機会を活用する戦略を策定し実行します。ステークホルダーとのコミュニケーションや開示戦略の策定も含まれます。
まとめ
本記事では、TNFDとは何か、TCFDとの違いから、企業や投資家が注目する理由について解説しました。
すでに日本国内の185社が、TNFDの情報開示に賛同しており、この企業数は世界で2番目に多い企業数となります。(2023年12月時点)
企業にとっての、ESG経営は、今後の持続的な事業活動には欠かすことができないものとなっております。さらには、自社の取り組みをステークホルダーに発信することも必要な時代です。
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