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遺族年金「生涯支給」から原則5年へ 制度見直しで最大2000万円の減額も

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遺族年金の説明
DALL-Eで作成

遺族の生活を支える遺族年金制度が、制度創設以来の大きな転機を迎えている。政府が提出した年金改革法案に盛り込まれたのは、遺族厚生年金の「有期化」だ。これまで一定の年齢以上であれば、生涯受け取れた遺族年金が、原則5年間に制限される方向で見直されようとしている。対象者にとっては最大で1900万円以上の支給減となる可能性もあり、生活設計への影響が懸念される。

背景:男女格差解消の名の下で進む見直し

厚生労働省は、共働き世帯の増加や男女の賃金格差の縮小を理由に、遺族厚生年金の見直しを推進。現行制度では、夫を亡くした女性は30歳以上であれば生涯年金を受け取れるが、逆に妻を亡くした男性は55歳以上でなければ受給対象外という不均衡があった。

新たな制度案では、この男女差を解消する代わりに、原則60歳未満で配偶者を亡くした場合には、男女ともに5年間の期限付きで給付する方針だ。制度は20年かけて段階的に移行される予定で、現在の30代~50代にとっては将来の生活設計に直結する問題となる。

 

遺族年金の基礎知識(制度概要表)

以下は、遺族年金の種類と主な内容についての比較表である。

項目遺族基礎年金遺族厚生年金
対象者国民年金加入者の遺族厚生年金加入者の遺族
主な受給対象18歳未満の子がいる配偶者、または子妻・夫(条件あり)、子、父母など
支給開始要件死亡した人が保険料納付要件を満たす同上+被保険者期間あり
支給期間(現行)子が18歳到達年度末まで妻は30歳以上であれば生涯、夫は55歳以上で条件付き
支給期間(見直し後)男女ともに原則5年間(60歳未満)同上
支給金額(例)年額約79万円+子ども加算亡くなった人の報酬比例(報酬の約3/4)
申請先市区町村または年金事務所同上
必要書類死亡診断書、戸籍謄本、所得証明など同上+厚生年金加入状況がわかる書類

※支給額は令和6年度時点の標準モデル。将来的に見直される可能性あり。

 

具体例で見る影響:2000万円近い差も

例えば、月収45万円の会社員だった夫が55歳で亡くなり、妻が87歳まで生きた場合、現行制度では約2336万円の遺族厚生年金を受け取れる計算となる。しかし見直し後は、原則5年間のみの支給となり、総額は約365万円にとどまる。支給総額は1971万円減少し、老後の備えや保険設計を大きく見直す必要が出てくる。

 

保険や生活設計への影響

社会保険労務士の北村庄吾氏は「この変更は事実上のカットであり、遺族年金に対する信頼性が揺らぐ。生命保険やリタイア後の生活設計にまで影響を及ぼす」と指摘する。

遺族年金を老後資金の一部として見込んでいた家庭にとっては、今後、民間の保険で備え直す必要が生じるだろう。制度の有期化に伴い、政府は加算措置や新制度創設を併せて実施する方針だが、詳細は明らかになっていない。

 

制度改正に向けた論点

  • 遺族の自立支援と称して給付を短期化する一方で、高齢期の生活リスクにどう備えるか。
  • 制度移行中の世代に対する経過措置や説明責任は十分か。
  • 負担増に直面する現役世代への補完策(例:確定拠出年金の強化)をどう設計するか。
 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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