
人気番組「令和の虎」の運営会社モノリスジャパンを退いた元社長・ズッキー(鈴木康一氏)が10月14日、YouTubeとXで沈黙を破った。動画では、6月中旬から“身に覚えのない噂”が広がり、7月3日に「あなたがいると会社の雰囲気が悪くなるので社長を降りてください」と一方的に通告されたと経緯を語った。辞任届への署名要求も拒んだという。
併せてXでは、「不当な解任に対して賠償を求める権利」「社内機密の外部流出とSNS拡散」という論点を明確にし、捜査機関への証拠提出と「一定の進展」に触れた。
動画の核心「憶測で人生を壊させない」
動画は約16分。2011年入社から13年の歩み、岩井良明氏と築いた初期の「就活の虎」立ち上げ、100万人達成時の抱擁まで、番組に賭けてきた情熱を自らの言葉でつないだ。転機は2024年6月。「良くない噂が出ている」と周囲に告げられ、当時の代表・岩井詠子氏と6月27日に面談したが「今は言えない。来週を待って」とのみ告げられた、と回想する。
迎えた7月3日、解任通告。理由の具体説明はなく、空欄の辞任届への署名を迫られたという。
SNSで取り沙汰された「旧イエローキャブの破産が理由」説は明確に否定。商標は会社側が保持し、加盟店が事業継続できるよう整えていた「手続の話」であり、退職理由とは無関係だと述べた。
「賠償請求の権利」「機密流出」「捜査の進展」
Xの長文では、法的スタンスとガバナンス懸念をより直截に示した。説明も前触れもなく「人生の1/3を費やした会社を突然追われた」ことへの強い不服、そして「社内の一部しか知り得ない機密が外へ流れ、SNSで悪意を持って拡散された」事態を重ねて指摘。「社会的信用を基盤とする企業として軽んじられない」問題だと強調し、捜査機関へ多数の証拠を提出済みと書いた。
まずは「8月下旬に撮影した『解任の経緯』動画」を公開して名誉回復を図る構えだという。一方で「この件は多くの虎の方々には関係ない」として、出演者への見解要求などの圧力を控えるよう明確に呼びかけた。
番組を見ての謎
読者がまず感じるのは、“なぜ”これほど唐突な解任劇が成立したのか、という疑問だ。
・なぜ、身に覚えのない噂が退任決定の理由になったのか。
・なぜ、面談で「来週を待って」と言いながら、翌週に一方的な通告を行ったのか。
・なぜ、辞任届の署名を強要するような形になったのか。
そしてズッキー氏が言及した「機密情報の流出」とは何を指すのか。その情報の性質、拡散の経路、会社の対処――いずれも不明のままだ。
視聴者の間では、「雰囲気が悪くなる」という抽象的理由だけで社長解任が行われたことへの違和感も根強い。番組の創設期から支えた人物に対して、なぜ十分な説明の場が設けられなかったのか。
番組の基盤が「志願者と視聴者の信頼」で成り立つ以上、こうした“説明なき処分”は番組の信用そのものを揺るがす。
SNSにあふれる声 「黒幕は誰なのか」「詠子代表の説明を」
ズッキー氏の発信後、SNS上では新たな憶測が噴出している。
「果たして事件の黒幕は誰なのか。詠子代表がファミリービジネスゆえに強権をふるったのか。令和の虎というより、モノリスのお家騒動だから虎の人たちもコメントしづらいのだろう」
「ズッキーさんがこのまま追い出されて終わりでいいはずがない。どうなるか分からないが応援しています」
「普通の会社なら、10年以上貢献した人をそう簡単にクビにできるのか?」
「『あらぬ憶測』が嘘なら、その内容をなぜ言わないのか。片方の主張だけでは真実は分からない。ぜひ両者揃って動画で語ってほしい」
「うーん、詠子さんの言い分が無い限り、真実は闇の中。個人的にはズッキーを応援したい」
一方で、「誰とは言わないが何人かの社長たちが、別の“虎の派生版”で稼ぎたかったのでは」「かなり黒い話だ」といった投稿も見られるなど、憶測と陰謀論が入り混じっている。
SNSの“推理合戦”は、もはや留まることを知らず、やはり今後番組として何かしらの発信が必要なのではないか。そうした発信がなされないばかりに、色々な憶測がSNSを飛び交っている。
例えば、9月以降、X上では“2億円訴訟”や黒幕論争が過熱していた。
河原由次氏の暴露、谷本吉紹氏の即応、他の虎の距離感はすでに既報で整理済みだ。本稿では詳細に立ち返らない。重要なのは、本人の10月14日の発信が法的主張とガバナンス懸念を本人の責任で明文化した、という一点である。
いま必要なのは、運営の説明 番組の“火”を守るために
ここまで多くの憶測を呼んでいる最大の理由は、モノリス側、すなわち岩井詠子代表が沈黙を貫いている点にある。視聴者は、ズッキー氏の主張だけでなく、会社側の明確な見解も求めている。
普通に考えて、岩井社長の片腕として活躍してきたズッキー氏を解任するには、相当な問題がなければ常人は行わないだろう。それを実施したということは、開示されていない相当な理由があるハズと推測できる。ところが、その肝心の部分をぼかすために、憶測が憶測を呼び、結果として双方にいいところがない形となっているのが現状だ。
特に、解任の決定過程、噂や内部情報流出への認識、ガバナンス体制の現状、これらを公式に説明することが、番組の信頼を守る唯一の道ではないか。
志願者の夢を応援する“令和の虎”が、いま問われているのは挑戦者の姿勢ではなく、運営側の説明責任だ。視聴者を大切にする番組であるなら、誰もが納得できる形での開示が望まれる。
視聴者は、志願者の挑戦を応援する“火”を信じている。その火を守る最短距離は、関係者が一次情報を整えて出すことだ。対話を避けた不透明さは、番組の基盤である共感と信頼を最も消耗させる。次の一手は、会社側の誠実な開示にかかっている。