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株式会社エコリング

https://ecoring.co.jp/

〒671-0232 兵庫県姫路市御国野町御着352番地

079-251-1777

リユースの“その先”へ──エコリング新体制が描く、究極の循環型社会

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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エコリング
株式会社エコリング 代表取締役社長 川端宏さん(左)、株式会社Eco Ring Japan Holdings 代表取締役社長 桑田一成さん(右)

日本をはじめとするアジア圏を中心にリユース事業を展開するエコリングホールディングス(以下、エコリングHD)、その年間売上高527億円において中核をなす株式会社エコリング(以下、エコリング)は「何でも買取」を掲げた独自モデルで国内外へ事業を拡大。

人材重視の経営とB Corp認証に象徴されるサステナビリティ志向で業界をリードしてきました。

そんなエコリングは、2025年4月に創業者である桑田一成さんから川端宏さん(前 Eco Ring Thailand Co., Ltd. 社長)へと代表のバトンを託しています。

川端さんには全幅の信頼がおかれ、「創業者からの引き継ぎがない状態」で代表取締役に就任したといいます。

「社員の幸せと社会貢献を両立させる事業」を目指すという同社は、新体制でどのような未来図を描いていくのでしょうか。

本記事では、サクセッションの舞台裏から究極の循環型社会への挑戦、そして“社員第一”を貫く経営哲学まで、前・現代表2名の言葉を通じてエコリングの新章を紐解きます。

創業者が、あえての“無言”で託した信頼

この度、エコリングの代表が交代となった経緯を教えてください。

エコリング 桑田
(画像提供:エコリング)
桑田

背景には、私自身による経営の継続に物理的な限界を感じたことがあります。

ありがたいことに近年の売上高は好調で、2020年では132億円、2022年には235億円、そして2024年には358億円へと年40%前後で順調に伸長しています。

店舗数も近年は年間40~45店舗のペースで増え、2024年12月時点で276店舗と、事業規模も拡大を続けてきました。

そのような中で私は、エコリングHDとエコリング本社の両方の業務を経営者として担ってきました。

コロナ禍の間はリモート会議も活用することで対応できていましたが、それも落ち着いた現在では物理的な移動を伴う業務も増え、徐々に「両輪を同じ熱量で回し続けることへの限界」を感じるようになったのです。

事業展開の面では、2001年の創業から24年、店頭・宅配・出張の買取専門店と、カテゴリ特化型オンラインオークションなど、リユースを取り巻く幅広い機能を提供してきました。

そして2025年4月、「マイエコリング 立川店」というエコリング初となる大型の買取・販売併設店舗が立ち上がることとなりました。

その時点で、リユース事業における機能としては“ほぼコンプリート”できたという達成感があったんです。

ここから先は誰かに任せて、新しい発想でスケールしてもらうフェーズだと思いましたし、私自身もそれをこの目で見たかった。そこで、エコリング本社の経営は次世代へ委ねる決断をしたのです。

後継に川端さんを選んだ決め手は何でしたか。

桑田

創業メンバーであり、「現場」と「海外」の両方を深く知る人物だからです。

タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポールなど物価が安い国でも買取専門店の立ち上げが可能なのだと証明した人物であり、赤字であった子会社のV字回復や新規事業の立ち上げなど、数字と組織の両面で結果を出してきました。

加えて、川端の元部下が今では国内外で子会社の要職に就いているため、組織内の合意形成が迅速に進むと見込まれたことも大きかったですね。


桑田さんが突然不在になったという想定で、「引き継ぎが一切ない状態で川端さんが就任した」とお聞きしました。

桑田

はい、そうです。創業時の成り立ちや社風の変遷も見てきた人物なので、全幅の信頼をおいて「自分の解釈で経営してほしい」と考えたのです。

極端に言うならば、川端が会社を潰してしまったとしても「潰しちゃったかぁ」と笑えると思いますよ。そのくらいの信頼をもって託しています。

エコリング 川端
(画像提供:エコリング)
川端

「いつか代表が交代する日が来るだろう」と思っていましたが、まさか自分とは思わず、打診を受けた瞬間は正直驚きました。

受け止めることに時間はかからなかった一方で、当然ながら不安もあったのが本音です。

詳しい理由も聞いていませんでしたが、選ばれた時点で、そこに託された思いは感じていました。「想像のつかないような発展をしてほしい」という願いが込められているのでは、と。

打診を受けた時点ではエコリングのタイ法人の代表を務めていたため、引き継ぎと共に後任に決裁権を渡し、自分の存在を消して組織が自走できる状態を確認してから帰国しました。

「ガラス張り」経営が社員にもたらす好循環

創業時から続く、今後も守るべき価値観は何だとお考えですか?

