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株式会社ラポールヘア・グループ早瀬渉|過疎地域に美容室を~上場企業役員から社会起業家へ

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株式会社ラポールヘア・グループ早瀬渉|過疎地域に美容室を~上場企業役員から社会起業家へ
「ラポール」とは、臨床心理学で「セラピストとクライアントの間に、相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞い、感情の交流を行える関係が成立している状態」を表す言葉。

株式会社ラポールヘア・グループ 代表取締役 早瀬渉さんがこの言葉を社名に付けた理由は、「お客様だけでなく、共に働く仲間や取引先、株主や地域社会が、信頼関係を築くことで、これらステークホルダーとの共生が可能となり、幸せにつながる」という想いからです。

2011年3月11日に発生した東日本大震災の後に最大被災地の石巻市で開業した美容室チェーン店は、日本で唯一、ラポールヘア・グループだけです。創業から10年、子育てや介護など、時間的な制約があってなかなか働くことができなかった女性たちの雇用を創造してきました。スタッフの平均年齢は45歳。最高齢の美容師はなんと67歳で、毎月平均25万円の収入があるそうです。

このように、上場企業の役員から社会起業家となり、石巻市発の復興支援美容室を通じて美容師の雇用創造を推進し、さまざまなステークホルダーを大切にしてきた早瀬さんに話を伺いました。

最大被災地で美容師の生活基盤を取り戻す

──御社の活動についてお聞かせください。

東日本大震災の後、最大被災地である石巻市に本社を置いて、現在10期目をスタートしました。PICC大久保会長からの言葉にもありましたとおり、本業を通して社会課題を解決することが基本コンセプトになっています。

人生100年時代に向かう中で、50歳以上の技術者が働く場所はかなり少なくなっています。かつ、消滅可能性都市といわれる人口5~20万人の自治体に関していえば、さらに働く場所が減ってくるわけです。ただし、そこに住み暮らす方々がいなくなるわけではありません。特に単身高齢者は転居することが難しいのです。

もともと美容室は地域コミュニティの一つとしての位置付けがありますので、雇用の創造と地域コミュニティの形成を同時に進めていくことで、社会課題を少しでも解決したいという想いで取り組んでいます。

石巻店の店内

──石巻市に本社を置いた理由は、出身地だったからですか。

いえ(笑)。実は震災が起きるまでは、宮城県に足を踏み入れたことがありませんでした。

それまでは株主資本主義にどっぷり漬かっていたので、社会課題解決という考え方は全くない働き方をしていました。しかし震災が起き、そんなことをやっている場合ではないと考えるようになりました。また、時代の流れも感じました。

新しい事業をスタートするのであれば、最大被災地で取り組もうという理由で石巻市を選びました。

──当時はどのようにして事業に取り組んだのですか。

当時は株式会社エム・エイチ・グループのヘアサロン「モッズ・ヘア」で現場のトップでしたので、災害対策本部長として動かなければならず、何もできませんでした。4月末に退任し、自分が考えた被災地でのビジネスモデルを実行できるかどうか確認するために、5~6月にいろいろな被災地を回りました。報道等でご存じのとおり、そのときはがれきや車などが山積みで、まだ復旧活動も始まっていませんでした。

石巻市だけでも約1,000軒の理美容室がありましたが、200~300軒が流されてなくなりました。理美容室で働いていた人たちのうち、500~600人が突然失職したことになります。そのような人たちがどのように働いていけばいいかと考えました。

もともと二重ローンの制度設計が多く、店から道具から全てが流されてしまいましたから、ほぼ再起するのは難しいのではないかと思えました。再起をしたところで、違う土地に店を構えることになります。カルテがなかったらお客さんを呼び寄せられません。生活基盤を元に戻すことは極めて難しいのではないかと考えました。

しかし技術者は、働く場所を用意しさえすれば、すぐに仕事ができます。仕事を通した生活基盤を取り戻すことは大事ですので、そこからスタートすることにして10年間取り組んで、現在に至っています。

ラポールヘア・グループのステークホルダーとの向き合い方

弊社の創業経緯からも分かるように、本業を通して業界の課題と社会課題をいかに解決するかという観点から雇用創造に力を入れていましたから、ステークホルダーに関してはとても重きを置いていました。

大久保秀夫塾で多くを学ぶ中で、「企業は社会の公器である。在り方経営が必要である」という言葉がありました。そして、「社員、お客様、株主、取引先、地域社会、日本(および海外)という、6つのステークホルダーを大事することを社中分配という」と教えていただき、課題解決と並行して実践するようになりました。

