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coki月例会レポート【2021年2月】

イベント

 
2021年2月17日(木)、ステークホルダーを大切にする企業が集うオンライン・コミュニティ「coki第2回定例会」がZoomにて開催されました。最新のステークホルダー主義の動向のキャッチアップと近況の活動報告、ステークホルダー主義とは何か? 八方よしをテーマに、経営者の皆様との座談会にて意見交換を実施。今回は、企業にとって最も大切なステークホルダーである「社員と家族」との関係について多角的な視野からご意見を伺いました。本記事では、cokiの第2回定例会の模様をレポートします。

目次
1.Opening – オープニング:事務局からのお知らせ
2.DOKO –  動向:最新のステークホルダー主義の動向をキャッチアップ
3.JISSEN –  実践:1カ月間の活動報告
4.RINKAKU – 輪郭:ステークホルダー主義について何を発信していくか?
5.Closing –  クロージング:事務局から連絡事項

 

1. Opening - オープニング:事務局からのお知らせ

■Stakeholder Table Japan(STJ)→cokiへの名称変更について

サービス、メディア、コミュニティ名を全て「coki」に統一しブランディングを図ります。co-はラテン語で「一緒に」。皆様とともに「コミュニティという器」を大きくしていきたい。企業は「社会の公器」。社会が求める役割を担い、次代にふさわしい社会を、ともに発展していこう」という意味が込められています。

2.DOKO 動向:最新のステークホルダー主義の動向をキャッチアップ

世界におけるステークホルダー主義の動向について、株式会社Saccoの齋藤より解説。

■2019年8月
「Business Roundtable」がステークホルダー主義への転換を表明

・2019年8月19日宣言-Business Roundtable Redefines the Purpose of a Corporation to Promote ‘An Economy That Serves All Americans’

株主至上主義であった米国企業がパラダイムを転換。181社が企業組織の目的を再定義。1997年の政策提言以来、企業は株主の利益を最大化するために経営を行うことを目的としてきたがこれを覆し、ステークホルダーを最優先。「全ての米国人のために」と銘打ち、“companies for the benefit of all stakeholders – customers, employees, suppliers, communities and shareholders”(全てのステークホルダー -顧客、従業員、取引先、コミュニティ、株主のために)と表現し、株主が最後に記されています。

※Business Roundtableとは?
GAFA、GMなど米国主要企業トップ212社による会員組織。1972年に設立。米国版経団連(経済団体連合会)ともいわれる
本宣言への賛同企業一覧(代表者サイン付)https://opportunity.businessroundtable.org/ourcommitment/

日本では、従来より企業に関わる全ての人を大切にする考え、つまりステークホルダー主義は当たり前のように根付いています。一方で、米国発のステークスホルダー主義が「新しい」イデオロギーとして台頭すると、日本で育まれてきた文化を上書きしてしまう危険性があります。米国のステークホルダー主義の内容を知るとともに、日本独自のコミュニティ形成と発信メディアの強化する必要があります。

 

■2020年1月
ダボス会議でステークホルダー資本主義がメガトレンド化

 2020年のダボス会議のテーマは「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」。「サステナビリティ」の考えと「ステークホルダー資本主義」がトップ議題

 本会議には、日本から経団連、経済同友会、日本商工会議所、日本青年会議所等の様々な経営者や代表の方たちが参加。(2021年のダボス会議はコロナ禍のため5月に延期)

■2021年
経済産業省が
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を提唱

 DX(デジタルトランスフォーメーション)から、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)へのシフトが始まってます。

日本でも経済産業省 経済産業政策局の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」が2020年8月に発行した「中間取りまとめ」にて、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて」と題し、“SXは、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティを同期化させるにとどまらず、中長期的な企業価値向上に関心のある投資家のサステナビリティの向上にもつながる”と述べています。

サステナビリティを、投資あるいは経営判断の中心にすべきという動きはこれからも広まるでしょう。

 

