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インクルージョン・ジャパン株式会社

https://inclusionjapan.com/

東京都品川区西五反田1-11-1 アイオス五反田駅前ビル903

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総額66億円でファイナルクローズ「ICJファンド」設立者に聞く、「攻める」ESGの仕掛けづくり

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
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(画像提供:ICJ)

ESGスタートアップを主要投資先とする『ICJ2号ファンド』が、総額66億円でファイナルクローズした。投資家には、三菱UFJ銀行、関西電力、東京ガス、DBJキャピタルなどの大企業が名を連ねる。

同ファンドの特徴は何といっても、これら大企業を巻き込みながら、ESGスタートアップとの協業を導き、新価値・新事業を生み出している点にある。

ファンドの設立者の1人で、自身も投資先ベンチャーの発掘・支援を行う投資家でもあるインクルージョン・ジャパン株式会社代表取締役の服部結花さんに、世界のESGトレンドと日本の課題、ファンドを通じた大企業とスタートアップ企業との協業、ESGベンチャーと参画企業へのメッセージなどを伺った。

「守りに入るのはもったいない」世界で急成長するESG領域で攻める

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ICJのメンバー(画像提供:ICJ)

―世界では今、ESGの中でも特に脱炭素がトレンドとなっています。まずは、そのような潮流の背景について教えてください。

近年、脱炭素を中心とするESG領域に、新たな市場と産業が生まれています。こうした世界のトレンドの背景には、次のような流れがあると我々は考えています。

まず、機関投資家がESGの取り組みに関して大企業に圧力をかけます。これを受けてグローバル大企業が何をするかというと、新技術を持つベンチャー企業との協業で先行事例を作り、ビジネスモデルをもってルールメイクの場に積極的に入っていきます。

例えばマイクロソフト社は、スウェーデンのスタートアップとの協業で、CO2を地中深くに埋めるCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術の共同開発に乗り出しました。これを先行事例として確立したうえで、COP(締約国会議)やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)といったルールメイクを行うワーキンググループに参画します。そうすると、その先行事例をもとにルールの検討が進められるため、同社はおのずとルールメイク側の立ち位置を確立できるわけです。

一旦ルールが作られてしまうと、それが他企業への強制圧力となり、一般企業が利用・参入して巨大な新市場が立ち上がります。

―先行事例をもってルールメイクに参画した企業は当然、新たな市場で優位性を獲得できますね。日本企業の中には、「ルールメイクに入り込めない」、「国際的な枠組みでは、日本企業が評価されるような流れになっていない」など、ESGないしその枠組みに対してネガティブな思いを抱いている企業も少なくない印象です。

たしかに、メディアも含め、国内では「海外のルールに日本企業ががんじがらめになっている」というような反応が見られます。

日本ではどうしても、ルールが決まってから1~2年遅れで官公庁が法制化したり義務化したりした後に、国内の法令になって初めて国内企業が対応に奔走するという現状があります。国内企業は、このときすでに先行事例によって規定された商品を一方的に購入してルールに対応しなければならない。ネガティブな反応になってしまうのも一理あるのです。

でも、このままでは何も変えられません。ESGの潮流に対して「守り」の姿勢のままでいるのはもったいない。ルールの場に積極的に参画して、「攻める」べきです。

国際的なルール作りに向けたワーキンググループの多くは、メンバーを公募で募集します。例えば、ボランタリーカーボンクレジットの評価枠組みを検討するコンソーシアムTSVCM(Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets)に参加している450社のうち、日本企業はわずか5社のみ。「当社はこの分野に貢献できます。先行事例も作れます」と手を挙げる企業が、どういうわけか少ないのが現状です。

大企業とESGベンチャーとをつなげる仕掛けづくりとは?

―そのような状況を打破すべく、インクルージョン・ジャパン株式会社(以下、ICJ社)とICJファンドを設立されたのですか?