スタッフとの向き合い方

 

弊社では、20~30代の独身者は1人もいません。また男性美容師もいません。今、200人弱のスタッフがいますが、全員が30~60代で、子どもがいるか、孫がいるか、親を介護しているかという、時間に制約のある女性の技術者のみです。これが日本で唯一だといわれている弊社の特徴です。
 
時間に制約のある女性の中には、結婚・出産を機に仕事から離れる25~34歳までのM字カーブといわれる社会課題があります。そういった方々に対しては、保育士を常駐させたキッズルームを用意して、お子さんを無料で預かりながら仕事ができる環境をつくりました。
 
また、日本の65~69歳の就業率は20%台ですが、その年代の皆さんはまだ元気な方が多いですよね。アンケートを取ってみると、8割以上が「まだ働きたい」と答えています。そういう方々の働き場所がないのです。美容室であれば、元気な技術者は働くことができますので、その環境をつくれば雇用が生まれるのです。

 

ラポールヘアの店内
 
25~34歳までのM字カーブに属する女性たちや高齢者の女性たちは、週休二日制で朝から夕方まで働くことができないというのが日本の現状であるにもかかわらず、どの会社もそれに対応した就業規則を作ることができませんでした。弊社では、その課題にきめ細かく対応しています。
 
例えば、多くのサービス業は土日に休めないことが多いのですが、弊社では土日でも休めるようにしています。時短出勤もできます。毎日出勤できなければ、働ける日だけ、週に何回という形でもOKです。もっと言えば、親の介護をしなければならなくなったときでも働くことができるようにしています。
 
介護をしているときには、「シフトを出してください」と言われても、どうなるか分からないので、出せるわけがありません。そういうことを配慮している会社は本当に少ないのが現状です。弊社では、1日2~3時間しか働けないという人に関しても、訪問美容という形で、お客さんとマッチングさせて雇用をつくっています。この仕組みは、介護中の方だけではなく、体力が落ちた高齢者の方にも喜んでいただけるものになっています。
 
このような形で、時間に制約のある全ての女性にドアをノックされても受け入れられる体制を取っています。かつ、自分からハサミを置きたいと思うまで、全員に仕事を与え続けることができる環境を用意しています。これが社中分配の社員部門になると思います。
 
弊社の場合、退社する美容師はほとんどいません。入社後はずっと働いてくださいます。30代で小さい子どもを預けながら扶養控除が受けられる範囲内で働いていた美容師たちも、数年たつと子どもが大きくなりますので手が掛からなくなって、フルタイムで働けるようになります。ライフスタイルに合わせて働き方を変えて、皆さんが頑張ってくれています。
 
私としては働きやすい環境を常に用意していくことが仕事ですが、それに応えてお客様を大事にしながら働いてくださっているので、本当にありがたいです。
 
会社の理念に共感しているからスタッフが働くのではありません。そういうことを考えるのは男性だけです。子どもがいる女性は、自宅から近くて、子育てができて、ある程度の収入を得ることができて、仕事を続けられる環境があれば本当にありがたいという理由で働く方が多いのです。
 
私はそういうことが大事だと思っています。自然体で自分や家族のライフスタイルに合わせて働くことができる環境を用意しますので、末永く弊社で仕事をしていただきたいと思っています。

お客様との向き合い方

特にコロナ禍で、それまでは職場や遊び場の近くの街中でヘアカットしていたお客様は、外出の機会が減ったため、自宅近くの美容室に通いたいというニーズが高くなっています。しかし、ある程度の数の美容師がいて、価格もリーズナブルでないと、なかなか新規で入りづらいと思います。
 
弊社は、コロナ禍になる前から、そういう立地やプライシングの戦略を取ってきたので、今も新規のお客様がどんどん増えています。キッズルームもあるのでお客様のお子さんを預かることもできますし、外出できない方に関しては訪問で対応することもできます。
 
──過疎地域に美容室を立ち上げていることも、そういった戦略の一環だったのですね。
 
そのとおりです。過疎地域やその周辺でも働きたい人はいますし、ヘアカットしてほしい高齢者もいます。そこに住み暮らす人たちの中で、困っている人たちが多かったのにもかからず、そこにリーチする企業がなかったのです。弊社はそういったところに事業展開しています。収益目的だけだったら見過ごされるような場所ですから、実はそれが大きなブルーオーシャンだったと思います。

