取材:中村聖菜、Che Alice、周依琳、植田晃仁
文:周依琳
取材先:BEENOS株式会社 取締役 竹内拓様、社長室ブランドマネージャー 笠松太洋様、社長室広報 岡野渚様
業界:IT業界
BEENOS株式会社は個人が海外から日本の商品が買えたり、日本から海外の商品が買えたりする越境EC(電子商取引)のプラットフォームを運営する事業を皮切りに、様々なビジネスを展開しています。
この会社は1999年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス出身の4人で創業。そのうち3人が帰国子女だったことから、日本の良さを生かし、海外と繋げるビジネスをしたいという思いで始めた企業です。
今や、東証一部に上場し1,850社以上のECサイトと連携する、グローバルコマースのリーディングカンパニーとなっています。この度、同社の事業構造や、将来の展望、欲しい人材などについて伺いました。
-御社は国境を越えたECやブランド品の買取、ライセンス商品の開発など多様な事業を展開されていますが、どのように全体像を理解すればよろしいでしょうか?
「当社は、グループの各事業を子会社が担っているので分野別の子会社の事業内容を説明していくのがわかりやすいと思います。
まず、海外と日本の間で電子商取引を行っているのがクロスボーダー部門です。この中にtenso株式会社と株式会社ショップエアラインという二つの子会社があります。海外に居住していて日本の商品が欲しいというお客様をサポートしているのが「転送コム」です。
海外から日本の商品が欲しくても、日本側のECサイトでは、海外配送を行っていないケースが多々あります。そこで、売り手には当社が保有する国内の倉庫にいったん商品を納入してもらい、この倉庫から海外に発送をすることで、日本の商品が買えるようにしています。
また、日本語が読めない方向けに「Buyee」といった購買を代行するサービスを用意し、海外のお客様の言語に合わせて、サポートできるような体制を作っています。これら2つのサービスの取引の流れとしては、海外から来た購入希望に対して、楽天やYahoo!等1,850社とアライアンスを組むことによって、tenso株式会社の仕組みが使われるようになっています。
「転送コム」のサービスフロー
この逆が、ショップエアラインという子会社です。この会社は現在「セカイモン」というサービスを提供しています。アメリカの最大手オークションサイトeBayとアライアンスを組んでおり、日本のお客様が海外の商品が欲しい時に購入できるようになっています。このサービスを行う理由は日本のECサイトでは買えない海外の商品が欲しいときに「セカイモン」を利用して手に入れてもらうためです。
このサービスでは日本のお客様のかわりにショップエアラインがその商品を買って、日本に送っています。つまり、日本人が海外からものを買うことをサポートする購買代理サービスということですね。
さて、電子商取引というとBtoBが一般には多いのですが、個人が特定のものを買いたい時にサポートする会社は実質少ないです。なぜなら個別商品の対応に相当な手間が掛かるからです。BtoBの場合ですと、通関の際、例えば同一商品で、一万個のものを一度に報告してしまえば、その一回の手間だけで終わります。
しかし、個人が単品で欲しい個別商品に限定してしまうと、商品ごとに一回一回通関の際に報告しなくてはなりません。これが業務の手間となってしまうのです。BEENOSからすれば、その業務を引き受けることで差別化でき、かつ大きなビジネスチャンスにもなっています。
次に、リテールライセンス部門では自社商品の開発と販売を行っています。BEENOSは元々ネットプライスというeコマースをやっていたのですが、次第にやっているうちに自社製品を作った方が高品質でお客様満足度の高い商品が作れることがわかりました。ならば自分たちで商品の企画から販売、PRまでワンストップで行おうと出発点になった会社がモノセンスです。自分たちでプロダクトを作っていく、そして、その商品をお店に卸したり、ECサイトで販売するという流れがリテールライセンス部門の概要です。
その中の一つの子会社SWATiでは、バスソルトやキャンドルを作って様々な小売店に置いてもらっています。
さらにモノセンスのプロダクトは多岐に渡って行っており、タレントやアイドルグループのグッズも作っています。アーティストのプロダクションはコンサートやタレントマネジメントは得意なのですが、活動の中でグッズを開発し、物販につなげて利益を出すことまで上手くできない場合があったりします。モノセンスはそこを企画から販売まで全部サポートしています。
また、ブランド品の買取り、販売を行うバリューサイクル部門では、「ブランディア」というサービスを展開しています。個人の保有する中古品の買取をして、それをヤフオク!や楽天、eBayに自動で商品を出品して売るということを行っています。質屋やリサイクルショップと異なる点としては、多くの方にとって高級ブランドの買い取りの時、はじめに質屋に持っていかなくてはいけないため敷居が高いと感じる方も多いでしょう。
しかし実際、多くの人が所持しているものは高級ブランドではなく普及ブランド品なのです。そのような高級ブランドではないセカンドブランド品をリサイクルショップに持っていくと、1Kgあたりで測られ、全部で10円など悲しい結果になってしまう時もあるでしょう。このように希望に沿った値段で売ることができないところをサポートしたいという思いの元、ブランディアを立ち上げました。
ブランディアは利用も簡単です。お客さんに宅配キットの中に商品を入れて倉庫に送っていただくだけで、ブランディアが一点一点丁寧に査定します。質屋さんの場合、高級ブランドではないときは買い取れませんと返品してくる時もありますが、ブランディアでは幅広いブランドを取り扱っています。
さらに、非対面なのも特長です。ブランディアは店舗を持っていませんが、研修を受ければ誰でも査定ができるシステムを作り上げているためローコストオペレーションが可能です。そのため様々な商材を取り扱うことができ、自動的に出品していくという技術面においても優位性が発揮できるなど、他の質屋さんには真似できないサービスが充実しています。」
-amazonとの差別化はどのようにお考えなのでしょうか?