3.JISSEN 実践:1カ月間の活動報告

「実践」では、直近1カ月で実践した活動報告を報告。

(1)Sacco 加藤より活動報告

活動概要

・メディアとコミュニティのプレゼンスの向上
・産・官・学の連携の推進
・ステークホルダーを尊重する企業のアワード(11月開催)への参加機運の醸成
・企業間連携の促進、コミュニティの形成
・coki500計画:年間で500社入会を推進

「coki」の紹介依頼、インタビューを実施した企業・団体

・日本エンドレス株式会社 代表取締役 成毛義光 様(http://www.endress.co.jp/
・公益財団法人澤田経営道場(https://sawadadojo.com/
・一般社団法人100年経営機構(https://100-keiei.org/
東レ株式会社 代表取締役社長日覺 昭廣様
日本青年会議所 会頭 野並晃様(株式会社 崎陽軒 専務取締役)
・技術経営士の会(http://stamp-net.org/
神永 晉 様 元住友精密工業株式会社 代表取締役社長
臼田 誠次郎様 東京電力 取締役
宇治 則孝 様 日本電信電話株式会社顧問

文京学院大学 理事長 島田 昌和様(渋沢栄一研究の第一人者
神戸大学 教授 西谷 公孝様(サステナビリティ経営の専門家)

他にも過去取材させていただいた方々にお声がけを行う予定。Saccoも、ステークホルダーからどのように見られているか360°可視化評価を実施。

今後の予定

・4月:サイト名を「coki」へリニューアル/特集企画メディアスタート
・7月:ステークホルダー資本主義を提唱する海外有識者インタビューを掲載
・11月:第1回アワード/「coki」サイトフルリニューアル

今後の活動目標

「ステークホルダー資本主義」のコミュニティとして第一想起される存在を目指す。
会員の皆様の満足を念頭に置き、活動内容もブラッシュアップする。

 

(2)会員様からの活動報告

宿題:ステークホルダーが自分・自社をどのように評価しているかを確認する
 

日本自動ドア株式会社 吉原二郎さん

日本自動ドア株式会社 吉原二郎さん

お客さまの日本自動ドアの評価

以前、様々な取引先に「なぜ当社を選んでくださるのか」ということをお聞きしたことがあります。その中の、ある取引先の方から「部下から聞いた話だけど」ということで、弊社の社員への評価をお聞きしましたのでご紹介します。

曰く、「日本自動ドアさんのスタッフは、皆人柄が良い」「発注元なのに威張らない」「企業として不誠実なことはしない」「自社で利益を独占しようとしない」のだそうです。

「人柄が良い」というのは、やや抽象的な話ではありますが、「威張らない」ことについては、当社の仕入先が個人事業主の職人さんでも分け隔てなく「取引は対等な立場で」と日頃から口を酸っぱくして指導をしていることが影響しているように思います。その文化が社員に染みこんでいるのかもしれません。例えば、こちらがもてなすのは良いですが「接待は受けないように」と厳しく徹底しています。これは道徳的な話と、下請法の遵守という意味合いが含まれます。

お客さま、取引先とともに社会に貢献し続けるために

また、弊社は自社で特許を取得していますが、社会的な貢献性の高い特許の権利については、あえてその独占権を強く主張をすることはしません。その技術を他の企業が導入すれば業界全体のレベルアップにつながり、社会的な課題が解決できればいいのです。大きい社会的な課題を解決できるような優れた技術は、一企業が独占するものではなく、業界の発展のために活用いただいてこそ社会に貢献できると考えています。

「そういった考え方が全社に浸透していることが、日本自動ドアさんが選ばれる理由なんですよ」と取引先に評価いただけたのは、非常にわかりやすく腹落ちするお話でした。

先ほどの協力会社さんとの接し方についても、「コンプライアンス」というと難しいイメージになってしまいます。あえて契約書に記載しなくても「こういうことはしてはならない」という線引きを、我々は社員教育を通じてしっかりと行ってきました。そういう積み重ねが、取引先に伝わって良いイメージを持っていただいたことは、非常に嬉しかったですね。