そうです。大企業とESGベンチャーとをつなげることで、モデルケースを作り、ESGへの取り組みを「攻め」に転じようと考えました。

ICJ社は、2021年6月、VCとしては国内で2番目にPRIに署名しました。これと同時に、詳細なESGポリシーも定めています。また、2021年から年に1回、「ESGアクセラレータープログラム」を開催しており、脱炭素領域を中心に累計約300社からエントリーいただいています。

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ICJのHPより、PRIの運用ポリシーを確認できる(画像提供:ICJ)

そして、このほどファイナルクローズした「ICJ2号ファンド」には、株式会社三菱UFJ銀行(以下、三菱UFJ銀行)、三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、三菱UFJ信託銀行)、関西電力株式会社、東京ガス株式会社、DBJキャピタル株式会社、株式会社ブレインパッド、株式会社福岡ソノリク、レオス・キャピタルワークス株式会社など、錚々たる企業がLimited Partner(LP)投資家として参画してくださり、66億円で着地しました。

ESGアクセラレータープログラムの協賛企業やICJファンドのLP投資家の企業に対しては、協賛や出資をいただく際に、「日本企業のESG対応を攻めに転じて、現状を打破しましょう」とお伝えしています。このため、賛同くださる企業はかなり積極的に、投資先との連携を検討されます。さらには、そこから新事業を創出しようと、実際に様々なプロジェクトが立ち上がっています。

急成長のゼロボード社、アフリカの土台を作るDodai社……投資先の決め手は「強い使命感」

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ESGアクセラレータープログラムには毎年数多くのスタートアップが参加している(画像提供:ICJ)

―具体的には、どのような協業が生まれているのですか?

代表例としては、「ICJ ESG アクセラレーター2021」の大賞企業である株式会社ゼロボード(以下、ゼロボード社)と三菱UFJ銀行との提携が挙げられます。ゼロボード社は、炭素排出量可視化SaaSを展開する企業で、短期間のうちに急成長を遂げました。

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ゼロボードについて(提供:ICJ)

同社は、アクセラレーター期間中に三菱UFJ銀行と提携しました。これを受けて三菱JFJ銀行では、提携直後から営業部を挙げて一斉にお得意様にゼロボードの認知を広め、導入を進めていったという経緯があります。お得意様の中には当然、国内の名だたる企業が含まれていますので、そういった企業での導入を皮切りに、その先におられるお客様にも認知が広がっていきました。

また、ファンドの投資先のひとつneuet 株式会社の展開する電動自転車のシェアサイクルサービス「チャリチャリ」は、当ファンドのLP投資家である三菱UFJ信託銀行から電動アシスト自転車を裏付とする動産信託の組成を受けて、電動自転車導入の資金調達を行いました。これによって自転車を大量に投入し、取り組みを加速することができました。

今後のESGトレンドとして注目すべき生物多様性の領域では、クオンクロップ株式会社にも出資しています。同社は、食品メーカーや農産物の生産者が、商品単位でGHG排出量や生物多様性に関する指標に沿った定量化ができる「MYエコものさし」という計測ツールを開発・販売しています。

食品関連では、ヴィーガンでサステナブルなクッキーを製造・販売する株式会社ovgoも、投資先のひとつです。同社は、食品メーカーでは珍しくB Corp認証を取得しています。

―スタートアップを発掘する際には、どういった視点から投資先を定められるのですか?

2軸あります。1つは、ESGの潮流を見据えたうえで、仕掛けどころを押さえます。例えば現在は脱炭素がトレンドですが、今後は生物多様性ひいては食の環境負荷がトレンドになるだろうと予想しています。脱炭素で目標設定→可視化(測定)→削減→カーボンオフセットという流れがあったように、食の領域でも同様の流れがあることを見据えて、ベストなタイミングを探っているところです。

もう1つは、企業のニーズに合致する商品ないしサービスを提供できそうなスタートアップと、当該企業とをマッチングするアプローチです。これは、当社が大企業のニーズを熟知しているからこそ可能なアプローチだと自負しています。

投資先の決め手は、経営チームの質やビジネスモデルもさることながら、最終的には「絶対にやりきる」という強い使命感があるかどうかです。

当ファンドが特化しているESGという分野は、そもそも「これからマーケットを作っていこう」という分野ですし、開発中のプロダクトがソリューションになり得るか確認するためのベンチャーという側面もあります。このため、ピボットも珍しくありません。変わることを前提に、それでも折れずに「やりきる」と言えるかどうかが問われます。

投資先のひとつであるDodai Group, Inc (以下、Doda社)は、「アフリカの人々の土台になるビジネスを作る」という信念のもと、エチオピアでアプリ管理された電動二輪車を提供する会社です。同国では、経済成長と同時に交通量の増加と大気汚染が問題となっていて、二輪車に規制がかかりつつありました。

