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一般社団法人再スタート支援協会

https://saistartshien.or.jp/

東京都港区三田3丁目7番13号ハイライフ三田603号

“再スタート”支援を掲げるYOTSUBA、中村元さんが語る社会的使命

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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キリオさん
キリオさん(撮影:加藤俊)

再起を支えるための総合支援サービスを展開する中村元さん(SNSでは「キリオ」)が手掛けるYOTSUBAは、逮捕歴や懲戒解雇といった社会的な挫折を経験した人々の再出発を支援している。同氏が語る活動の原点には、自身の経験と、やり直しができる社会を目指す強い信念がある。

逮捕歴をきっかけに見つけた再出発の道

中村さんは過去に大手メディア企業で働いていたが、ある出来事をきっかけに逮捕、懲戒解雇された経験を持つ。

「最初は匿名でブログやSNSで自分の経験を発信していました。当時、クビになった自分を首の長い“キリン”に重ね、ハンドルネーム『キリオ』を使い始めたんです」と語る。

キリオのアイコン
キリオのアイコン(提供:再スタート支援協会)

小さなベンチャー企業に再就職後、自身の経験をブログやSNSで発信し始めたところ、思いのほか反響が大きく、同じような経験のある人からのメール相談が相次いだ。

「キリオさんのブログを読んで生きる希望を見出しました」

「死のうと思っていたけれど、もう一度頑張ろうと思えました」

こうした連絡を受けるたび、自身の活動の必要性を強く実感するようになった。一方で、国や民間団体などが支援してくれる受刑者とは違い、比較的軽微な罰金刑や執行猶予、懲戒解雇等で社会のレールから外れてしまった人たちにとって、相談できる窓口がないという社会課題に気づいた。

2023年には脱サラして「YOTSUBA」をリリース。Zoomを使った本格的なオンライン相談を開始した。

YOTSUBAの概要と活動内容

2023年11月にリリースされたYOTSUBAは、逮捕歴や懲戒解雇歴のある人々を対象にした就職支援サービスを提供している。利用者は年間200人以上に上り、転職市場でネガティブな経歴が障壁となる中、マンツーマンのキャリア支援が好評を博している。

「特に30代から40代の男性が多いですね。家族を抱えている方も多く、どうにかして生活を立て直したいという強い意志を感じます」と中村さんは利用者の現状について説明する。

また、実名報道やネット上のネガティブな情報が残る状況を改善するための逆SEO対策も行っている。具体的には、検索結果から逮捕歴などの情報を押し下げるコンテンツ作成支援を提供し、ネット上に名前が残ることによる就職活動への悪影響を軽減する。

キリオ
キリオさん(撮影:加藤俊)

中村さん
「ネット上に名前が残っていると、就職活動に大きな影響を及ぼします。家族や友人にも迷惑がかかるケースがあり、何とかその負担を軽減したいと考えています」

YOTSUBAのビジネスモデルは、個人からの相談料収入を主な収益源としており、就職が決まった際に、その年収の10%を成功報酬として受け取る仕組みだ。

また、個人の名前を検索した際に、逮捕歴などがネットニュースで出てしまう人を対象に、デジタルタトゥー対策も実施している。デジタルタトゥー対策については、依頼者の状況に応じた最適な対策を提供し、リーズナブルな料金でサービスを展開している。

「大手の弁護士事務所では1件5万円から10万円かかるようなケースでも、我々はより手軽に利用できるよう配慮しています」と中村さんは説明する。

このデジタルタトゥー問題に取り組む背景には、中村さん自身の経験もある。

「私も過去に実名報道され、その影響が長く続きました。ネット上の情報は一度拡散されると消えにくく、誰もがその影響を受けるリスクがあります」と説明する。YOTSUBAでは、こうした状況に苦しむ人々に対して、少しでも負担を減らせるよう日々取り組んでいる。

社会包摂が欠如する現状と支援の必要性

日本では、懲役刑に至らずとも、企業内でのトラブルや不祥事が原因で職を失った人々に対する支援が不足しているのが現状だ。社会包摂の仕組みが十分に整っていないため、再就職や社会復帰に大きな障壁がある。

中村さん
「実際に懲役刑には至らなくても、懲戒解雇や不祥事によって職を失うケースは多いです。こうした方々は、罪の重さにかかわらず、社会から排除されてしまう現実があります」

厚生労働省が公表した『令和4年 労働条件総合調査』によると、日本では年間約1万人以上が懲戒解雇されている。これらの人々の多くは、社会的な支援の対象外とされており、生活の立て直しに苦しむ状況が続いている。

中村さん
「ハローワークなどの公的支援機関でも、過去にトラブルを抱えた人への支援は限定的です。そのため、我々のような民間の支援が重要になってきます」

こうした状況を受け、中村さんは2024年に新たに「一般社団法人再スタート支援協会」を設立し、無料カウンセリングを通じて支援活動を強化している。「協会では、まずは相談者が安心して話せる場を提供することを重視しています。多くの人が、どこにも相談できずに苦しんでいるのが現状です」と中村さんは語る。

協会設立以降、多くの無料相談を受け付けており、相談内容は転職やデジタルタトゥー対策に関するものが中心だ。「相談者の中には、過去の過ちを悔い改め、新たな人生を歩みたいという方が多いです。そういった方々が社会に貢献できる場を見つけられるよう、私たちはサポートしています」と中村さんは説明する。

利用者の声から見える再スタートの価値

面談者との面接の様子
キャリアカウンセラーとして面談者と打ち合わせる中村さん(提供:再スタート支援協会)

実際に、YOTSUBAを利用した20代の男性は、「逮捕歴の影響でどこにも再就職先が見つからず、人生の終わりを覚悟していましたが、中村さんのサポートのおかげでようやく希望を取り戻しました。今は新しい職場で、家族と共に新しい生活を始めています」と語る。