 

株式会社シードパートナー 永沼秀一さん

株式会社シードパートナー 永沼秀一さん
私も今まで日本自動ドアの方に30名ほどお会いしましたが、皆様とても印象の良い方ばかりでした。だから、私もお話しされた取引先の方と同じ意見だと実感しています。

身近な人物に「自分のことをどう思うか」を聞くのは難しい

さて、当社は私と社員の2名構成です。つまり会社=ほぼ自分のことなんですね。そこで、まずは一番身近な人物である妻と社員に会社についてどう思うか聞いてみました。すると妻からは「もっと家のことを手伝ってほしい」と日常的な要望を伝えられてしまいました(笑)。次に、社員にも尋ねてみましたが、面と向かって聞くのって、こちらも向こうも気恥ずかしく、「特にありません」とのこと……。ましてやクライアント様にも弊社の評価を伺うために時間を取ってもらうのは難しく……付き合いが長くても自分のことを直接聞くことって、本当に難しいものですね。そこで今回は、これまでクライアント様からいただいたお言葉で感激したことをいくつか発表したいと思います。自慢話のようになってしまって恐縮ですが、ご容赦いただければ幸いです。

仕事を通じて思いがけない評価をいただいて感激

当社は主に2つの事業を行っています。1つは、フィリピンでの学校運営と外国人材の受け入れ、もう1つは、企業の経営課題解決のためのコンサルタント派遣です。

まずは、当社の創業以来のお客様。神奈川で保育や介護、飲食の事業を手がける従業員600名ほどの企業です。これまで学校の卒業生を30人ほど受け入れていただき、経営課題に対してコンサルタントを派遣しています。

そのお客様から「あなたに困り事を相談すると、適切な人材を選んでプロジェクトを組んで解決してくれる。あなたこそが最高のコンサルタントだ」という身に余る評価いただいたことがあります……私自身が手を動かしているわけではないのに、そんなふうに思ってくださっていたのかと感激しました。

また、先日吉原さんが書いてくださった、私の紹介文を拝見する機会がありました。

そこにも「永沼さんに経営課題を相談すると、適切な人材や会社を手配してくれる。不思議な力を持った人です」と書いてくださったのです。「吉原さんって私のことそんなふうに思ってくれていたんだ……」素直に嬉しく思えました。

「そんなふうに思ってくれているなんて……」自分がやれることは最大限貢献したい

さらにSaccoの加藤さん。メディアの立ち上げの際に意見を聞かれたことがあり「どうして私に意見を求めるのですか?」とお聞きしたことがあります。つながりのある優秀で素晴らしい方はたくさんいらっしゃるのに。

すると「永沼さんは、筋の通った意見を忖度なくお話ししてくれるからです。『こんな時永沼さんだったらどう考えるだろう?』って思う時があるんですよ」と私への評価を語っていただけました。

「そんなふうに思ってくれているのであれば、私がやれることは最大限貢献しよう」と思った次第です。自分が他の方に良く評価していただいたことを、皆さんの前で発表するのは、我ながら恥ずかしいですが、私からの発表とさせていただきます。

加藤:私のエピソードも発表いただいてありがとうございます。ご家族や社員の方から面と向かってコメントをいただくのは確かに難しいですよね……第三者が間に入ることでスムーズに本音を引き出せますので、ぜひインタビューさせてください(笑)

 

セムコ株式会社 宗田謙一朗さん

セムコ株式会社 宗田謙一朗さん問題が起こったらすぐに現場へ……丁寧な対応を心がけて得られた評価

当社は、船舶向けの燃油等の計測制御機器「液面計」を製造・販売しています。

今回の件で、普段からお世話になっているお客様や取引先にインタビューしてみたところ、「何か困り事があった時には解決してくれて頼れる」「クレームに真摯に対応してくれる」「納期にきちんと納めてくれる」「コストパフォーマンスが良い」といったご意見をいただくことができました。

