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マテックス株式会社

https://www.matex-glass.co.jp/

〒170-0012 東京都豊島区上池袋2-14-11

03-3916-1231

窓を開き、集いの場を拓く。社会デザインのための図書館“SDL”とは?

ステークホルダーVOICE 地域社会
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(撮影:安藤憧果)

窓の専門商社、マテックス株式会社が運営するHIRAKU IKEBUKURO 01 SOCIAL DESIGN LIBRARYにおいて、8月3日と4日に渡ってオープニングセッションが2回行われ、窓の社会性を問いかける、中身の濃いイベントとなった。その模様をお届けしつつ、同社が窓を通じて目指す、新たな地平をご紹介しよう。

窓は開かれている。通り過ぎると、人生が映し出される。人々の会話が漏れ聞こえ、無性に想像を巡らされる。

窓は駆り立てる。窓外の人や自転車や車の行き来を眺めると、自分も表に出て、のんびり歩いたり、ひたすら走ったりしたくなる。

窓は取り戻させる。窓辺に佇み、鳥や虫の声を聴き、暖かい日差しを浴び、清涼な風を受けるだけで気持ちが高まる、または鎮まる。

さる8月3日と4日に連日行われた、マテックスが5月19日から開設した「HIRAKU IKEBUKURO 01-SOCIAL DESIGN LIBRARY-」(以下、SDL)のお披露目イベントは、聴衆に窓の持つ多様な意味を悟らせてくれた。

窓はただ採光や通風や眺望のため、住居において物理的に必要なだけではなく、それを基点に生活を設計すべき空間なのだ。

マテックスは22年4月からサードプレイス「HIRAKU IKEBUKURO」を展開してきた。SDLはJR池袋駅東口より徒歩10分ほどの場所にあり、約1万冊の蔵書を備えるスペース。

そこで社会デザインを探究し、ビジネスデザインを構想する講座等のプログラム、蔵書を活用した常設および企画展示と、個人や団体の持ち込みによるシェア型の本棚事業を常時行っていく。

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大手電機メーカー社員としてアメリカで働き、3代目としてマテックスを引き継いだ松本社長。現在の同社のコンセプトには確固たる経営哲学が感じられる

膨大な蔵書は立教大学名誉教授でブルーブラックカンパニー代表の中村陽一さんが提供した。中村さんはSDL構想においても大いに貢献している。

現在、社会デザイン学会会長を務める中村さんは、02年に創設された、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科を牽引してきた斯界の第一人者。

マテックスの松本浩志社長は中村さんとの出会いで、窓の持つ社会性について開眼したという。松本社長は中村さんとの出会いを語る。

「SDLファウンダーのお一人でもある、としまNPO推進協議会代表理事の柳田好史さんが先生をご紹介してくださったんです。先生が立教の教授をご退官され、研究室に置かれていた蔵書の処遇に困っておられたところ、にわかにSDLの構想が立ち上がってきました。SDLを設けた場所には元々、弊社の関連会社が入っていたんですが、10年前に整理して以降、倉庫代わりに使っていました」

いわばデッドスペースだったわけだが、中村さんの蔵書を活かすという目的から、同社が志向するサードプレイスの明確なコンセプトが生まれた。

SDLは私設の図書館だが、書籍の貸し出しはせず閲覧のみできる。むしろそこに集う人たちが本を通じてコミュニケーションを取り、ビジネスや私生活の潤滑油にしていくのが主眼だ。

3日のオープニングセッションvol.1も、題して『新発想のソーシャルビジネスへのチャレンジ』。としまソーシャルビジネスセミナーの一環として開催された。

中村さんと松本社長による講演と、柳田さんも交えた三者トークセッションが行われ、社会デザイン、サードプレイス、そしてSDLの役割とは何かが端的に伝えられた。

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中村さんは社会デザイン研究の草分け的存在。長く教えた大学が池袋に立地していただけでなく、お互いに好奇心旺盛な者同士、松本社長との接点は多岐に渡る

