塾や家庭教師とは異なる「コーチング」の手法を活用した勉強指導法
・株式会社 Cocoachについて教えてください
私たち株式会社 Cocoachは、中高生向けオンライン個別指導サービスを行っています。
事業のミッションは「目標達成のために主体的に行動できるような機会を提供する」ことです。既存の塾は、生徒に勉強の問題を教えることが多いと思いますが、当社は「将来どんな人になりたいか」「そのためにはどんな学歴が必要か」という長期目標をコーチングの手法で一緒に決めるところから始めます。それから学習計画を立て、目標達成に必要なことを毎週教えるという方式です。志望校合格は、あくまで人生における通過点。最終目標ではありません。Cocoachの指導は、受験勉強を通じて「自発的に目標を決めて達成するルートを作る力を作ること」を目指しています。
私はもともと、株式会社Career Hackerという東大・京大の新卒人材紹介事業をやっていたのですが、2020年6月にバイアウトし、社名変更して株式会社 Cocoachを設立しました。2021年2月に6名のエンジェル投資家から資金調達してサービスを開始しています。
・サービスを始めた経緯について教えてください
日本は「なんとなく生きている」人が多いのではないかと、ずっと考えていました。従順で、親や上司に「言われたからやる」という人が多い。それは、自分は何がしたいのか分かっていないからですよね。自分で考えたことではないから、前向きになれないし「やらされ感」がある。いま、日本中がこんな閉塞感に包まれています。
それは、子供の時に「こうなりたいな」という人に出会う機会がなかったからではないでしょうか。仮に、小中高生の頃から「自分で」人生の目標を定め、それを目指す手段が分かれば、もっと主体的に自分の人生を生きられるのではないかと思います。
受験でも「東大や京大に入る」のが目標になってしまうと、それだけのために頑張るのは難しいでしょう。将来なりたい目標を決めて「そのためにあの学校に行くことが必要だ」と意識ができていれば、受験の後で燃え尽きることもなく、将来に向かって頑張れるのではないでしょうか。そう思って小中高生向けのコーチング指導を始めました。
私たちは、受験指導を掲げてはいますが、勉強だけを教えるサービスではありません。受験や勉強はあくまで手段。子供たちが自発的に目標を設定し、それを達成する方法を教えることが目的です。これからの人生において、目標設定と計画と実行が習慣化できれば、スポーツでも就活でも幅広く応用できます。なんでも達成できる人になる、実行力が高い人を作り上げたいと考えました。
・子供たちの「将来の目標」はどうやって決めるのですか?
「将来の目標」を決めるのは、とても難しいです。大人でも即答できる人はそう多くはないと思います。まして、子供の時は世界が狭いのです。小中高生の時に会える大人は、親や学校の先生、あるいは友達の親御さんくらいではないでしょうか。しかし、年が近くてかっこよくて憧れられる人に会うことは難しいですよね。
Cocoachでは、東大・京大・阪大・神大を中心とした一流大学に通うコーチを厳選して採用しています。彼らは「勉強ができる」だけでなく、それぞれが将来の目標を持っており前向きな方たち。生徒から見てロールモデルになれるような人材です。彼らに、自分の人生の目標と、受験勉強をした先にある「大学生になったらこうなる」というリアルを語ってもらいます。いろいろな人に会うと「この先生かっこいいな」「こうなりたいな」というコーチが現れます。まずはそこがスタート地点です。
いろいろなコーチたちに会い、彼らやその周囲の話を聞くことで「楽しそう」「興味ある」と思えることが出てきます。将来の目標が決まったら、それに合わせた大学に行くことが必要だと分かり、将来の目標と志望校が定まるという流れです。志望校が決まれば、そこからどのように勉強を進めるべきか、計画を立て学習をサポートしていきます。
・目標に向かってどのように指導を行うのでしょうか?