 振り返ってみると、お客様の困りごとの解決やクレームについては、特に丁寧な対応を心がけてきました。何か問題が起こったら社員はすぐ現場に駆けつけるようにと。

ただ単に商品を販売するだけでなく、お客様のお悩みを聞き出すことは、製品開発のヒントにもなります。

社員からは「意見が言いやすい」-パートさんからの意見を参考に業務改善

次に、社員が「会社」のことをどう思っているかについても聞いてみました。

真っ先に言われたのが、「役職を問わず意見が言いやすい」ということです。当社は、組織図上はヒエラルキーがありますが、実際は「どのような立場であれ言いたいことを言う」という社風でずっとやってきました。

例えば、現場のパートさんから「もっとこうした方が良い」という意見があれば、社員がすぐに取り上げて業務改善を行います。「常に改善をしていこう」という意識が高いということが「意見が言いやすい」という声に結びついているのではないでしょうか。他には「有給休暇の取得がしやすい」という声もありました。当社の年間休日は136日あり、ほぼ100%取得できます。

本音を言い合える環境だからこそいい会社にすることができる

「意見が言いやすい」だけあって、社員との面談では私自身についてもかなりいろいろなことを言われてきました。「人の意見を聞かない」など、中には耳の痛い意見もあります。この間は、あまり仲の良くない社員との面談でボロクソに言われて大ゲンカにもなりました(苦笑)。

でも、お互いが本音を赤裸々に語り合える環境で仕事ができるってすごく良いことなんじゃないかって思います。言ってもらえるのって本当にありがたいですよね。

昨年の夏には、社員向けに1人ずつ感謝の意を込めてメッセージカードを書きました。書く前は「本当に受け取ってくれるのかな」と怖かったんです。ところが、勇気を出して実際にやってみたら皆がとても喜んでくれました。ケンカした社員からも「あの時は言い過ぎました」って言ってもらえて、本当に良かったと思いました。

私も会社もこれからも成長していかなければなりません。社員とは常に話をして、意見を語ってもらえる環境を作り続けていきたいですね。

 

4.RINKAKU(輪郭)ステークホルダー~八方よしの輪郭を明らかにする:ステークホルダー主義について何を発信していくか?

 (1)オープニングエピソード八方よし、Salesforce.com

株式会社Sacco齋藤:cokiは「八方よし」。「三方よし」をさらに発展させたもの。

「八方よし」とは
あらゆる側面から見て好もしく判断されるさま、非が見当たらないさまを意味する表現。(実用日本語表現辞典)「従業員」「取引先」「顧客」「地域」「社会」「国」「株主」「経営者」との関係性を重視する考え方


 オープニングエピソードとして、Salesforce.comを紹介したい。
 これからの企業経営においてそれぞれのステークホルダーとどのような関係性であることが望ましいのか。今回は、coki参画企業から、社員と経営者の関係のエピソードを語っていただく中で「輪郭」を形作っていきたい。

Salesforce.com

・1999年3月マーク・ベニオフにより設立/顧客管理(CRM)ソリューションを提供。

・フォーブス誌「世界で最も革新的な企業」4年連続第1位/「働きがいのある会社」2年連続第1位/社員数36,000人。

・ 「セールスフォース・ドットコムの従業員と製品力により、地域社会をより良くし、青少年の教育を支援し、緊急事態の発生時には国境を越えて支援を行い、思いやりのある世界を作っていくこと」をビジョンとして掲げている。

・同社は、アフリカ・中南米などの商圏外でも社会貢献活動を広く行う。社員によるコミュニティや非営利団体の活動支援は、業務時間内に行われているが、売上も利益もSaaS 型企業の中でトップクラス。

