注目しているのは、富士吉田市などで行われている織物産業での取り組みです。富士北麓地域は江戸時代から織物産地として知られていたのですが、戦後に海外から安価な化繊製品が大量輸入されるようになって勢いを失ってきました。
しかしここの織物には優れた特徴があります。それは生地に後から柄をプリントするのではなく、縦糸と横糸に様々な色糸を入れてデザインを表現するという先染め織物の技術です。
この技術は作業工程が多く手間がかかりますが、産地で様々な工程を担う多くの職人企業がコミュニティを形成し、一丸となって高付加価値テキスタイルを生み出しています。
先染め織物の工程が産地内に全て残っているのは世界的にも貴重で、技術に注目したバーバリーなどの一流ブランドのOEM生産を請け負ってきた歴史を持つほどです。しかし近年は更に「他社から指示されたモノばかりを作っているのは情けない、自分たちでブランドを作ろう」という人たちもたくさん現れてきて、独自のブランド製品を生み出しています。
先染め織物の仕事でも職人たちのコミュニケーションがとても大事です。私も富士北麓地域の人たちの活動からたくさんのことを学びました。特に富士吉田市で、創業100年になる株式会社前田源商店前田市郎社長さんは30年来の友人で、家族ぐるみでお付き合いしていただいています。苦労してブランドを作り上げている産地の方々を、これからも応援していきたいと考えています。