別の利用者は、「ネット上に残る逮捕記事のせいで、転職活動が全くうまくいかず、精神的にも限界でした。YOTSUBAに相談したところ、逆SEO対策を進めてくれて、検索結果が改善しました。面接でも堂々と過去を説明できるようになり、無事内定をもらえました」と、その成果を実感している。

中村さんは、「こういった声をいただくたびに、私たちの活動が少しでも誰かの助けになれていることを実感します。まだまだ道半ばですが、これからも多くの人の再スタートを支援していきたい」と意欲を見せる。

“四葉のクローバー”に込めた思い

サービス名の由来について中村さんは、「四葉のクローバーは、踏まれることで生まれると言われています。過去に傷ついた人たちが、再び社会に貢献できるような存在になってほしいという願いを込めました」と話す。

さらに、一般社団法人再スタート支援協会の設立についても語る。「無料カウンセリングを提供することで、まずは安心して相談できる場所を提供したいという思いがあります。誰もが最初の一歩を踏み出すきっかけを必要としています」とのことだ。

“やり直しができる社会”の実現に向けて

中村さんは、「自分も一度過ちを犯した人間であり、人様の“支援“をできるほど立派な人間ではありません。犯罪加害者を擁護したいわけでもなく、社会的制裁を受けるのは当然だと考えます。でも、自分の愚かな経験であっても、それを必要としてくれる人がいる限り、活動を続けたいし、人生に絶望している人たちが前を向くきっかけになるのなら、これ以上の幸せはありません」と語る。

コンプライアンス遵守が叫ばれて久しく、逮捕歴や懲戒解雇といった経歴に“バツ“のある人が社会的に排除されていく傾向は強まるばかりだ。まして社会的ステータスの高い人材は軽微な事件であっても実名報道される可能性が高く、デジタルタトゥーとして残り続ける限り社会復帰は困難を極める。

中村さん
「YOTSUBA利用者の多くは、一流企業や難関大学出身者、公務員など立派な経歴を歩んできた人たちばかりです。彼らが過ちを犯したことはもちろん非難されるべきですが、これまで積み上げてた努力や経験、能力にウソはありません。

こうした“ワケアリ人材“を社会的に殺すのではなく、再活用することが、採用活動に苦しむ企業の課題解決につながるのではないでしょうか」

社会全体の成長に貢献したいという中村さんの活動に、今後も注目が集まるだろう。

「僕も過去に、社会復帰を目指した際に多くの壁にぶつかりました。でも、支えてくれた人々のおかげで今の自分があります。その恩返しをしたいと思っています」と、中村さんは支援活動への思いを改めて強調した。

「順調なキャリアを歩んでいても、一瞬の気のゆるみやストレスが原因で、過ちに手を染めてしまう人は少なくありません。いつ誰が転落するかわからないんです。もちろんルールを破ったのであれば、それ相応の制裁を受けるのは当然です。

しかし、だからと言って人生を諦める必要はありません。しっかりと自分を見つめ直し、更生し、前を向こうとする方であれば、いつか必ず社会に役立てる日が来るはずです。そうした方々を微力ながらサポートすることで、社会貢献してきたいと考えています」と語る中村さんの言葉には、確固たる決意が感じられる。

プロフィール 中村元さんとは

懲戒解雇されたら人生逆転できましたの著書
著書『懲戒解雇されたら人生逆転できました』

中村元さんは、一般社団法人再スタート支援協会の代表理事であり、株式会社Everalの代表取締役も務めるキャリアカウンセラーだ。SNSでは「キリオ」のハンドルネームで知られ、逮捕歴や懲戒解雇などを経験した人々の支援をライフワークとしている。

1987年生まれの中村さんは、早稲田大学を卒業後、大手メディア会社に就職。在職中に刑事事件を起こして逮捕され、懲戒解雇処分を受ける。人生のどん底を味わい、先の見えない不安と絶望に襲われたが、「あなたの経験は、いつかきっと誰かの役に立つ」という担当弁護士の言葉を胸に再起を決意したそうだ。

「隕石でも落ちて地球ごと消えてしまえばいい、と本気で思っていました」と中村さんは振り返る。しかし、前を向き、必死で再就職活動に取り組んだ結果、未経験のWebマーケティング分野のホワイト企業への就職に成功。新規メディアの立ち上げやSEO対策、採用担当、転職支援サービスの責任者などを歴任し、キャリア支援の知見を深めていった。

2018年には、自身の経験を発信するブログ「ぼくだからできること。」を開設し、“ワケアリ転職”に関する情報を発信。ブログは累計70万人以上の訪問者を記録し、多くの共感を集めた。2023年には独立し、キャリアコンサルタントの国家資格を取得。株式会社Everalと一般社団法人再スタート支援協会を設立した。著書「懲戒解雇されたら人生逆転できました」はAmazonKindleカテゴリーランキング複数部門で1位。家族は妻と小学生の男児。

「あなたの経験は、いつかきっと誰かの役に立つ」との信念のもと、YOTSUBAの活動に取り組む中村さんは、「過去の失敗を乗り越えて社会に貢献するための支援が必要」と語る。

・YOTSUBA公式サイト
https://yotsuba-career.com/

・Xアカウント(キリオ)
https://x.com/kirio_desu

・前科・逮捕・懲戒解雇からの社会復帰を応援するメディア「人生やり直しラボ」
https://everal-office.co.jp/media/

・キリオの個人ブログ「ぼくだからできること。」
https://bokudakara.com/

・一般社団法人再スタート支援協会
https://saistartshien.or.jp/

・株式会社Everal
https://everal-office.co.jp/

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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