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「日本行きまーす」の声続々 台湾総統も外交部長もホタテで“日本応援”——日本観光有事は台湾有事

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台湾から続々「日本行きまーす」 頼清徳総統も外交部長もホタテで“日本応援”——日本観光有事は台湾有事
林佳龍 Lin Chia-lung Instagramより

中国の“日本外し”が進むなか、台湾ではまるで逆流するように日本への応援が広がっている。総統は自宅の寿司を撮り、外相はホタテの皿を掲げ、航空会社までが日本行きセールを打ち出す。その背景には、恩返しの記憶と、観光市場の現実が交差していた。

 

総統の寿司と味噌汁、外交部長のホタテ 生活の温度で示される“日本応援”

台北の夜は湿度を帯びながら、どこか軽い風が流れていた。頼清徳総統がXに投稿したのは、自宅のテーブルに置かれた寿司と味噌汁の写真だった。国家の代表という肩書きからは想像がつかないほど普通の昼食で、日本語で「今日のお昼ご飯です。日本を応援します」と添えられた短い一文に、妙な生活感の温度が宿っていた。

その数時間後、林佳龍外交部長は外食で注文した日本産ホタテの刺身を盛った皿を前に、箸を軽く持ち上げた写真を投稿した。「日本を応援します」と日本語で示された言葉には、政治家にありがちな構えた空気はなく、むしろ親しい友人に向けるような柔らかさがあった。

恩返しの記憶が静かに動き出す パイナップルからホタテへ

今回の台湾の動きが単なる善意の発露ではないことは、過去の積み重ねが証明している。2021年に台湾産パイナップルが中国によって禁輸された際、日本の消費者が大量購入して支えた記憶は鮮明だ。さらに、2011年の東日本大震災で台湾が示した世界最大規模の支援は、いまでも両国の間に強い絆を残している。
それらは言葉にされなくとも蓄積され、今回の“寿司とホタテ”の応援へと静かにつながっている。

なぜここまで日本を応援? 台湾観光客は“即戦力市場”という現実

 

表向きには友情の物語のように見えても、その奥には経済の現実が横たわっている。中国からの“日本離れ”が進むなか、訪日観光の土台を支えているのは、今や台湾という存在だ。観光庁によれば、台湾から日本を訪れる旅行者は年間で 約500万人 に達し、中国がピーク時に記録した 約950万人 と比べれば半数ほどにとどまる。それでも、台湾が持つ市場としての性格は中国とはまったく異なる。

台湾の旅行者はリピーターが非常に多く、ひとつの流行で行き先が急激に変わることが少ない。政治情勢の影響で需要が一気に消えるリスクも小さく、個人旅行が中心のため、価格や治安への反応も比較的安定している。こうした特性が重なり、台湾は“縮小版の中国”ではなく、むしろ 中国が抜けた穴をそのまま埋められる即戦力の市場 として日本に作用している。

だからこそ台湾の「日本行きまーす」という声は、単なる温情だけでは説明できない。感情の裏側で観光市場のバランスが揺れ、台湾が日本の観光地や水産業を確かに支える存在であるという現実がある。今回の応援ムーブが、温かさと同時に重みを持って広がっている理由は、まさにこの点にある。

旅行通の一言が火をつけた 「日本観光有事は台湾有事」の拡散

林氏璧 Instagramより

台湾メディア「聯合新聞網」によると、日本旅行に詳しい人気ブロガー・林氏璧(リン・シービー)氏が投稿した「日本観光有事は台湾有事」という言葉がSNSで急速に広がり、今回の応援ムーブの大きな火種となった。
台湾では、誰かが動けばすぐにそれを模倣し、体験を投稿し、さらに次の行動につながる独特のオンライン文化がある。この連鎖の速さが、そのまま“応援の速度”に変換されていった。

航空会社まで参戦 タイガーエア台湾の“777元セール”が市場シグナルに

応援の輪は政治家や個人ユーザーに留まらなかった。タイガーエア台湾は「777元セール」を打ち出し、「日本空席、一つも残すな」という挑発的なコピーを掲げた。SNSでは価格への突っ込みが軽く交じったが、その裏で、台湾の航空会社が日本行き需要の回復を“読み取った”ことは確かなシグナルとなった。

企業が動くという事実は、単なる感情の応援ではなく、市場全体が“日本に向かう流れ”へと傾いたという意味を持つ。

日本側SNSでは揺れ幅のある賞賛が広がる

 

日本のSNSでは、台湾の連続投稿に温度のある反応が並んだ。「台湾さん優しすぎる」「ホタテ外交が可愛すぎる」といった純粋な感謝の声がある一方で、政治的意図や経済的効果に冷静な疑問を投げかける声もある。それでも全体としては、台湾からの行動のひとつひとつを丁寧に受け止める雰囲気が生まれていた。

日台協力は“情”と“経済”の二層で進んでいる

今回の台湾ムーブは、友情という情緒と、観光市場という現実が交差して動いている点に特徴がある。政治家の生活感のある投稿から、個人ユーザーの旅行決断、そして航空会社の参戦に至るまで、さまざまな層が同じ方向を向き始めている。
その流れは、中国の“空白”を台湾が静かに埋めるという経済上の変化とも連動している。ホタテ一皿から始まった小さな動きが、結果として日本の観光、水産、外交の三つに波及する可能性を秘めている。

「日本観光有事は台湾有事」。
この言葉は、単なるSNSの流行語ではなく、台湾が日本に寄り添う根拠を示す象徴となりつつある。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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