「田口君はオリジナルな存在。だからもっと自由にやればいい。それが社会問題の解決につながるのだから」。そう語るのは、年商55億円規模に成長した株式会社ボーダレス・ジャパンを創業期から支援してきた税理士の中川誠さん。幾多の前例のないソーシャルビジネスの立ち上げをサポートしてきた中川さんに、ボーダレス・ジャパン代表取締役社長 田口一成さんとの出会いから、現在、そして未来への展望を伺いました。
株式会社ボーダレス・ジャパン田口一成さんから税理士中川誠さんへのメッセージ
Q:株式会社ボーダレス・ジャパン田口一成さんから中川誠さんへのメッセージをお預かりしてきました。
ステークホルダーを考えた時に、真っ先に頭に浮かんだのが、税理士の中川誠さんです。中川さんにはグループ会社40社以上、全てをお任せしています。僕は最初、税理士を雇わないで事業をしていこうと考えていたのですが、それだと大変だろうからとある方から中川さんを紹介いただきました。
最初にお会いした時に、自分がこれからやっていきたいことを話したら大変共感いただいて、「君たちが黒字化できるまでは無報酬ででもやるから」とおっしゃってくれました。僕のように社会問題に取り組む人の事業がうまくいくのが大切だから、と。それで本当に2年間無報酬でみてくださったのです。
思い出深いのは、会社がまだ軌道に乗っていなかった頃に、中川さんが「カニ会」といって、ボーダレスの仲間たちにカニをご馳走してくれるイベントを開催してくれたことです。わざわざ、僕たちのためにネットでカニを注文してくれていたんですよね。カニなんてそうそう食べることができるものではなかったですから、貧乏な仲間たち数十人で、僕も妻と子どもを連れて嬉々として食べに行きました。他にも忘年会では、景品として金一封をご用意いただいたり。
僕たちをことあるごとに気にかけていただいて、中川さんには本当にお世話になりっぱなしです。僕は今、福岡を拠点に仕事をしていますが、それも東京に中川さんがいてくれるからです。
Q:このようなメッセージをお預かりしてきました。そもそも、中川さんがボーダレス・ジャパンを「無償でも応援したい」と思われたのは、どのような背景があるのでしょうか。
中川:田口君と初めて会った時のことは鮮明に覚えています。安い居酒屋で田口君の考えをお聞きして、いろいろ感慨深いところがありました。
僕も独立をした後に、バックパッカーで放浪していた経緯があり、何十カ国を歩いた時にいろいろ見てきたわけです。貧しい世界も豊かな世界もありました。その時、結局、田口君も私と同じような問題意識を持っていることが分かり、ぜひ協力したいと思って、仕事を受けさせていただいたというのが、経緯としてあります。
田口君も皆さんもそうなのですが、設立当時の方々は、本当に給与が著しく安い中で仕事をしていました。もちろん利益があるのであれば報酬をいただきたいというのが自然な流れだと思うのですが、皆さんが熱心に夢へ向かって頑張っているわけですから、そういう経緯でやっている以上は助けたいという思いがあり、あの時は私も余裕があるわけではなかったのですが、仕事を引き受けることにしました。
カニ会というのは、ボーダレス・ジャパンとしては普段やらない角度で、何か面白いイベントができないかという趣旨の企画でした。田口君はもともとエビが好きなので、じゃあカニならどうだろう、という遊び心でカニ会になったのです(笑)。あの時20キロぐらいのカニを半日ぐらいかけて解凍して、こぢんまりとやったことは、今でも鮮明に覚えています。
2つの「伝え」で、恩送りの善循環を生み出す
Q:田口さんと共通の問題意識や、共感できる世界観があったから、自分の役割を見いだされたのですね。これまで長年にわたり関わってきた経験から、田口さんはどのようなことを大切にしている方だと思いますか。
中川:田口君は「伝えること」を大事にしていると思います。伝えることには、アドバイスをする「伝え」と、次の世代に引き継ぐ「伝え」という、2つの意味があります。この2つを大事にしているように思います。
私も近い考えがあります。私には師匠のような人が2~3人います。その師匠に時間を取っていただいて、アドバイスやノウハウをいただきながら、自分の経験と師匠の経験を、時間をかけてこねてきたことで、今の私がいます。