ここで得心できたのはSDLがまず、池袋というマテックス創業の地に根差す場ということだ。松本社長もこの地で育った。

だから、近所に越してきたばかりという男性がセミナーに参加し、最後のQ&Aで熱心に質問に立つのを見て、事のほか喜んでいる様子だった。

「皆さんが気軽に立ち寄り、新たな知見を持ち帰れるような場所を作りたかったんです。本はあくまでここに集うきっかけで、パーパス経営やサステナブル経営といった、社会性のあるビジネススクールやオープンセミナー、各種ワークショップなども開催していきたいと考えています」

と語る松本社長は、サードプレイスの新しい意義をこの場で模索する。講演で松本社長の訴えた企業の社会的責任は実にわかりやすかった。

まず会社が置かれ、育まれてきた地域への貢献を重視せねばならない。今年で創業95年を迎えるマテックスだが、松本社長は講演で同社が「3段階に渡って発展してきた」と解説。

まず創業の1928年から80年間は一般企業と同様、経済的価値を追い求めたが、創業80周年を機に、2009年からは社会的価値を希求しだし、2013年には文化的価値を生むことも目標として定めた。

中村さんも企業や経済活動はそもそも社会的行為であり、その結果として、文化も生み出されると主張。いずれにせよ、主体はユーザーであり、だからこそ社会性を帯び、文化的価値も創出される。

「いろんな価値観を持った人々が共生していく際に、必要な知恵や仕掛けがあり、それが人間社会を発展させてきました。その知恵や仕掛けの総体を社会だと考えれば、それをデザインすることが可能ではないか、というのが社会デザインという学問の起点です」と朗々と述べる中村さん。

さすが元評論誌の編集者だっただけある。学者というよりクリエイター肌で、80年代半ばより様々な市民活動の現場を渡り歩いてきた経験値が言葉に表れる。

「主役は利用者なんです。我々は場こそ設けましたが、どう作っていくかも利用者にかかってくる。ここで起きる化学反応に大いに期待しています」

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その時々のコンセプトに合わせた書籍がスマートに陳列される1階メイン部分
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図書館閉架式書庫と同様の設備には元は中村さん所有の1万冊の蔵書が収められる
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中村さんが専門に止まらない知的関心をあらゆる分野に抱いていたとわかる貴重な書籍の数々

SDLという空間は一見、よくあるコワーキング・スペースのように見え、やはり本を主役に据えたことで、まったく異なるムードを漂わせる。

1階で展示される本は、選書担当を置き、テーマに即して定期的に変わり、知的好奇心を沸き立たせる。

また、30㎝四方ほどの箱型のスペースが棚のように連なり、月極でレンタル料を支払うシェア型書店は、販売と閲覧目的が混在するが、いずれにしろ利益を求めるというより、書籍やセレクトした自社(自身)のPRに重きが置かれるようだ。

中村さんの妻でブルーブラックカンパニー取締役の渡辺由美子さんは、中村さんとは編集者仲間だった。書店や図書館もまた場の“編集”次第で変わる、ということを身をもって知っている。

これこそ、社会デザインの最もわかりやすい例かもしれない。

「よくハンドメイド品などを売るレンタルボックスに近いですが、あれも自己表現の面が強いように思えます。こちらは本を通じて人と繋がりたい、という意志が示されるわけです。利用料は月額3000円+税ですが、会員になると1500円とお得(笑)。また、会員はSDLでミニイベントができる権利付きです」

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初日はぎっしり詰めかけた観客の多くが盛んに質問にも立った
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本を介して快適なコミュニケーションが取れるSDL。2階には会議スペースも

そう聞いて、小さな棚の連なりがびっしりと窓で埋め尽くされた建物に見えてきた。マテックスのキャッチフレーズは「窓から日本を変えていく」。

繰り返すが、窓は単に建物に必須の建具ではない。「目は心の窓」などとも言うし、ズボンの前面のファスナーが開きっぱなしなら、「社会の窓が開いている」と言われてしまう。