・ユーザーのコミュニティ活動も盛んで、毎年西海岸のサンディエゴ~サンフランシスコで豪華客船を貸し切り、1週間のファンミーティングを行っている。

・そこでは、全員がSalesforce.comの揃いのTシャツを着用。セールスフォースを使って作ったシステムや成功事例を自由に表現し、Salesforce.comを世界に広げることで社会を変えようと未来を語り合う熱狂を生み出す。

・参加チケットは日本円で約17万円するプラチナチケットだが、それを自ら買って参加するのは、ユーザーやエンジニアだけではない。コミュニティの参加者のうち2割は社員なのだ。会社とお客様がフラットな立場で「仲間」という意識を作り出している。

・マーク・ベニオフは、「これから成長しようとする企業は、地域社会や社員や取引先など全てのステークホルダーとフラットに向き合うことが当たり前である。そのような会社でないと再現性・継続性のある企業活動はできず、財務的な成功もおぼつかない」と、ダボス会議にてステークホルダー資本主義を強く主張。

企業経営者と社員を含む「ステークホルダー」が、お互いにフラットな関係を築く

Salesforce.comのように米国にもステークホルダー主義を掲げて活動している企業がある。「八方よし」は、企業経営者と社員を含むステークホルダーが、お互いにフラットな良い関係を築くための大事なキーワードの1つ。実は、「全ての人たちとフラットに向き合う」ことは、本日「実践」で発表いただいた3名の経営者の方が、会社の中で経営者個人として当たり前に行っていること。

今後は、日本の企業のステークホルダー主義の事例を取り上げ、その「輪郭」を明確にしていきたい。

 

(2)【座談会】八方よし~その1:社員

参加者

【会員企業様】
日本自動ドア株式会社 代表取締役 吉原二郎さん https://www.jad.co.jp/
セムコ株式会社 代表取締役 宗田謙一朗さん https://www.semco.jp/
株式会社茂呂製作所 代表取締役 茂呂哲也さん   https://moross.co.jp/
株式会社シードパートナー 代表取締役 永沼秀一さん https://seed-p.co.jp/
金沢QOL支援センター株式会社 https://k-qol.com/
工藤恭央さん、 吉田康彦さん 、柴さん 

【事務局 】
株式会社Sacco代表取締役 加藤俊、取締役 齋藤真織、吉本征司(総合司会)

 

齋藤:ここからは座談会として、8つのステークホルダーのうち社員との関係について考えていきたいと思います。

最も重要なステークホルダーと言える社員に対して大事だと思うこと、こうあった方が良いと思うことについて、参加者からそれぞれお1人ずつ発言をいただきたいと思います。

社員と会社はお互いに自立した関係

金沢QOL支援センター株式会社 人事部  吉田 康彦さん

会社も社員もそれぞれが自立しお互いを支え合っている状態が理想だと考えています。雇い雇われということではなく、お互いが事業を通してお互いが成長する、成長し合うためにここにいるだという考えが重要。「企業のビジョンや理念に共感したもの同士、共通の目的を実現するために我々はここにいる」という認識を保とうと努力しています。

 当社の事業は、障がい者支援です。彼らも「自立したい」と思って当社に来てくれています。だから、我々も彼らに自立していただき、良い社会を作ることが目的です。「八方よし」についても、当社でどのように実践できるかのヒントをこの場で考えていきたいですね。

齋藤:ステークホルダー主義について、大事なキーワードをいただきました。「自立してお互いを支え合う」「お互いが成長し合い、それを確認し合う」ということ。採用の中でまさに心がけていらっしゃるのですね。後ほど工藤様にもお話をお伺いしたいと思います。

 

会社は強みを生かす「箱」ステークホルダーと持続的に成長できる関係

株式会社茂呂製作所 茂呂哲也 さん

「会社は社員と一体になって持続的に成長していくもの」という認識です。

私は「会社」というものは「箱」だと考えています。知識や経験技術を持つ人間が集まって、それぞれの知識、技術、経験といった強みを持ち寄り事業を行い、得られる成果を分配するための装置という認識です。