しかし、結局は師匠には恩を返すことができません。ですから、後輩にアドバイスしたり、または経理の方々に業務と関係ない範囲のアドバイスでも時間をかけて伝えているのです。これまで自分が受けてきたものを、次に伝え続けるという方向で皆がやっていけば、社会はもっとうまく回るようになるのではないかと思っています。
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田口君は答えを知っている。だから、もっと自由にやればいい
Q:今後、田口さんのビジネスや、人生がさらに開けていくために、どのようなことが必要だと考えますか。
中川:田口君は、自分の考えで、もっと好きにやってみたらいいのではないか、と思います。これまでの経験があるから、彼は答えを知っているはずです。ですから、成功しても、失敗してもいいから、あとは、がむしゃらにやることで道が開けるのではないかと思います。
昔ボーダレスハウスの事業を立ち上げた時に、そのことを一番感じました。ボーダレスハウスは、田口君が親族からの借金を抱えてゼロから立ち上げた事業です。はたから見ると失敗してもおかしくなかった。私からすると成功か失敗か半々の賭けでした。しかし田口君は成功した。強い信念を貫き通したからなのです。頭の中で彼は成功イメージを持っています。外野がとやかく言う必要性はなく、自分を信じて自分のやり方でやっていけばいい。私がフォローするので、もっと自由にやってほしいのです。
答えは一つではない。自由な発想と行動が最適解を導く
Q:中川さんは、田口さんが事業を立ち上げる際、トライ&エラーをした後に、事業化の道筋をつけるためのサポートをされているのでしょうか。
中川:そうです。私は、田口君や鈴木さんや他のグループ企業の社長さんなどがやりたいことを実現するためにフォローをするのが役割です。ですからまずは自由にやってもらっていい。でも、自由にやった結果、どこかで不都合が出てくる可能性があるので、結局、私を含めた今のバックアップメンバーの皆さんでその不都合を修正して、形にしていくために必要な手当をしっかりしていく。それが私の仕事だと思っているので。
Q:社会問題の解決を図るには、さまざまな規制が壁になるケースもあると思います。
その通りです。ただ、社会の問題を解決するための事業ですから、規制を制約と考えていては、新しいものは生まれません。まして行動をストップするのは良くないと思います。だから、まずは自由な発想が大切なのです。もちろん自由と言っても違法でなく、倫理的にも問題がないことが前提です。その上で、他人に迷惑が掛からないもので、問題解決につながる取り組みであれば、まずは行動してみることが大切なのではないでしょうか。
問題の本質や解決策は、解決行動を行う過程で見えてくるものです。その見えてきたものをバックアップする人が法務や税務などの視点で手当をして、しっかり説明できる状態に持っていく。その結果、最終的に社会全体が最適化され、目的が達成さればいいのです。それが私の考えです。答えは一つではないのです。
田口君はオリジナルな存在。やりたいようにやることが社会貢献につながる
Q:あらためてボーダレス・ジャパンの田口さんは中川さんにとってどのような存在でしょうか。
中川:田口君は最初に会った時から私の印象は全く変わりません。例えば彼が本を書こうと、テレビに出ようと、新聞記事に取り上げられようと、格好も同じですし、何か特別になったわけでもありません。
田口君はオリジナルな存在です。田口君に対して私は一切心配していません。そういう意味で、もっと自由にやってほしい。体を壊さず、自分が好きなことを、やりたいようにやればいい。それが社会貢献になるのです。これが私の立ち位置であり、田口君は、私にとって、そう言いたくなる唯一の存在ですね。
<企業情報>
税理士 中川誠事務所
名 称: 税理士 中川誠事務所
開 業: 2002年10月1日
代 表: 中川 誠
所 在 地:〒135-0021 東京都江東区白河4-3-1
イーストコモンズ清澄白河セントラルタワー
<代表プロフィール>
中川 誠 (なかがわ まこと)
生年月日:昭和47年9月13日生まれ
職 歴: KPMG税務部門
・ベンチャー企業に対する税務申告および経営相談
・監査対象法人に対する税務申告および経営相談
・上場子会社に対する税務申告および経営相談
・株式評価および資本政策コンサルティング業務