毎週のコーチングでは、時間が限られています。
その中でコーチが行うのは、勉強そのものではありません。モチベーション管理、勉強の仕方を教えることと、学習計画管理の3つです。
コーチと毎週会って話し、具体的に将来の目的を定め、大学や学部まで志望校が具体的に定まることで「勉強を頑張ろう」というモチベーションが高まります。ですが、受験までの道のりは長丁場です。毎週会って話すことでモチベーションを持続させます。
学習方法は、当社で独自に研究開発した、各教科についてのおすすめ勉強法、参考書の使い方、記憶の定着方法などを伝えます。勉強そのものは、各自でやってもらうので、できる限り効率よく進められる方法を開発しました。
学習計画管理は、ITの活用により、生徒の学習時間などのデータを全て可視化したうえで、各科目の進捗管理を行っています。
いわゆる塾や家庭教師の場合、毎回問題の解き方を教えます。しかし、その問題ができるようになるだけで根本的な解決になりません。塾や家庭教師の時間だけ勉強してあとは勉強しないということが起こりがちです。
しかし、Cocoachでは、勉強するのはコーチングの時間外。つまり自習です。コーチ以外の自習時間の方が圧倒的に長いので、その時間を有効に生かせるように学習計画を立てます。
大事なのは、目標に向かって勉強しているので「やらされ感」がないところです。
これまでのケースだと「先生みたいになりたいから勉強を頑張る」となり、3カ月くらいで自習が習慣化します。放っておいても勝手に勉強するようになるのです。こうして、生徒の勉強の質と量が上がりますので、必然的に成績が上がります。
ここで身に着けた「目標に向かって必要なことを計画立てて行う力」が役立つのは受験勉強だけではありません。就職や資格試験、仕事やスポーツなど、人生のあらゆることに役立ちます。
子供たちが憧れる人材をコーチとして選抜、マッチングアプリも構想
・子供たちが憧れるコーチはどのように選抜しているのですか?
Cocoachのコーチは、一般の普通の塾とは形態が違います。コーチに求める資質は、勉強の教え方がうまいかどうかだけではありません。
Cocoachのコーチは「イキイキして何かに向かって頑張っている人」に重点を置いて選抜しています。子供が将来の目標に向かって受験へのモチベーションをアップさせるためにはワクワクすることが大事です。そのためには、コーチ自身が人生を楽しみ、目標に向かって取り組んでいる姿を見せるのが一番だと考えています。
また、Cocoachのコーチに同じく求めるのはファシリテーション能力です。
指導はオンラインのため、オンラインでのコミュニケーション能力が高いかどうかも重視します。生徒の本当の要望と実力を引き出し、成果を出すために舵取りする力を持つ方を選抜し、コーチとしての教育を行っています。
今後、事業の広がりに合わせて、以前行っていた東大・京大の新卒人材紹介事業(株式会社Career Hacker)でのノウハウも生かし、採用を行う予定です。
・将来的な展望を教えてください
現在は、コーチと生徒のマッチングを私たちが介在して行っていますが、将来的には、マッチングアプリのようなシステムを導入したいですね。
先生の写真やプロフィールから、ユーザーである生徒自身が、「この先生の話を聞いてみたい」「指導してほしい」と思えるコーチを探せるようなシステムにしたいと思っています。
マッチングしたらメッセージできるようにして、そのままコーチングに進んでもらう流れです。
マッチングさせることによって、気に入っている先生に会いやすくなりますし「この先生の言うことなら聞こう」と思ってもらいやすいと思います。
小中高生の頃って「この先生の言うこと聞きたくないな」というようなことがあったと思うんですよ。逆に「かっこいい」と思う先生の言うことなら聞こうと思ったり。自動でマッチングできるようにすることで、私たちが介入するような、労働集約的な業務も徐々にシステム化していこうと構想しています。
株式会社 Cocoach(ココーチ)のステークホルダーへの想い
Cocoachのお客様は直接的には小中高生です。
とはいえ、お子様の教育に関しては、保護者様に意思決定権があります。
皆様のお話をお聞きすると、勉強ができて良い学校に行ってほしいという希望はもちろんお持ちです。ですが、それ以上に「良い子に育ってほしい」「やりたいことで食べていけるようになってくれたらそれで良い」という方がとても多い。
「東大や京大に行ければいい」という家庭は逆に珍しくなっています。
Cocoachの理念では、勉強はあくまで手段であり、目標は「やりたいこと」です。当社のサービスをご利用いただいているご家庭では、共感いただいていますが、こう考えるご家庭は全体から見ればまだ少ないのが現状。「とりあえず勉強させる」「とりあえず習い事をさせる」ではなく、生徒一人ひとりに向き合って、「やりたいこと」を探して、達成するためにはどうしたらいいか、その方法を一緒に考えていきたいです。この概念を日本で広めたいですね。
また、ご利用いただいている生徒さん。