だから「社長」や「社員」といった肩書きは、企業を運営するための指示命令系統において必要なものであり、社長だから偉いわけではなく建前に過ぎません。企業の実態は、皆横一線でお互いが責任を果たし合う関係です。もっとフラットにオープンに正々堂々と対話をしていくことが重要ではないかと考えています。厳しいことを言うと、お互いがもっと責任を果たし合う必要があると思っています。

 

社員が主役、経営者は監督としてワンチームをつくる

 セムコ株式会社 宗田謙一朗 さん

 当社では、ラグビーのようにワンチームの関係をつくることを目指しています。2021年4月からティール組織(社長や管理職からの支持命令系統がない組織。メンバー同士が信頼に基づいて組織を運営する)を参考に組織改革を行おうとしています。

営業部門や技術部門といった部署ごとの垣根を越えて、皆で助け合い、支え合っていく組織づくりをしていきたいと思います。例えば生産部隊が人が足りないのであれば、別の部署から支援したり、営業展開についても営業部隊だけではなく技術も参加するといった取り組みです。

 最終的には、ラグビーのように社員が中心に試合をつくり、理念や戦略を共有しながらチームとして目標を達成していくようにしたい。経営者は監督でハーフタイムに戦略や個別の戦術のアドバイスを行いますが、試合で活躍するのはあくまで主人公である社員たちです。それをサポートするのが監督である経営者の役割だという関係です。

 

 経営者の役割は、社員がクライアントに対して情熱を費やすよう導くこと

 株式会社シードパートナー 永沼秀一 さん

当社は今期で8期目です。20年間は勤め人で、新卒で社員数2万人の大手損保会社に入社しました。その後3,000人、300人など様々なサイズの会社の社歴があります。雇われの身であった立場の頃から考えていたことは、誰も偉くないということ、暇でもないし忙しくもないということです。

1つ目は、社長であろうが、一般社員であろうが、役割をもって仕事をしています。すべての人が役割を果たしていかないと会社は回りません。だから誰かだけが偉いわけではないのです。会社に対してものを言うには、自分の役割を果たして言うべきであり、その逆もしかりです。

今は私が代表で社員が1名の2名体制です。2人の役割分担は明確に決め、役割に応じて、私の役割の仕事であればあなたが私の部下だし、あなたの役割の仕事においては、あたなが上司で私が部下、という関係なので、私が部下としてやるべきことがあれば指示してほしいと言います。組織が結果を出すためには、その人の役割を最大限尊重すべきだと考えているからです。

2つ目はは、人間は不平等な生き物だと思いますが、1日24時間ということだけはどんな人にも平等です。時間をどう使うか、何を優先するかは、人によって価値観が違います。ゲームや昼寝をしているから暇だという考えは、何を優先するかという価値観の異なる人が言う意見に過ぎません。一番大切なステークホルダーはクライアントであり、限られた時間の中で、社員がクライアントの役に立つために、情熱や時間を費やすように価値を意識できるようにする。それに向けて経営者が導き、結果として社員が成果を上げるという関係が良い組織と社員の関係ではないでしょうか。

 

コア・バリューにもとづく組織づくりを行い、家族と言えるまでの関係を育む

日本自動ドア株式会社  吉原二郎さん

当社は、採用時点から「コア・バリュー」への共感を一番大事にしています。なぜ、そこまで「コア・バリュー」を重視するのか?それは、私が会社は「コア・バリュー」を共有する集団、社員が一緒に成長する器だと考えているからです。

