
花粉症の“根治”をめざす新たな治療法として注目される「舌下免疫療法」。毎日1錠、舌の下で薬を溶かすだけという手軽さから、子どもでも始めやすい点が大きな特長だ。保険適用により月々の費用は約2,000円前後と続けやすく、治療は全国の耳鼻咽喉科などで受けることができる。この記事では、具体的な費用や治療期間、安全性、そして治療機関の選び方までを詳しく解説する。
自宅でできる「根治療法」が選ばれる時代へ
春先に多くの人を悩ませるスギ花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎。これまでの治療は対症療法が中心だったが、近年は“根本から体質を変える”治療法として「舌下免疫療法」が注目されている。毎日1錠、舌の下に薬を置くだけという手軽さに加え、5歳以上の子どもから大人まで安全に受けられることが特徴だ。
子どもにとっては眠気などの副作用が少なく、学業や生活への影響が出にくい点でも支持が広がっている。
治療薬は保険適用 月2,000円前後で継続可能
舌下免疫療法は健康保険の適用対象であり、治療薬にはスギ花粉症には「シダキュア」、ダニアレルギーには「ミティキュア」が処方される。治療は毎日の継続が必要で、効果を実感するまでに3年から5年程度の服用が推奨される。
三重県四日市市の「足立耳鼻咽喉科」などによると、治療費の目安は以下の通りとなっている(自己負担3割の場合、診察料・処方料込み)。
《シダキュア(スギ花粉症)》
- 初回(1週間分):約1,530円
- 2回目(2週間分):約1,200~1,300円
- 3回目以降(4週間分):約1,800~1,900円
《ミティキュア(ダニアレルギー)》
- 初回(1週間分):約1,550円
- 2回目(2週間分):約1,400~1,500円
- 3回目以降(4週間分):約2,300~2,400円
このように月平均では約2,000円前後で治療が継続できる。1年間の薬剤費としては、シダキュアが約23,540円、ミティキュアが約29,880円となっている(hakatamichi.com調べ)。
また、地方自治体によっては子ども医療費助成制度が利用可能で、実質負担がゼロとなるケースもある。受診の際は自治体の助成制度を事前に確認しておくことが望ましい。
治療は全国の耳鼻咽喉科で可能 初回は医療機関で観察
舌下免疫療法は全国の耳鼻咽喉科やアレルギー科で受診可能であり、治療開始前にはアレルゲンの特定と初回服用の安全確認が行われる。初回のみ、医療機関内で「シダキュア」または「ミティキュア」を服用し、約30分間、副作用の有無を医師が確認する。問題がなければ、2回目以降は自宅で服用を継続できる。
治療中に稀に起こる副作用として、のどの刺激感や口内のかゆみが挙げられるが、ほとんどの場合は一過性で自然に治まるとされている。重篤な副作用であるアナフィラキシーは極めてまれで、国内での報告件数も非常に少ない。
子どもへの導入が進む理由とは
舌下免疫療法が子どもに推奨される最大の理由は、安全性と利便性にある。従来の皮下免疫療法(注射治療)に比べ、痛みや通院の負担が少なく、薬の服用も“ラムネのような錠剤”を舌の下に置くのみ。味やにおいも少なく、小児にも受け入れやすい設計となっている。
また、早期に治療を始めることで、免疫の過敏な反応が抑えられ、成長後の症状悪化を防ぐ効果も報告されている。特に妊娠や授乳といった薬の制限がある将来を見据えた場合、若年時の体質改善には長期的な価値がある。
家庭で続けられる「治療の習慣化」が鍵に
服用は1日1回、朝の起床直後などに行うのが一般的である。朝のルーティンに組み込むことで飲み忘れを防ぎやすく、「トイレのドアに薬のシールを貼る」「目覚まし時計と一緒に薬を置く」といった工夫が効果的とされる。
忙しい子育て世代でも無理なく続けられる仕組みが整っており、今後はさらに治療人口が増加すると見られている。
花粉症の“完治”を見据えた選択肢として
厚生労働省の調査によると、日本人のスギ花粉症有病率は2023年時点で38.8%に達し、子どもを含む若年層での急増が指摘されている。こうした現状において、舌下免疫療法は、単なる「症状のやり過ごし」から「体質そのものを変える治療」へと、発想の転換を促している。
治療費も保険適用内で継続しやすく、かつ副作用が少ないという点で、家族全体で花粉症と向き合う新たな選択肢となっている。