取引先との向き合い方

お付き合いしている店舗がどんどん広がり、今では25店舗で雇用人数が160名ほどになっています。売上規模もそれなりに増えていることもあり、取引先を変えようとは考えていません。
 
震災時に社屋が全壊してしまった石巻市に本社がある印刷会社さんにも発注し続けています。弊社も石巻市に本社があり、納税も石巻市にしていますので、なるべく石巻市の方々と取引先をして、共に発展することで地域への貢献をしたいと考えています。
 
一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)関連の取引先も多くあります。そうした会社さんは基本的に志が同じなので、その取引先にプラスになることがあれば、自然と営業代行をして他の取引先とつなげていくこともあります。さらに取引先の輪を広げ、共創社会を築いていきたいと考えています。
 

イオンモール株式会社 取締役会長 村上教行さんへ

2014年からのお付き合いです。村上さんは気仙沼市の出身で、イオン社内の方が東北で活動している弊社の紹介をしてくだったそうです。幕張にあるイオンタワーの村上さんの会長室でプレゼンテーションをさせていただき、「東北で直営店を展開するのなら、うちの店にどんどん入ってほしい」と言われました。
 
イオンモールは、基本的に人口が多い地域に出店する大型モールなので、弊社が取り組んでいる社会課題があまりない場所ではあります。しかし、地域の皆さんにとってはインフラとして存在している場所なので、そういうところに出店したいという私の思惑と、先方のニーズがマッチして、今、何軒か出店することになっています。
 
イオングループさんへの出店もどんどん増えています。引き続き案件があり次第、増やしていきたいと思います。イオン店のテナントになっている美容室は業績も堅調ですので、共に社会課題を解決していくパートナーであり続けたいと思っています。

株主との向き合い方

私以外の株主は、公益財団法人三菱商事復興支援財団さん、宗教法人太宰府天満宮 第40代宮司 西高辻信宏さん、株式会社グロービスさんです。株主が関心を持っているKPI(重要業績評価指標)は、売上実績ではなく、雇用を何人増やせたかという雇用創出の指標です。

公益財団法人三菱商事復興支援財団さんへ

当初は株式を持たずに雇用を増やす支援をしたいと名乗り出てくださいました。
 
弊社の創業時には、被災地に多くのファンドから、「株主になりたい」、「上場しよう」、「議決権が欲しい」などさまざまな提案がありました。そのような中、三菱商事復興支援財団さんだけは全く姿勢が異なり、雇用を増やすような企業に対して積極的に資金を拠出し、「株も議決権も要らないので、好きなようにどんどん使ってかまわない」と言うのです。
 
そういうお付き合いの中で、三菱グループやイオンさんなど、いろいろなところと取引ができるようになりました。2012年からは経営の相談ができる関係を築き、今でも変わらず続いています。
 
三菱商事株式会社には、「三綱領」という社是があるという話を、機会があるごとにお伺いしました。三綱領とは、岩崎小彌太の訓諭に基づいており、「所期奉公、処事光明、立業貿易」というものです。 「所期奉公」は「事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する」こと、「処事光明」は「公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する」こと、「立業貿易」は「全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る」ことです。
 
素晴らしい会社だと思い、とても印象に残っています。
 
三菱商事復興支援財団さんは、東北3県での支援の動きがとてもスピーディーでした。最終選考では丸の内の三菱商事本社でプレゼンテーションをし、投資を受けることができました。最初の投資で直営店を増やすことができましたので、宮城県内の被災地にスムーズに出店ができて、地域で雇用を増やすことができました。
 
年1回、決算報告をするのですが、基本的には自由に取り組ませていただいています。弊社の事業の意義を深く理解してくださり、雇用創出に対して積極的に支援してくださいました。おかげさまで、このように事業を軌道に乗せることができました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。
 
10年契約となりますので、今後は新たな関係になりますが、是非とも引き続き協業していきたいと考えております。

宗教法人太宰府天満宮 第40代宮司 西高辻信宏さんへ

西高辻さんとは、公益社団法人日本青年会議所(日本JC)での活動で出会いました。社会課題を解決している企業を応援することが好きだということで、個人的に株を持ってくださっています。
 
社会課題を解決する企業を応援したいと言ってくださる方が多い中で、西高辻さんのように実際に動いてサポートしていただいただける方はあまり多くはありません。存在自体が勇気を与えてくださり、私の心の支えになっています。今後も良い関係をつないでいきたいと願っています。