皆さん目標に向かって頑張っていて、本当に良い生徒たちばかりと思います。
将来、皆さんが大人になって、一緒に何かできたら嬉しいですね。
現在は、社員・業務委託4名・アルバイト数名という体制で事業を行っています。
感謝の気持ちを伝えたいのは、私の二番手で働いてくれている河明宗さん。
彼は京大の後輩で、出会ったのは2年前、オンラインで紹介されました。彼が3年生の時ですね。実際に対面したのは2020年になってからです。
私が経営している別の会社に、エンジニア志望でアルバイトに入ってくれて。最初は初心者だったのですが、スキルをどんどん身に着けていきました。そのうち人材の事業でも「手伝いたい」と申し出てくれたのです。
Cocoachの起業の時にも「一緒にやろう」と声を掛けました。「このビジョン、めっちゃ共感します!」とすぐにジョインしてくれて嬉しかったですね。
仕事を一緒にするようになって、改めて実感したのが、彼は非常に実装力が高い人だということです。コーチの採用と研修、授業プログラムの作成だけでなく、ドキュメンテーションや雑務なども巻き取ってくれて、今では私の事業を全て手伝ってくれています。
普段から聞きたいことは聞くようにしているのですが、あえて彼に聞いてみたいことは、なぜ私の事業を手伝ってくれるのか、ということですね。
弊社のマーケティング関連の業務をお願いしているRe.Hatch株式会社の山崎源さんです。
当社は、CEOが私で、COOが河さん、あとCFOとCTOがいるのですが、マーケティング担当はいませんので、彼に外部委託しています。
彼と出会ったのは2019年。私が懇意にしている知人の紹介でマーケティングに強い経営者を紹介してもらいました。それが山崎さんです。facebookやInstagramのマーケティングをはじめ、広告運用などのコンサルテーションをしていただいています。彼自身も経営者なので日々とても多忙のはずです。そんな中、毎週のミーティングで「こういうことをやったらいいんじゃないか」という改善点を常に持ってくるところは、本当にすごいなと感心しています。おそらく仕事抜きで手伝ってくれているところもあると思うので、いつも感謝ですね。
山崎さんは、他社の商材のマーケティングを代行して販売するコンサルタントですが、ご本人が個人的に手がけたい仕事は何かあるのかな?というのを聞いてみたいです。
私が2017年10月に株式会社Career Hackerを起業した時から税務関係でお世話になっている、伊東晃集税理士事務所(https://sumline.jp/phonebook/professionals/156719)の伊東先生。
起業にするにあたって、先輩に紹介していただきました。決算や申告もそうですが、日常的に相談できる方で、とても頼もしいです。
私が税務関係についてあまり知識がないので、無理難題を言っていると思うのですが、困ったことがあればすぐに対応してくれます。例えば、2020年ではコロナ対策なども大変お世話になりました。とても感謝しています。
当社は、2021年2月に初めて、エンジェルラウンドにおける資金調達を実施しました。
その時にお世話になった北村さんは、京大の先輩で、ご自身も事業を立ち上げて投資も行っている方です。
「岡本くんがやりたいこと一緒に叶えよう」と投資を快諾いただきました。それだけではありません。助けが必要な時には有識者の方に引き合わせてくれたり、ご自身も教育関係の事業を行っているので、教育に関するアドバイスをいただけたりと、いつも非常に感謝している方です。
前向きで実行力の高い未来世代を生み出し、日本の未来を拓く
私は、基本的にとても前向きな人間なんですよね。だから、前向きな人を育てたいという気持ちがあります。
Cocoachでは、学習をメインで教えているので、受験に向かって勉強ができるようになる部分を底上げしています。ひいては受験だけでなく高い目標を持ち、それに向かって頑張れる人の育成が目的です。仕事でも指示待ちではなく自発的に取り組む、モチベーションが高い人材になります。起業するような人も増えていくでしょう。
Cocoachを通じて、前向きで実行力の高い人材を生み出すことで、将来的には日本という国の国力を上げることにつながるのではないかと考えています。企業には、明日の社会を良くする責任があると考えています。日本の子供たちに明るい未来を作れるように努力していきたいですね。
【プロフィール】
岡本 和輝
株式会社 Cocoach(ココーチ) 代表取締役社長
1993年生まれ 京都大学工学部電気電子工学科を経て、京都大学大学院情報学研究科卒業。大学院在学中の2017年に、東大・京大の新卒人材紹介事業を行う株式会社Career Hackerを起業。
2021年から株式会社Cocoachにて、中高生向けオンライン個別指導サービスを開始。
【企業概要】
株式会社 Cocoach(ココーチ)
設立:2017年11月 (※2021年1月に事業変更)
〒606-8302 京都府京都市左京区吉田牛ノ宮町6-1