
アニメ『ダンダダン』に登場した楽曲がX JAPANの曲に似ていると話題になり、SNSを中心に騒動へと発展した。騒動の渦中にいたYOSHIKIは、記者会見で経緯を振り返り、制作側との和解や心境を語った。その舞台裏には、著作権問題だけでなく、創作活動とファンとの関係に向き合うアーティストの姿があった。
騒動の発端――アニメ劇中歌がX JAPANに酷似
テレビアニメ『ダンダダン』第18話で登場した劇中歌「Hunting Soul」が、X JAPANの楽曲に酷似しているのではないかと指摘された。楽曲は劇中バンド「HAYASii」によって披露され、スピード感あふれるメタルナンバーとして公開されたが、ハイトーンボイスや叙情的なギター、激しいドラムが特徴的で、ファンの間では「まるでX JAPANの楽曲だ」との声が相次いだ。
事態を大きくしたのは、当のYOSHIKI本人がSNSで反応したことだった。彼は自身のX(旧Twitter)に「何これ、X JAPANに聞こえない?」と投稿し、さらに「この件、僕は何も知らない。ファンのみんな、何が起きているのか教えて」と困惑を示した。この発言は瞬く間に拡散し、アニメファンと音楽ファンの双方で大きな議論を呼んだ。
YOSHIKIが示した困惑と懸念
YOSHIKIは当初、この事態を「面白い」と笑って受け止めていたと明かしている。しかしその後、弁護士から著作権侵害の可能性があるとの連絡を受け、一転して事態の深刻さを認識した。彼は「こういうものは、やはり先に関係者へ連絡した方がいい」とSNS上で注意を呼びかけ、問題提起を行った。
こうした経緯から、ファンの間では「著作権侵害ではないか」「オマージュとしても説明不足では」といった意見が噴出。SNSを中心に騒動は拡大し、音楽とアニメの双方のコミュニティで議論が広がった。
アニメ制作側の公式謝罪と経緯説明
事態を重く見た『ダンダダン』制作委員会は、8月22日に公式Xを通じて声明を発表した。声明文では「このたびはTVアニメ『ダンダダン』における楽曲『Hunting Soul』に関しまして、ご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪。そのうえで、制作の経緯を次のように説明した。
「本楽曲は、製作チーム一同が尊敬してやまないYOSHIKI様やX JAPAN様の熱量をアニメの中で表現すべく制作いたしました。しかしながら、事前のご説明が不足していたことでご心配をおかけしてしまったことは本意ではなく、心からお詫び申し上げます。」
さらに、権利関係については関係各所と建設的に協議を進めていることを明らかにした。制作委員会は「今回を契機に、未来に向けた創造的な取り組みをYOSHIKI様と共に考えている」と、前向きな姿勢を強調した。
YOSHIKIが語った和解の裏側
同日、YOSHIKIは都内で行われたサウジアラビア公演発表記者会見の場で騒動に言及した。彼は「制作委員会のプロデューサーの方から直接お電話をいただき、とても前向きな話し合いができた」と明かし、和解に至ったことを報告した。
また、経緯を振り返りながら「僕の創作物は僕だけでなく、いろいろな人が関わっている。権利関係は専門家に任せ、自分はクリエイティブに集中していきたい」と語った。その上で「いろんなことがあってご心配をおかけしました。騒がせてしまって申し訳なかった」と重ねて謝罪した。
著作権問題とファンの受け止め
今回の騒動は単なる楽曲の酷似を超え、著作権やオマージュの在り方に一石を投じた。
ファンの反応は二分された。「説明不足はあったが、結果的に和解してよかった」という声がある一方、「似すぎていて不快だった」という意見も根強い。SNS上では「リスペクトと盗用の線引きは難しい」というコメントが多く見られた。
サウジアラビア公演発表の舞台裏
記者会見は、もともとYOSHIKIがサウジアラビア・アルウラの世界遺産「Hegra」での公演を発表する場だった。11月20日、自身の誕生日に合わせて行われるこのコンサートは、日本人アーティストとして初めて同地で開催されるものである。YOSHIKIは「とても光栄に思っている」と語り、騒動の最中であっても前向きな姿勢を崩さなかった。
文化の交差点としての意味
今回の騒動は、アニメと音楽という異なる文化が交差する場で起きた。『ダンダダン』制作側はX JAPANの熱量を作品に込めようとしたが、説明不足によりトラブルとなった。一方で、YOSHIKIは最終的に「すてきな出会いができた」と前向きに評価している。
この姿勢は、文化の交流における摩擦と可能性を示している。著作権への配慮と敬意ある表現が両立すれば、アニメと音楽の新たなコラボレーションの道を開くかもしれない。
まとめ――騒動を超えて
『ダンダダン』楽曲酷似問題は、公式の謝罪とYOSHIKIの和解発表によってひとまず幕を下ろした。YOSHIKI自身が「クリエイティブに集中したい」と語ったように、今回の出来事は彼にとっても学びの機会となった。
アニメ制作側も「未来に向けた創造的な取り組み」を掲げており、今回の騒動が新たな文化交流の出発点となる可能性もある。騒動の結末は、ファンにとっても「謝罪と和解」という形で示されたが、その背景には創作の現場が抱える課題と、文化をつなぐ可能性が見えている。