同社は、経済成長と大気汚染の問題を同時に解決すべく、電動二輪車の普及を提案、現地の国土交通省との交渉を経て、電動二輪車の規制撤廃の約束をとりつけました。2023年8月から晴れて電動二輪車の販売を開始し、初月から目標数値を上回るペースで販売量を伸ばしています。

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(画像提供:ICJ)

そんなDodai社ですが、実は元々、全く違うビジネスを試みていました。エチオピアの隣のジプチという国で、太陽光発電のソーラーパネルを提供しようとしていたのですね。でもDodai社の佐々木代表は、あくまで「アフリカの人々の土台に」という信念がありました。そこで、ジプチでのビジネスが座礁してもめげずにエチオピアで再チャレンジして、ほぼ成功が見えるような状況まで持ってこられました。

PoCで終わらせない「事業を作り上げる」支援が強み

―服部さんをはじめとするICJ社の役員全員、General Partner(GP)投資家として支援を行うと同時に、スタートアップ企業の発掘から、大企業とのマッチング、投資先に伴走するコンサルタントのような役割までを担っておられます。改めて、ICJファンドの特徴を教えてください。

当ファンドは、スタートアップ支援にありがちな「単なるPoC(Proof of Concept:概念実証)で終わらせる支援」ではなく、大企業を巻き込みながら、スタートアップと大企業との協業で新価値を創造し、きちんと事業を作り上げていく支援を得意としています。

事業を生むことまでを視野に入れているからこそ、大企業の組織構造から役員構成までを押さえたうえで、どんなルートで何を提案すればマッチングが成立するかを精緻に設計し、投資先と一緒になって大企業側にプレゼンします。大企業と投資先をこの深度までしっかりと結びつける支援をしているVCは、当社ぐらいではないでしょうか。

また、LP同士のつながりの深さも特徴だと思います。当社がLPの役員の方々を巻き込みながら、LP同士を結びつけることで、「1社ではできないけれど、2社、3社が一緒になれば叶えられるプロジェクト」を生み出せます。今後も引き続き、賛同いただけるLPを増やしていければと考えております。賛同いただける企業やESG系のスタートアップとの出会いにも期待しています。

―最後に、スタートアップ企業と出資元の企業へのメッセージをお願いいたします。

私たちは正直、非常におせっかいな会社だと思います。「ちょっと常駐しましょうか?」と、私が出資先に常駐しに行ったりすることもあります。経営陣に「やることないと思うよ」と言われても、「いや、行った方がいいと思う」と出向いてアドバイスさせていただくこともあります。

スタートアップ企業の方々には、助けを求めることをいとわず、ダメ元でも何でも相談いただければと思っています。「こんなことお願いしちゃダメじゃない?」「言っても無理だろう」なんて思う必要は、一切ありません。

出資元の企業に対しても同様で、ダメ元でも言っていただければ、基本的に全力でお応えします。LP以外の企業でも、ご連絡いただければお力になれることがあるかもしれません。

私と吉沢の2人で弊社を設立したとき、「頼まれずとも、報酬が発生しなくても、勝手にやってしまっていることって何だろう?」と話し合ったことがありました。「それが仕事になったら最高に幸せだよね」と。

それでたどりついた答えが、「お節介にいろんな人のサポートをすること」だったのです。やっぱりお節介が好きなのですよね。「ならばそれを伸ばして、かつ大きな価値を発揮できる仕事は?」と考えたときに、VCに落ち着いたという経緯があります。

この問いと答えがベースにあるので、現在も日々、いろいろな相談にのっています。出資の相談はもちろんのこと、それ以外にも、転職相談にのることもありますし、中には「娘が海外留学中で心が折れそうなのだけど、なんとかならないだろうか」という相談もありました(笑)。

そんな「おせっかい」が好きな私たちですので、ESGベンチャーの方々もLP企業の方々も、どしどしご相談いただければと思います。

―国内企業のESGへの取り組みを加速させるICJファンド、今後の展開にも期待しております。本日はありがとうございました。

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ライター:

1985年生まれ。米国の大学で政治哲学を学び、帰国後大学院で法律を学ぶ。裁判所勤務を経て酒類担当記者に転身。酒蔵や醸造機器メーカーの現場取材、トップインタビューの機会に恵まれる。老舗企業の取り組みや地域貢献、製造業における女性活躍の現状について知り、気候危機、ジェンダー、地方の活力創出といった分野への関心を深める。企業の「想い」と人の「語り」の発信が、よりよい社会の推進力になると信じて、執筆を続けている。

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