トランプ米大統領が2024年の資産報告書で、暗号資産関連事業から約5700万ドル(82億円)の収益を得ていたことが判明した。NFTやミームコイン収益も含まれる。
暗号資産収益の全貌
2024年の試算報告書が13日発表された。公開されたトランプ氏の資産報告書によれば、一族が経営に関与する暗号資産企業の株式保有から約5700万ドル(約82億円)の収益を得たとニューヨーク・タイムズ紙が報じている。また、NFTのライセンス契約からはさらに120万ドル(約1億7000万円)を得ていたようだ。
「$TRUMP」コインやDeFi事業からも巨額収入
報告によれば、ミームコイン「$TRUMP」は約3億2000万ドル(約457億円)の手数料収益を発生させた。ただし、収益の企業とパートナー間での配分は未公表である。また、分散型金融(DeFi)企業World Liberty Financial関連では、トークン販売から約4億ドルの収益があり、トランプ氏にはそのうち約5735万ドル(約82億円)が配分されたようだ。
低迷する不動産事業と暗号資産への転換
かつて「不動産王」として名を馳せたトランプ氏だが、現在はその主力事業だった不動産セクターの成長が鈍化している。ウォール街に所有するオフィスタワーは含み損を抱えているとされ、サンフランシスコの3棟からなる物件群は債務問題に直面。さらに、フロリダ州パームビーチにある約5億ドル(約715億円)相当の不動産資産も、過去3年間で市場価値が横ばいの状態となっているようだ。
こうした不動産市場の停滞を背景に、トランプ氏は暗号資産分野へと急速にシフトしたとされている。2024年には、資産全体の60%近くが仮想通貨関連事業で構成されており、過去の「不動産中心」のビジネスモデルから大きく様変わりしていることが明らかとなった。
ビジネスと公職の境界
トランプ氏は2025年5月、一族が発行・運営する暗号資産の大口保有者たちを招いて、豪華な夕食会を開催した。この夕食会は公には「支持者との交流の場」として発表されたが、その直後に該当する暗号資産の価格が急騰。一族が経営に関与する企業の価値が大きく上昇し、結果的に一族が莫大な利益を得た。この出来事に対し、一部メディアや専門家からは「トランプ氏の政治的立場を利用した価格操作ではないか」との指摘が上がっている。暗号資産市場は価格変動が激しく、著名人の発言や行動が相場に大きく影響する特性があるため、こうしたイベントの開催自体が価格操作にあたるのではないかという疑念を生んでいる。
さらに問題視されているのは、トランプ氏が現職大統領という公的立場にありながら、NFTやライセンス収益、暗号資産ビジネスといった個人の事業でも多額の利益を上げている点である。ニューヨーク・タイムズは、「大統領の職務と個人ビジネスの境界が不透明だ」とし、公私の利益が衝突する“利益相反”のリスクを指摘している。
このように、トランプ氏が政治的影響力を背景に、個人や一族の資産を拡大している構図には、多くの懸念の声が上がっている。
今後の展望と課題
暗号資産への依存度が高まる一方、従来の不動産事業は成長鈍化が報告されている。専門家からは「暗号資産は流動性が高く、ハードアセットとのバランスが取れている」との評価がある半面、公職者としての収益構造の透明性確保は求められる観点だろう。