川端

一つは「一人が困っていたらみんなで助ける」、もう一つは「やりたいと手を挙げた挑戦者を支える」。

こういう価値観があるから私も成長できましたし、周囲のメンバーも成長してきています。未来のためにも守り続けたい文化ですし、組織体もさらに強くしていきたいですね。

桑田

そうですね。他社には真似できないエコリングの大きな特徴は「何でも買い取る」「お客様を手ぶらで帰す」ことですが、我が社の本当の核は「人材」だと考えています。

社員同士の仲が良く、皆がスピーディーに仕事をする。手前味噌にはなりますが、私は「芸術品のような組織体」だと常々感じています。

経営のすべてを川端さんへ一任しているところとは思いますが、あえて「期待すること」をこの場でお聞きしたいです。

桑田

まずは、社員が生き生き働ける環境づくりですね。エコリングは、言うならば大きな船です。社員が「楽に漕げる」と感じられる流れを整えるのが社長の務めだと思いますね。

利益を出す段取りは、社長や幹部が考えればよいのです。

社員にはできるだけ負荷をかけず、楽しく働いてお客さまに心から「ありがとう」と言われる環境になれば、経済的にも精神的にも豊かに発展していくと考えています。

川端

確かに、エコリングには「楽しむ」空気があります。相談やお願いをしやすい良好な人間関係の中で、私自身も楽しみながら生き生きと仕事をしてきました。

そういう環境をつくってもらえているから、相手にもそういう環境をつくっていこう、という循環が生まれるのだと思います。

桑田

企業が社員に用意できる幸せのファクターは、給料と休日の2つがかなり大きいと考えています。

社員には、”よく働き、よく遊ぶ”を徹底してほしいですし、そのために私は、2019年から3年連続で全社員の年収を毎年50万円ずつ底上げすると宣言し、周囲に疑念を抱かれながらも実現しました。

川端

エコリングは、すべてが「ガラス張り」の経営ですからね。経営数字やボーナスの状況まで、全社員が画面上で閲覧できるようになっています。皆で稼ぎ、皆で分配する──これが、エコリングの経営モットーです。

「物さえ集まれば、ビジネスにできる」究極の循環型社会への道

エコリングは、その業態自体が社会貢献型のビジネスとなっています。B corp認証取得などサステナブルな活動にも注力していますね。

川端

今後、我々はリユースの次の段階として、リサイクルに参入します。不用品を捨てずに循環させてゆくリユースにも十分なほど意義がありますが、一方で、形ある物である以上は延命でしかないのも事実です。

リサイクルであれば、この限界を突破し、資源に戻す可能性が生まれます。リサイクルとリユースをつなぎ、究極の循環型社会を生み出せる企業は我々しかないと考えています。

究極の循環型社会に向けた具体的な展開戦略を教えてください。

川端

リユースもリサイクルも、国内市場はもちろんですが、やはり海外へも展開していくほうが市場規模は大きくなります。特にアメリカやヨーロッパは伸びしろが大きいので、今後は本格的に展開していきます。

当社が扱う商材の中では、非鉄金属と衣類は集めやすく、再資源化にも入りやすい。まずはここから注力していく予定です。

またリユースにおいても、いま挑戦している小売事業を、エコリングらしい完成の形を作っていきたいですね。

買取専門店としての実績を国内外で積み上げてきたという自負をもって、単にリユース商品を販売するだけではない、エコリングらしい新たな付加価値を生み出していくつもりです。

2030年、2050年を見据えて、特に力を入れるのはどのようなことですか?

