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「使うことがありませんように」 「10年保存」の無印良品が教える“備え”の本質

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災害への備えの本質
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無印良品の災害用飲料水に高まる関心、背景に見える危機感

「使うことがありませんように」――そんな切実な声とともに注目を集めているのが、無印良品が販売する「災害用備蓄飲料水 The Life Water」である。製造から10年間保存が可能なこの製品は、1本180円という価格帯ながら、アルミ缶による優れた遮光性と酸素遮断性を兼ね備え、長期保管に適した仕様となっている。

SNS上には、「10年備蓄できてこの価格はコスパ最高」「備蓄用に買い置きしています」といった評価が相次ぎ、防災グッズとしての存在感を増している。無印良品のネットストアではまとめ買いにも対応しており、購入者の多くが家庭内の備蓄に取り入れている様子がうかがえる。

想定外が常態化する時代に

地震や台風、集中豪雨など、自然災害が頻発する日本において、防災意識の向上は喫緊の課題とされる。気象庁が2024年にまとめた災害統計によれば、過去10年間の自然災害による死者・行方不明者は年間平均200人超にのぼる。特に都市部では、交通網の寸断やライフラインの停止が長期化する傾向も強く、自宅での備蓄体制が人命を守る要となる。

政府も「最低3日分、可能であれば1週間分の水・食料の備蓄」を推奨しており、飲料水に関しては一人あたり1日3リットルが必要量とされている。これは成人の体内水分維持や調理用を含めた最低限の数値であり、家族単位では相当量の備蓄が求められる。

 

生活者の「自助」へのシフト

無印良品の備蓄水が好評を博している背景には、「防災は行政任せではなく、自助・共助の意識が必要だ」との認識が、生活者の間で広まりつつある現状がある。特にコロナ禍や物価上昇を経て、「いざというとき、自分と家族を守れるか」という問いに直面した世帯も少なくない。

加えて、ペットボトルではなくアルミ缶に充填された点も、防災用品としての信頼感を高めている。アルミは光や空気を遮断する能力が高く、熱にも強いため、車内や倉庫など温度変化の激しい環境でも劣化しにくい。かつ持ち出しの際に軽量であることから、非常持出袋に入れても負担にならない利点がある。

 

“備えること”の心理的ハードルを下げる

防災用品の準備は、「不吉なことを想定するようで気が進まない」といった心理的な壁を持つ人も多い。そうしたなかで、日用品としての親しみやすさや価格面での手軽さは、防災の「第一歩」を踏み出す後押しとなる。

実際、「普段使いできる備蓄」という観点で、災害用食品や水を日常生活の一部として取り入れる“ローリングストック”の考え方が普及している。防災を“特別なこと”から“日常の延長”へと捉え直す視点が、今後の日本社会における防災文化の根幹となる可能性がある。

 

災害に備える家庭用備蓄リスト(基本セット)

以下は、家庭での災害時に備えるべき基本的な備蓄品を整理した一覧である。家族構成や住環境に応じて調整のうえ、定期的な見直しを習慣化することが望ましい。

項目数量の目安(家族3人)使用方法備蓄サイクル重要度その他補足
飲料水(飲用)9~21L(1人1日3L)飲用、水分補給10年(長期対応品)★★★★★缶入り・ペットボトル両方の併用推奨
保存食(主食類)9~21食分加熱不要・湯戻し等で食事を確保5年以内(種類により異なる)★★★★★レトルトご飯、アルファ米、乾パンなど
保存食(副菜・菓子類)適量気分転換・栄養補助6か月~3年★★★★☆缶詰、ビスケット、ようかん等
モバイルバッテリー2台以上スマホ・ラジオ等の充電2〜3年★★★★★ソーラー式・手回し発電付も検討
懐中電灯・LEDランタン家族人数分+予備夜間照明、防犯電池は年1回交換★★★★★ヘッドライト型は両手が空き便利
乾電池(単3・単4など)懐中電灯・ラジオ用の2~3回分上記機器の電源年1回チェック★★★★☆使用機器に合ったサイズで備蓄
簡易トイレ(凝固剤)15~30回分排泄物処理(断水時)5年〜10年★★★★★ポータブルトイレやビニール袋併用が必要
ウェットティッシュ・体拭き3~5パック手洗い・体拭き・掃除など衛生管理使用後補充★★★★☆アルコールタイプは感染症対策にも有効
マスク・使い捨て手袋各10~20枚飛沫対策・避難所生活での感染予防数年(未開封保管)★★★★☆コロナ禍以降、重要性が再認識
常備薬・医薬品家族分+1週間分痛み止め・胃腸薬・持病薬等定期見直し(処方薬除く)★★★★★処方薬は主治医と相談して余分に確保
救急セット(包帯・消毒薬など)1セット応急手当使用後即補充★★★★★切り傷・捻挫・やけど等を想定
ラジオ(手回し・電池式)1~2台情報収集(停電時)電池は年1回交換★★★★☆手回し+ソーラー式が安心
ゴミ袋・ジップロック大小数枚ずつ排泄物・食器・汚物の処理使用後補充★★★★☆衛生管理と携帯時の簡易パッキングに有効
カセットコンロ・ガスボンベ1台+ボンベ3本以上調理・湯沸かしガスは7年目安★★★★☆換気に注意、屋外でも使えるよう点検
ビニールシート・毛布・アルミブランケット各1~2枚保温・雨風しのぎ・スペース確保10年以内★★★★☆軽量でかさばらず、避難所生活に重宝
家族構成に応じた特別用品子ども用品・介護用品などミルク・紙おむつ・おしり拭き・補聴器電池など消耗品ごとに適宜確認★★★★★個別に対応要、障害・疾患ある方はリスト化を推奨
現金(小銭含む)1~2万円停電・通信障害での支払い手段確保定期確認★★★★☆千円札や500円玉など小額紙幣が望ましい
家族写真・連絡メモ写真1枚・連絡先数件身元確認・通信不能時の備え更新不要★★★☆☆特に子どもや高齢者の保護に役立つ

「日常が続くこと」を祈りながら

「使うことがありませんように」――この言葉に込められた願いは、災害が起きない未来を願うと同時に、備えの大切さを知る者の共通した想いである。無印良品の飲料水は、その象徴のひとつに過ぎない。

私たち一人ひとりの備えが、地域や社会全体のレジリエンスを高める。予測不能な時代にあって、“備える”ことは、恐れに負けることではなく、“生き抜く力”を養う行為である。

 

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ライター:

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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