JADのコア・バリューとは、日本自動ドアで働く社員全員に共通する価値観・信条・文化・人格・行動・使命のこと

そのため、私たちは「コア・バリュー」への共感度合いが8割以上の人を採用するのです。私たちはそれを「カルチャーフィット」と呼んでいます。カルチャーフィットした人たち同士が結びつき、そこに集まってお互いが切磋琢磨して成長するのです。これが会社に所属する意味であり、会社はそのための器であり箱です。

会社と社員の関係は入社時からコア・バリューに共感するところから始まる疑似恋愛関係のようなものです。だんだんと関係が深まり、最終的には家族同然の間柄になります。実際に社内結婚も22組と多いんです。これは会社が意図したわけではなく、価値観が合っている者同士が集まれば自然にそうなっていくのです。

病気で亡くなられた社員のお墓を作ったこともありました。家庭の事情は様々で、身寄りのない人もたくさんいます。お互いに支え合い、家族同然として過ごしてきた人ですから、私は、最終的には会社に扶養の義務と同じ義務があるのでは思っているんですね。

 

ステークホルダーの先のステークホルダーを大切にする

 加藤:会社と社員の関わりは、非常に難しいテーマですね。

現在は「働き方改革」などの時代の要請もあり、その関係性が劇的に変化する過渡期ではないでしょうか。優秀で熱量の高い方が、ずっと同じ企業で働くという価値観がなくなってきています。経営者の方は、どうすれば社員のモチベーションを高め、エンゲージメントを深められるのか、とても苦労されているのではないでしょうか。

私は、これまで企業取材や社内報取材などを通じて様々な業種・業態の企業を見てきました。その経験から企業のインナーコミュニケーションがうまくいくと感じたポイントを2つご紹介します。

1つは、日本自動ドアの吉原さんがおっしゃっていたように、企業理念を明確に打ち出し、社員に徹底する仕組みができていることです。組織自体の透明性が担保されていることが必要です。

もう1つは、ステークホルダーのステークホルダーまで大切にする経営です。

特に、企業が社員のプライベートに踏み込むことがしにくくなっている現在、会社から「社員の家族も大切」というメッセージを発信し続けることは中長期的に大変有効です。定点観測していくと、社員たちが会社に対して愛着を持つようになるという結果を得ています。そのためには社員を声を拾いフィードバックしていく必要があります。

 

社員と思ったような関係性が築けない場合

齋藤:続いて、皆様にお聞きしたいことがあります。仲間として迎え入れた社員の方と、思ったような関係性が築けなかった時にどうされているかということです。

社員の方1人ひとりの人生の中で、パフォーマンスが発揮できなかったり、成長できなかったり、様々なケースが発生すると思います。そんな時に皆様はどうやって社員に向き合っているのでしょうか?

加藤:金沢 QOL 支援センターさんは、素敵な企業理念を掲げ、社員の方々のモチベーションも高く働いてらっしゃるとお見受けしています。仮にエンゲージメントが高くない社員の方がいらした時にはどのように対応していますか?

退職後も良好な関係を保つために

金沢QOL支援センター株式会社 工藤恭央さん

当社の代表は「採用は結婚と同じ」と言います。基本的に当社の理念に共感する方しか入社をされませんので、理念に合わない方は社員にはおりません。会社を離れる場合は、理想と現実の乖離があります。当社もやっと10期目を迎えたベンチャー企業。ベンチャー企業を志向する方はワクワクする感じがあると思いますが、大企業のような働き方を期待する方にはアンマッチかもしれません。

加藤:私が御社を取材して「すごい」と思ったのが、 OB の方たちとの関係も良好に保とうとしているところです。現在、企業の口コミサイトの力は無視できません。退職された方とも丁寧な関係を築こうとする積極的な姿勢はなかなかできないことだと思います。

工藤さん:退職される方は、良くも悪くも自主独立、音楽性の不一致のような感じが多いですね。やりたいこと、求める結果はもともと共通していたので価値観は同じです。実現する方法が異なるという点での違いがあったということかと思います。

 