そして、4日のオープニングセッションvol.2のタイトルは「窓をHIRAKU」。

松本社長と中村さんが連夜登壇し、住生活に特化した日本最大級のプラットフォーム、RoomClip社長の高重正彦さんがゲストとして加わった。

まずはめいめいがタイトルに応じた話をし、最後にトークセッションを行った。RoomClipは自宅や自室の様子を写真に撮ってみんなで共有し合い、インテリアの参考にするアプリを展開。

掲載写真を通じてオンラインショッピングも可能なビジネスモデルとしてきた。そこでも窓周りの商材の動きは活発なのだという。

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レンタルボックス型の月極書店も設け、本好きの自己PRにも一役買う。そこには松本社長の棚も

「コロナ化の影響もあり、リモートワークを筆頭におうちキャンプなど、家の外でやっていたことは家の中でできるようになってきました。だから、家庭内でも窓を意識することが増えたのだと思います」と高重さんは説く。

RoomClipに寄せられた写真は現時点で約600万枚。それだけのデータを解析し、マーケティングにつなげている。SNSを介しての開示も「“映え”から自分らしさ、心地よさに向かっている」と見る。

そんな発言を受けての、松本社長のファシリテートが光った。

社長は様々な喩えを用い、窓を巡る課題について述べたが、イギリスなどで流行語となった、デンマーク語で「居心地がいい時間や空間」を指す〈ヒュッゲ〉を現地で体験してきたともいい、日本の窓辺の文化も変えていきたいとの抱負も漏らした。

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自社のサービスの持つ可能性について語るRoomClipの高重正彦氏

そして、最後のクロストークでは、各人が窓に関する知的刺激に満ちた見解を開陳。中村さんは「窓をヒラク社会デザインのための3冊」として、お薦めの書籍を紹介した。

また、デンマーク出身のアイスランド人アーティスト、オラファー・エリアソンの名もそこで引用された。

エリアソンといえば、光・水・気温といった自然要素を題材とし、鑑賞者の疑似体験に誘うような大規模なインスタレーション作品で知られる。

3年前の東京都現代美術館での展示『ときに川は橋となる』は忘れがたい。この話を受け、松本社長は「さしずめ『ときに窓は庭となる』かな。宿題いただきました」とユーモラスに返した。

日本建築には「借景窓」という手法があり、山や森林などの自然物を庭園内の風景に背景として取り込む。

窓が開かれた先に見える光景に惹かれ、借家を決めたり、宿の部屋を選んだりすることはままあるだろう。ことほど左様に窓は生活を支配している。

そして、読書は窓を開けて景色を眺める行為に似る。ページを繰れば、様々な情報や見識が目に飛び込んでは、時に読者を空想に遊ばせ、また深い思考へと導く。

マテックスが築いた、このSDLという拠点は池袋に留まらず、同社ゆかりの各地に広がる可能性もありそうだ。また、SDLは同社同様、社会デザインを企図する組織のよい手本ともされるだろう。

◎会場情報
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・名称:『HIRAKU IKEBUKURO(ヒラク イケブクロ) 01』Social Design Library (SDL)
・URL:https://www.hiraku.community/
・セミナー申込み https://hiraku01sdi.peatix.com/view
・フェイスブック https://www.facebook.com/hiraku.ikebukuro01/
・インスタグラム https://www.instagram.com/hiraku.ikebukuro.01_sdl/
・X https://twitter.com/hirakuikebukuro
・コンセプト:知・人・アクティビディをつなぐ媒体として図書館、学校、ギャラリー、公園、仕事場、実験場、事業相談所、社会的事業の8つの役割を持つ人々のサードプレイス。
いつでも利用できるサードプレイスとして法人パートナー、個人パートナーを募集中。

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ライター:

1966年長野県に生まれ、東京で育つ。法政大学文学部在学中より、出版社で雑誌編集に従事した後、フリーに転ずる。教育やビジネス分野に造詣が深く、著名な起業家との共著も多い。また、食べ歩きを密かなライフワークとする。『名門高校人脈』(光文社新書)、『全国創業者列伝』(双葉新書)、『東京B級グルメ放浪記』(光文社知恵の森文庫)、『リーダーになる勇気』(共著・日本実業出版社)、『コピーライターほぼ全史』(日本経済新聞出版)など著書多数

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