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「食料供給困難事態対策法」とは? 配給の可能性と国民に求められる備え

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食料供給困難事態対策法
DALL-Eで作成

気候変動、感染症、国際紛争――私たちの食卓を揺るがすリスクは、もはや遠い世界の出来事ではない。
2025年4月、日本政府は「食料供給困難事態対策法」を施行し、異常事態に備える新たな法制度を導入した。供給の兆候段階から対策を講じ、国民生活への混乱を最小限に抑える仕組みとはどのようなものか。法の概要、対象となる事業者、国民生活への影響、そして今からできる備えについて詳しく解説する。

4月から新法がスタート 食卓を守るための“有事対応”とは

2025年4月1日、「食料供給困難事態対策法」が施行された。気候変動や国際情勢の不安定化、感染症の流行といったグローバルリスクが、私たちの食生活に直接影響する時代を迎える中で、政府が主導して備えるための新たな制度である。

新型コロナウイルスによる物流混乱、ウクライナ危機による小麦価格の高騰、国内農業の高齢化と後継者不足といった複合的な課題を背景に、日本の食料安全保障への懸念が高まっていた。こうした中、国民生活と経済活動に対する影響を最小限に抑えることを目的に、本法は制定された。

 

「食料供給困難事態対策法」とは、つまりどんな法律なのか

「食料供給困難事態対策法」とは、
異常気象や国際情勢の不安定化などによって、日本国内で食料の供給が大きく減少する“非常時”に備えるための法律である。

平時から供給リスクの兆候を政府が把握し、段階的に対策を講じる体制を整えることで、食料の最低限の安定供給と社会秩序の維持を目指す。

この法律の目的

  • 国民の命と生活を守るため、最低限の食料供給を確保すること
  • 経済や社会の混乱を未然に防ぐこと

どんな時に発動される?

  • 大規模な自然災害(例:干ばつ、台風)
  • 家畜・作物の疫病発生
  • 国際紛争や輸出規制による輸入の停滞
  • 世界的な感染症流行
    など、「食料供給に重大な支障が出る可能性」があると判断されたとき

2段階でリスクに対応

段階内容対応例
食料供給困難兆候供給が減る兆しが見られた段階対策本部の設置、出荷・輸入の促進、情報提供
食料供給困難事態実際に生活や経済に支障が出始めた段階配給、販売制限、供給量の割当など強力な措置

生産者や事業者への影響と対応

この法律の施行により、生産者や事業者には新たな対応が求められることになる。例えば、特定の食料の供給が不足するおそれがある場合、政府は生産や出荷、輸入の促進などを要請する方針である。

要請に応じてもなお供給確保が困難な場合には、政府は一定規模以上の事業者(生産者)に対し、供給確保のための計画の作成・届け出を指示することができる。この計画は実現可能な範囲で作成され、仮に実行できなかった場合でも罰則は科されない。

ただし、計画の提出そのものを怠った場合には、20万円以下の罰金が科される可能性がある。政府が供給可能な量を正確に把握し、適切な対策を講じるために必要な措置とされている。

 

国民生活への影響と備え

この法律は、国民生活に直接的な影響を及ぼす可能性がある。供給不足が深刻化した場合には、政府による出荷や販売の調整、輸入の促進、生産支援などの措置が講じられる。さらに、最低限必要な食料の供給が確保されないおそれがあると判断される場合には、特定の食料について配給や割り当てが行われる可能性もある。

ただし、こうした措置はあくまで「最低限の供給を確保する」ためのものであり、過度な制限を課すものではない。国民としては、政府からの正確な情報を冷静に受け止め、必要以上の買い占めを避けることが求められる。

また、家庭でも日頃からの備えが重要とされる。非常時に備えて保存食や日用品を一定量備蓄し、消費と補充を繰り返す「ローリングストック」の実践が推奨されている。

 

制度導入の背景と課題意識

この法律の背景には、国内外における食料供給の不安定化がある。日本は食料自給率が低く、多くの食料やその原材料を輸入に依存している。気候変動による生産量の減少、国際物流の混乱、さらには農業従事者の減少といった構造的課題が、食料安全保障に影を落としてきた。

実際、2022年以降のウクライナ危機では、世界的な穀物価格の高騰が国内のパンやパスタなどの価格にも波及。新型コロナウイルス流行時には、一部品目で供給が追いつかず、消費者の混乱を招いた。こうした事態の再発を防ぐには、国としての備えと民間の協力が不可欠である。

 

制度の実効性を高めるには 国民一人ひとりの理解と協力が鍵に

「食料供給困難事態対策法」は、国家が主導して危機に対応する枠組みを明文化した法律である。供給リスクを事前に察知し、社会的混乱を未然に防ぐことを目的とする一方で、その効果は政府だけでなく事業者、国民全体の協力によって左右される。

今後の運用においては、情報の透明性や迅速な対応に加え、国民の正しい理解と自助努力が極めて重要となる。家庭での備えや地域の助け合いを通じて、食の安心を守る意識を共有することが、この法律の真価を引き出す道である。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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