川端

一にも二にも「物を集めること」です。粗大ごみを含め、世の中の不用品をできる限り取り込む。物さえ集まれば、次のビジネスを組み立てられます。

桑田

2009年のマーケットは約1兆円規模となりましたが、当時のエコリングはやはりそれよりも遥かに小さな市場でした。その中で、エコリングは年商500億円超の規模に成長しました。

リユースマーケットも拡大し、2023年の国内リユース市場は約3兆円規模となっていますが、エコリングはこの市場拡大を追い風に成長してきた形になります。

エコリングは、約3兆円のリユースマーケットの中で年商約500億円達成と考えると、国内市場の1.67%を占める企業になります。

仮に同じシェアを維持してリサイクル、サーキュラーエコノミーまで踏み込めば、売上1兆円超も不可能ではないでしょう。

とはいえ、これはあくまで試算です。目標数値は、社員の幸せを第一に考えながら設定していくことになります。

川端さんは、ご自身のミッションをどのようにお考えですか?

川端

リユース分野で確固たる地位を築き、リサイクル分野へ未来のレールを敷きます。

その頃には現場を離れ、縁側でお茶を飲みながら「また面白い挑戦をしているな」と笑って見守りたいですね。それが次世代へ持続可能な経営体制を渡せた証しになると考えています。

SDGsやB Corp認証などの活動も、「利益が出た企業の余裕策」と見られがちですが、徹底的に追求すればするほど利益が伸びることを証明したいのです。

リユースやリサイクルの事業を進めるほど、循環型社会に近づく──そんな “やればやるほど社会に貢献でき、同時に利益も出る” ビジネスモデルを確立するのが目標です。

最後に、エコリングの社員とサステナビリティに関心を持つ読者へメッセージをお願いします。

川端

エコリングのチームは、皆が高い能力を持っています。その力を掛け算していける、一人ひとりが能力を相互に発揮しあえる舞台を作り込むのが、私の仕事です。

私たちエコリングのゴールは、「川が流れれば水車が回る」のと同様に、「やればやるほど社会が良くなる」仕組みを構築し、広げることです。

それには仲間も必要ですし、助けていただくこともたくさんあるでしょう。

さまざまな出会いが必要になっていくと思いますので、そんなエコリングの挑戦に、皆さんにもどこかで関わっていただけると嬉しいです。

◎プロフィール
桑田 一成
日本大学農獣医学部卒業後、郵政省に入省(外郭団体簡易保険福祉事業団勤務)。2001年にインターネットコンテンツ会社を設立し、2005年に株式会社エコリングに組織変更を行い代表取締役として事業を牽引。2025年に株式会社エコリングの経営を後継に譲り渡し、現在はエコリングHDの代表としてグループを総括する。
極貧時代の経験よりブランド品の買取業に着目し、オークションを利用した業界初の買取専門店を展開。リユース事業が社会貢献の側面のみならず世界のインフラ事業になることを確信し、日本から世界へと事業進出。(現在アジアを中心に10か国に展開中)
グループ全体でB Corp認証取得を行うなど、社会貢献企業の一端として名乗りを上げ活動中である。

川端 宏
2006年4月に株式会社エコリングに入社後、10か月で店長に抜擢。2008年には管轄エリアのサブマネージャーに昇進し、エリアマネージャー経験を経て2016年に同社 常務取締役となる。
常務就任後、タイ法人でトラブルが発生。その問題解消のため自ら常務を退職しタイ法人の社長となり経営を立て直す。また、コロナ禍では政令により一切の営業活動が行えなくなるも短期間でビジネスモデルを大きく変革させタイ法人の黒字化に成功。その後、次世代に向けたHD組織再編に伴い2025年4月に株式会社エコリングの代表取締役に任命される。
日本とタイ国の両面から世界のリユース品の価値や商流を学び、海外で培った経営者としての経験を土台に、自社をサーキュラーエコノミー企業へと変革させるべく活動中。

◎会社概要
会社名:株式会社エコリング
URL:https://ecoring.co.jp/
設立:2001年事業内容:リユースサービス事業

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ライター:

人のあらゆる営みを有機的に描くことを目指す、ライター・編集者。ブランディングエージェンシーにてプランナー・ディレクターとしてプロモーション企画やコンテンツ制作に従事。やがて自身の文章への執着心に気づき、PR会社勤務を経てライター・編集者として独立。人の動機や感情に焦点を合わせながら、伝わる言葉を紡ぐことを目指している。

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