「amazonは会社規模がとても大きいため、BEENOSは正面衝突で競争したとしても勝てる見込みは少ないでしょう。しかし、amazonが不得意の分野も存在します。また、amazonでは制限もあります。例えば配送の際の縦横高さの長さ制限が設けられている点が挙げられます。この制限があることで、お客様がamazonで大きいものを買おうとしても、この基準を超えたものは買うことができません。BEENOSではamazonがやらないことをやることで差別化を行っています。
また、欲しい商品をまとめて国際配送して送りたいと思った時にBEENOSでは他の会社の商品と共にまとめて同梱して送ることができきるため、国際配送料を圧縮できることもあります。。これも大きな差別化ポイントと言えるでしょう。」
-インキュベーション事業について教えてください。
「実はインキュベーション事業には思い入れがあり、最初からやりたかった事業なのです。しかし、創業当初は戦略的にEコマース事業にフォーカスし、インキュベーション事業ではなくそちらに集中することを選択しました。本件には上場してから後にようやく本格的に取り組めるようになりました。
ただ、我々は確実に伸びそうな出来上がったベンチャー企業に投資してお金儲けしたいというわけではなく、私たちが培ってきた経験やノウハウを提供してスタートアップを育てて行きたいという思いを強くもっていて、それを現実に移すことができるようになりました。我々が創業したばかりの頃、どのように人を採用すれば良いのだろう、組織づくりはどうすれば良いのだろうと苦労したため、シードラウンド期のスタートアップの気持ちがよく分かります。インキュベーション事業を通して起業家仲間というコミュニティを創っていきたいと思いました。
そして、そのコミュニティを日本のみならず、世界にも広げていきたいと考えています。BEENOSはY Combinator(ワイ コンビネータ)、500 Startupsなどアメリカの有数のスタートアップコミュニティと繋がりを持っているため、東南アジアのスタートアップの会社にそのコミュニティの良いところやBEENOSグループが保有するノウハウを提供し、、起業家に寄り添いながら、さらに出資もしている流れです。
具体的にこれまで出資したのはインドネシア、インド、ベトナム、トルコ、アフリカなどのスタートアップが挙げられます。ファウンダー(創業者)と繋がり、自分たちの立ち上げていった思いを共有した上で出資しているのです。
元々は自分たちがeコマースをやっていたため、初めにeコマースのプラットフォームを作っている会社と繋がり、次にeコマースには決済が必要不可欠であるため、決済に携わっている会社と繋がり、その他の周辺事業にも繋がりました。早い段階で良い関係を築き、投資しているというのが現在のBEENOSのスタンスであり、強みでもあります。
仲間が増えることで、ビジネスの視野も広がり、リンクする機会が多くなるからです。BEENOSではスタートアップのファウンダーに寄り添いながらインキュベーション事業を拡げていきたいと思います。」
-BEENOSではどのような人材を求めていますか?
「BEENOSが採用に関して重視する三つの素養として掲げているのは①自分の仕事だけでなく様々なことに積極的に行動できる主体性②エネルギッシュに活動できる熱量③前向きに物事を捉えるポジティブさです。
その中でも特に主体性を見ています。言われたことをひたすらやるだけの人や指示を待つだけの人ではなく、常に周りを見ながら気配りし、自分の役割外のことにも目を向けられる人と仕事がしたいです。主体性のある人は、例えば事業がピンチな時に動ける人材であり、広い視野で最大限の努力ができるので、そんな人を強く求めていますね。
エンジニア部門やマーケティング・営業などのビジネス部門で細く見ると様々な要求はあるものの会社全体として欲しいのはこの三つの素養のある人です。そのような人材を採用しているので会社内の雰囲気は明るいですが、どこを切っても金太郎の顔が出てくる金太郎飴のように同じような人だらけというわけではなく、それぞれのパーソナリティなどのスパイスが加わり、多様性が生まれています。採用時は学歴・性別・国籍は基本的に見ないで、三つの素養を前提として各人の能力を見て共に働きたい人を採用します。」
-最近企業は様々なステークホルダーへの価値を提供するべきという声がありますが、御社にとってステークホルダーとはどのようなものがありますか。また、それぞれに対してどのような活動をされていますか?
「我々にとってステークホルダーとは、株主の方であったり、社員であったり、ユーザー、また我々のサービスに携わってくださっている取引先の方々など広く視野に入れています。」
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この度は将来、より情報化社会をリードする業界である越境eコマース業界について取締役である竹内様をはじめ、取材させて頂いた皆様からゼロから一つずつ丁寧に説明して頂きました。私は現在、生命情報学科という生物と情報を中心に取り組む学科に所属しております。
そこで学んだことを通して私は、将来はグローバル化を始め情報社会がより本格的に確立され、スマホやアプリケーション等電子デヴァイスやソフトウェア、IoT、ビットコイン、ブロックチェーンによる情報提供等、日常生活を始め、情報に関する先端技術が世の中を変えていくと考えております。そのため今回の取材を通して、情報化社会の中では、人とインターネットの共存こそが次世代のカタチであると改めて気づかされました。