
経済的な困難を抱える家庭の子どもたちに、食事の安心と選択肢を届ける支援が広がっている。2025年度も実施される「子どもの『食』応援クーポン」は、月額5000円分のクーポンを通じて、子ども自身が食を選ぶ力を支える試みだ。背景には、日本に根深く存在する子どもの貧困問題がある。十分な食事、学び、安心できる居場所が得られない――そんな連鎖を断ち切るために、今求められている支援の全体像と課題を追った。
経済的に困窮する家庭へ 2025年度も子どもの「食」クーポン事業を継続
認定NPO法人フローレンスと公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(CFC)は、経済的に厳しい家庭を対象に、子どもが安心して食事を取れるよう月額5000円分の「子どもの『食』応援クーポン」を提供する取り組みを2025年度も継続する。現在、支援を受ける利用家庭を全国から募集しており、申請締切は5月14日となっている。
このクーポンは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、飲食店などで食料品や食事を購入できるプリペイドカード形式で提供される。利用期間は2025年8月から翌年3月末までの8カ月間で、総額4万円相当の支援となる。
背景にある“子どもの貧困”の拡大
こうした制度の背景には、日本社会で深刻化する子どもの貧困の問題がある。厚生労働省の調査によると、子どもの貧困率は13.5%(2022年時点)にのぼり、ひとり親家庭に限るとその割合は約50%に達するとされている。
子どもの貧困の主な原因
- ひとり親世帯の低所得
- 非正規雇用の増加と不安定な雇用環境
- 物価高騰による実質可処分所得の減少
- 社会的孤立や地域支援の不足
これにより、十分な食事、学用品、塾や部活動などへの参加機会が奪われ、心身の発達や教育機会に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
「食」支援は子どもを守る最前線
子どもは自らの生活環境を選ぶことができない。特に給食のない長期休暇中や、親の就労が不安定な家庭では、1日1回の食事さえ確保が難しい例も少なくない。
そのような中で、**「選べる食の支援」**として月5000円分のクーポンを提供するこの取り組みは、子ども自身が食べたいものを選べる自立性を尊重し、自己肯定感の育成にもつながると期待されている。
改善への道筋:現金給付・学習支援・地域連携の多層化が鍵に
子どもの貧困に対しては、単なる一時的な救済ではなく、**「食」「教育」「居場所」「家庭の自立支援」**といった多層的な取り組みが求められている。下記に代表的な支援制度を整理する。
子どもの貧困支援制度一覧(2025年現在)
分野 | 支援名 | 内容 | 実施主体 |
---|---|---|---|
経済的支援 | 児童扶養手当 | ひとり親家庭に最大月額4万円超を支給 | 国・自治体 |
就学援助制度 | 給食費や学用品費を援助 | 自治体 | |
子どもの「食」応援クーポン | 月額5000円相当の食事支援 | NPO(フローレンス・CFC) | |
子ども宅食 | 食料品を定期配送し、見守りも | 自治体・NPO | |
学習支援 | 無料学習支援教室 | 放課後の個別指導など | 自治体・地域団体 |
給付型奨学金 | 返済不要の進学支援 | 国・自治体・財団 | |
高校生等奨学給付金 | 高校在学中に給付される年数万円 | 文部科学省・自治体 | |
居場所づくり | 子ども食堂 | 無料~低額の食事と交流の場 | NPO・自治会 |
第三の居場所 | 放課後の安全な居場所の提供 | 日本財団・自治体 | |
保護者支援 | 自立支援教育訓練給付金 | 再就職に向けた資格取得支援 | 自治体 |
公営住宅の優先入居 | 子育て世帯への住宅支援 | 自治体 |
制度の周知と利用促進が今後の課題
これらの制度は存在していても、「知られていない」「使い方が分からない」「手続きが煩雑」といった理由で活用されていないケースが多い。とりわけ、必要とする家庭ほど行政や社会資源から遠ざかっていることもある。
制度を必要とするすべての家庭に届けるためには、学校・地域・医療機関・NPOが連携したアウトリーチ(積極的支援)が不可欠である。
申込・問い合わせ先(子どもの『食』応援クーポン)
申請はオンラインで受付中。スマートフォンやインターネット環境があれば全国どこからでも申請できる。申し込みに関する詳細やQ&Aは、以下の公式ページで確認できる。
▶ 申し込みページはこちら(Eduwell Journal)