カンヌ映画祭公認セレモニー「CANNES GALA」に公式採用
沖縄県うるま市の老舗・神村酒造が製造する泡盛『暖流 CRAFT 3年古酒 40度』が、5月18日に南仏カンヌで開催される社交セレモニー「CANNES GALA」にて公式に提供されることが決まった。同イベントは、カンヌ映画祭「Marche du Film(フィルム・マーケット)」公認の授与式であり、世界各国から映画関係者や文化人が集う晩餐会として知られている。
神村酒造は、1882年に創業して以来、143年にわたり泡盛づくりの伝統を守り続けてきた。今回の採用は、日本の酒造文化と映画芸術の“時間を超えた出会い”として注目される。
映画130年の歴史と泡盛143年の伝統が交差

泡盛『暖流』は、1968年に3代目・神村盛英氏が「飲まれているウイスキーと、飲ませたい泡盛をつなぐ泡盛を造りたい」との想いから生み出した銘柄。オーク樽で熟成させたことで、ウイスキーのような琥珀色と甘い香りを持ちつつ、泡盛本来のまろやかさを兼ね備える逸品である。現在は、ソーダ割り「暖ボール」としても若年層や女性に親しまれている。
この泡盛は、2021年から2023年のサンフランシスコ・ワールドスピリッツ・コンペティションで3年連続金賞を獲得。2023年にはダブルゴールド(金賞の中の金賞)も受賞しており、2025年大会でも再び金賞に輝いた。国際的な評価の高さが、今回のカンヌ公式採用を後押しした形だ。
沖縄文化を世界へ届けるセレモニーでの提供演出

セレモニーでは、約150名の招待客に対し、食事の最後に「暖流」が提供される。沖縄の伝統酒器であるカラカラとチブグァーが各テーブルに配され、泡盛はカラカラから丁寧に注がれる演出が予定されている。提供時には、神村酒造代表の中里氏自らが各テーブルを巡り、泡盛の文化的背景や味わいを紹介する。
中里迅志社長は、「泡盛を通して“暖かいご縁をつなぐ”という企業ミッションを体現する機会」と語り、「世界の文化人とセレブリティが集う場で、沖縄の歴史や文化の魅力も伝えたい」と意気込みを語っている。
ステークホルダーの声:泡盛に込めた想いと課題意識
神村酒造・中里迅志社長は次のように語る。

中里さん
「泡盛は、単なる酒類のひとつではなく、沖縄の風土と歴史、そして人々の営みそのものを映す文化です。私たち神村酒造は、明治15年の創業以来、伝統を守りながらも時代に即した革新を重ねてきました。戦後、全てを失った状況からの再出発、そして“暖流”という新たな泡盛の創造は、地域とともに歩んできた私たちの軌跡の象徴とも言えるものです。
このたび、映画芸術の聖地・カンヌの晩餐会という格式ある場で、泡盛“暖流”が公式提供されることは、単なる名誉にとどまらず、泡盛がもつ可能性と文化的価値が世界に認められた証であると受け止めています。
一杯の泡盛が、人と人を結び、地域と世界をつなぎ、記憶に残る時間を生む。そんな酒をつくり続けることが、私たちの使命です。カンヌでの提供をひとつのきっかけとして、泡盛の魅力がさらに多くの人々に届くことを願っています。」
また、今回の取り組みを支援する株式会社サンポウの大塚雅之氏も、こう語る。

大塚さん
「なぜ泡盛は、他の焼酎のように日本各地の居酒屋に自然と並ばないのか。この素朴な疑問が、私自身の原点です。泡盛は日本が世界に誇る蒸留酒であり、その奥深い味わいや文化的背景は、もっと多くの人に知られるべきだと考えています。
今回のカンヌGALAでの提供をきっかけに、泡盛という存在が改めて脚光を浴び、日本国内はもとより世界中の飲食シーンで見直される流れが生まれることを心より願っています。私たちサンポウは、神村酒造の挑戦を全力でサポートしてまいります。」
143年の再興と未来へつなぐ挑戦
第二次世界大戦後、神村酒造は工場も貯蔵酒も全てを失った。だが廃業の危機を乗り越え、泡盛の文化的復興を担いながら再建。現在では沖縄県うるま市・石川高原の麓に拠点を構え、五感を使って泡盛づくりを学べる工場見学なども展開する。
また、CANNES GALAでの提供を契機に、6月以降に報告会を実施し、限定ボトルの発売やPR活動の強化を進めていく方針だ。
「泡盛は人と人、過去と未来、ご縁をつなぐ酒」。中里社長が掲げるこの言葉の通り、沖縄の誇りともいえる泡盛が今、世界の舞台へと舵を切った。