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コメ価格高騰に政府が緊急対応 『5キロ2000円』備蓄米放出の裏で農家に不安

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米価格高騰に政府が対応
DALL-Eで作成

急激に高騰したコメ価格を抑制するため、政府は備蓄米の販売方法を見直し、小売価格の引き下げに向けた対応を加速させている。だがその裏で、生産者である米農家からは懸念の声も上がる。ここ2〜3年の価格推移と背景、現在の政策、そして農家支援策を含めて整理する。

平均価格は2年で倍増 異例の高騰続く

農林水産省によれば、2025年5月のスーパーにおけるコメ(5キロ)の平均価格は4268円(税込み)に達した。これは前年の約2倍、2023年と比較してもほぼ倍増であり、極めて異例の水準である。

背景には、2023年夏以降の記録的な猛暑・渇水・病害による作況悪化がある。特に西日本では収穫量が大きく減り、流通量が絞られた。また、燃料や肥料、農業資材の高騰といったコスト面の圧力も大きい。需要面では、価格に敏感な層を中心に国産米離れが進行し、パンや麺類、輸入米へのシフトが加速している。

 

備蓄米の入札方式に限界 安値が届かぬ現実

価格対策として政府は2024年度末までに備蓄米の放出を3回実施し、計31万トンを市場に供給した。しかし、この入札制度は大口業者のみに参加が限定され、結果として9割以上をJA全農が落札した。

しかし、その後の流通が滞り、2025年5月22日時点で卸売業者への出荷率は52%にとどまっていた。流通段階で上乗せされるコストにより、最終的な店頭価格はほとんど下がらず、政府の目標である「5キロ3000円台」にも到達していない。

 

随意契約で価格是正 「5キロ2000円」目指す

こうした事態を受け、小泉進次郎農相は2025年5月23日、予定されていた第4回入札の中止を発表。26日からは随意契約方式に転換し、政府が価格を設定したうえで広く業者に販売する体制とする。

販売予定量は30万トン。小泉農相は「6月初旬には5キロ2000円で店頭に並べたい」と意欲を示しており、国が地方への輸送費も負担することで流通コストを抑える。買い戻し条件も外し、速やかな流通を促す方針である。

 

米農家に広がる不安 「市場価格の崩壊」を懸念

一方で、こうした急激な価格引き下げは、米農家にとっては深刻な懸念材料となる。主な懸念点は以下の通りである。

・販売収入の減少

現在も肥料や資材の高騰が続く中、販売価格の下落は直接的な収入減につながる。特に高齢の小規模農家では、経営の持続が難しくなる恐れがある。

・ブランド価値の毀損

価格競争が強まると、地域銘柄米などの価値が相対的に下がり、「安さ」ばかりが消費基準になることで、長年育ててきたブランドが打撃を受けかねない。

・新米販売への影響

古米を中心とする備蓄米が低価格で大量に出回ると、今秋以降に出回る新米への需要が削がれ、市場価格が維持できなくなる可能性がある。

 

政府の対応と農家支援策

こうした農家の懸念に対し、小泉農相は「備蓄米放出はあくまで一時的措置であり、価格の恒常的な下落を意図するものではない」と説明している。あわせて、以下のような配慮と支援策が示されている。

・価格安定のための国による柔軟な対応

備蓄米の放出と流通は市場価格を見極めながら調整され、「過剰放出による市場の崩壊は避ける」との方針を強調している。

・経営安定策との併用

米政策全体としては、水田活用交付金や中山間地域等直接支払制度を活用し、所得補償的な施策で農家を支える仕組みを維持している。

・新たな販路開拓の支援

銘柄米や有機米などの付加価値の高い品目については、直販やふるさと納税など新たな販売チャネルの支援策も拡充されており、多様な販売先確保が求められている。

 

増産と価格安定の両立なるか 今後の焦点

農林水産省は2025年産の主食用米が前年比40万トン増の719万トンに達する見通しを示しており、供給過剰と価格下落のリスクが同時に高まっている。こうした中で、いかにして生産者保護と消費者支援の両立を図るかが、今後の政策課題となる。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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