価値観の合う場所、生まれ持った居場所を見つける支援をする

 株式会社シードパートナー 永沼秀一さん

 勤め人時代に営業部門で部下を9名持った時の経験で言えば、販売実績はモチベーションに左右されることが多々あります。営業には正解がありません。話し上手な人が売れるわけでは決してない。話し方や営業先など、部下個人の適性もあります。また、具体的にアドバイスしても、本人のやる気がない場合は難しい面がありますよね。悩ましい問題です。

 以前読んだジャック・ウェルチの自著に、価値観が合わない人が組織から離脱することは仕方がない。ただその人が問題なのではない。別の場所では違う価値観の元で活躍できる可能性がある、というくだりがありました。確かに、人それぞれの価値観がある以上、ある程度の人の循環は仕方がないのかもしれません。人にはそれぞれ価値観がフィットする、生まれ持った居場所があるのではないかと思うのです。

 

社員のモチベーションを喚起するように対話する

セムコ株式会社  宗田謙一朗さん

非常に難しい話だと思います。私もすごく苦労しているところです。

私個人としては、とにかく社員を信じて話すしかないと思っています。とはいっても、自分の意見や理想の押し付けになってはいけない。どう言ったところで相手も「やりたい」と思わなければやらないからです。

だから、できるだけ社員のモチベーションを喚起できる「やりたいこと」を見つけられるように対話を心がけています。彼らの適性があってやりたい仕事で、能力を発揮してもらえる環境を作ることが良いのではないかと。

そこで、部署の垣根を越えて仕事ができるように、ティール組織への変更にも踏み切ることにしました。どこまで自由にやってもらうかも含め、これからもまずは話し合うことを第1にしたいと考えています。

 

半期に一度カルチャーフィットを確認、社員のペースにあった成長を促す

 日本自動ドア株式会社 吉原二郎さん

 当社は年に2回、直属の上司複数名で「カルチャーフィット」の確認と、その人の「成長」について面談する場を設けています。

人ってそれぞれ成長スピードって違いますよね。例えばとても意欲が高くて「あれもやりたい」「これもできます」という方もいれば、親御さんの介護と育児にとても疲れている方もいる。その時によって状況が違います。だから一様に成長を求めないようにしているんです。その人のペースで成長してくれれば良いと思います。

 私は、マネジメントは「サーバントリーダー」だと思っています。社員の成長のための奉仕者。社員が苦労していて成長できない状況であれば、その苦労を取り除くためのサポートに徹するというのが会社の方針です。

 

本日の座談会まとめ

 ・本日はまず、企業にとって最も大切なステークホルダーである社員と社会社の関係のあり方についてそれぞれのご意見を伺いました。

・次に、社員が思うような成果が出せない、成長が芳しくないなど、何らかのハードルへの対処法や考え方について意見を交換しました。

本日の意見の最大公約数は、社員こそが企業のエネルギーの源泉であり、そのエネルギーを最大化するには、

1.価値観の共有
2.役割分担
3.オープン性、透明性
4.成長
5.リーダーシップ
6.成果の分配
7.ステークホルダーとしての優先順位

といった要素を明確にすることだと言えそうです。

今後、「社員」と企業の関係性の輪郭をより明確にしていくため、具体的な実例をお聞きした上で議論を掘り下げていきたいと思います。皆様が日々考え実践している事象から、その本質を抽出して、ステークホルダーを大切にする経営の輪郭を明らかにしていきたいと考えております。

なお、Saccoの加藤は7月に書籍を出版する予定です。cokiのコミュニティで議論した内容を「ステークホルダーを大事にする企業経営者の声」としても世に出したいと考えております。cokiは経営者だけではく、社員の立場からの意見や悩みなども出し合える場を形成してまいります。

 

5.CLOSING クロージング:事務局から連絡事項

第3回月例会テーマ:お客様(ユーザー)

日程:3月17日(水)16:00-18:00(毎月第3水曜日 16:00-18:00)

以上

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