株式会社グロービスさんへ

グロービスさんは、MBA学位を授与できる経営大学院の運営や、企業の人材育成・組織開発のサポートを行っている有名企業です。
 
2011年3月14日にグロービスさんの有志が集まり、震災被災地の救援・復興支援プロジェクト「KIBOW」がスタートしました。2012年2月には一般財団法人化しています。社会課題を解決し、希望をつくる起業家のためにインパクト投資を実施しています。
 
弊社はこのプロジェクトによって、第三者割当増資で株を引き受けていただきました。社外取締役も無償でお願いすることができ、何かあるごとにグロービスさんの全ネットワークを生かして相談に乗ってくださいます。
 
投資するだけではなくて、いろいろな事業の内容や今後のブラッシュアップに向けてアドバイスしてくださることが本当にありがたいと考えています。
 
また、通常のグロービス・キャピタル・パートナーズではなく、「KIBOW社会投資」に弊社が選ばれたことに価値があると思っています。そういった面でいろいろなことがプラスに働いていると感じています。

地域社会との向き合い方

地域社会にとっては、どれだけ雇用が生まれるかということが大切です。店舗ができれば、時間に制約のある女性の雇用が生まれます。納税という形で石巻市にも貢献できていると思います。
 
経済産業省は、「地域未来牽引企業」として、現在全国で2,500~3,000社を選定しています。その中で美容室を展開している企業は弊社だけではないかと思います。
 
私たちは消滅可能性都市に出店することで、地域コミュニティや職場をつくることに貢献しています。

世界(他国)との向き合い方

国家資格として、美容師資格制度があるのは、世界で日本と韓国しかありません。アメリカやヨーロッパは州の認定制度ですので、ライセンスという位置づけです。
 
しかしASEANでは、どの国でもライセンス制度はありません。出店するときの保健所登録すらないので、衛生面で問題があります。さらに言えば、自国に美容師が何人いるか、美容室が何店舗あるかも把握されていないようです。
 
例えばベトナムと日本は生産年齢人口がほぼ同じであるにもかかわらず、そのような状況ですので、ある程度の制度設計が必要ではないかと考えました。美容業は女性の雇用に対して非常に有効な産業なので、ベトナムで最も大きい美容協会と手を組み、資格制度導入に向けて、政府に対して勉強会を行い、法案整備のサポートをしています。

未来世代との向き合い方

3年で8割以上が離職すると言われる美容室業界ですが、弊社では創業時から10年にわたり働き続けてくれているスタッフが多くいます。美容室に併設するキッズルームは、スタッフの子どもはもちろんのこと、多くの子どもたちが利用をしてくれました。女性が働きやすく、働き続けられる環境をつくり、より多くの美容師が幸せに働いてくれることと、100年先の子どもたちに明るい未来をつくっていくことが、私たちの使命だと思っています。

 

英語キッズルーム
 
2011年、東日本大震災の最大被災地で創業した弊社は、これからも未来に向けて持続的な事業価値を創造し続け、美容室業界の課題に取り組むとともに、日本国内の地域課題に取り組むことに力を尽くし、私たちの使命の果たしていこうと考えています。

 

<企業情報>

株式会社ラポールヘア・グループ

http://www.rapporthair.com

代表者:早瀬渉

本社所在地:〒986-0859 宮城県石巻市大街道西2-2-27

仙台支社:〒983-0005 仙台市宮城野区福室田中前1-53-1 仙台コロナワールド1階

設立:2011年7月1日

資本金:15,050,000円(資本準備金:7,050,000円)

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WRITER
サイエンスジャーナリスト
小林 浩
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1964年生まれ、群馬県出身。国立群馬高専卒。専攻は水理学と水文学。卒業後、日刊紙『東京タイムズ』をはじめ、各種新聞・雑誌の記者・編集者を務める。その後、映像クリエーターを経て、マルチメディア・コンテンツ制作会社の社長を6年務める。現在は独立し、執筆と映像制作に専念している。執筆は理系の読み物が多い。 研究論文に『景観設計の解析手法』、『遊水モデルによる流出解析手法』、著書に科学哲学啓蒙書『科学盲信警報発令中!』(日本橋出版)、SFコメディー法廷小説『科学の黒幕』(新風舎文庫、筆名・大森浩太郎)などがある。

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