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「そんな制度あるなら早く言ってよ…」雇用保険の超基本、人生に直結するのに知られていない 雇用保険の“本当の価値”とは?

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雇用保険制度の超基本
DALL-Eで作成

これまで「正社員向け」と思われがちだった雇用保険制度が、大きく変わろうとしている。2025年4月1日から施行される雇用保険法の改正により、パートやアルバイトとして働く人にもより手厚い支援が届くようになる。自己都合退職でも最短1カ月で失業手当が受け取れるようになり、スキルアップや学び直しを後押しする給付制度も拡充。知らないと損をするこの制度のポイントを、具体的なシミュレーションを交えて詳しく解説する。

 

雇用保険とは?制度の概要と加入条件

2025年4月1日、雇用保険法の大幅な改正が施行される。パートタイムやアルバイトとして働く人々にとっても影響の大きい内容だが、同時期に話題となっている年金制度改正の陰に隠れ、十分に報じられていない。だが、今改正は、「雇用保険」がすべての働く人の人生設計に密接に関わる重要制度であることを再認識させるものとなっている。

雇用保険とは、労働者が失業した際や、スキルアップのための訓練を受ける際に経済的な支援を行う公的保険制度である。事業主と労働者の双方が保険料を負担し、一定の条件を満たすことで、失業手当(基本手当)や教育訓練給付などを受けることができる。

加入条件は、正社員に限らず、以下の3つを満たせばパートやアルバイトも対象となる。

  1. 所定労働時間が週20時間以上
  2. 31日以上の雇用見込みがある
  3. 学生でない

2025年度の保険料率では、たとえば月収12万円のパートであれば、自己負担は月額約660円。微々たる負担に思えるが、給付を受ける場面では大きな金銭的支えとなる。

 

自己都合退職でも「最短1カ月」で給付開始へ

これまで、自己都合による退職者が失業手当を受け取るには、ハローワークでの求職申込みから7日間の待機期間に加え、原則2カ月間の「給付制限期間」が設けられていた。今回の改正により、この制限期間が1カ月に短縮される。

この見直しは、退職から再就職までのブランクを短縮し、生活の不安を軽減する意図がある。例えば、3月末の退職を1日遅らせて4月1日とすれば、失業手当の支給開始も大幅に早まる可能性がある。

加えて、ハローワークを通じて公共職業訓練を受けた場合は、この給付制限が解除され、すぐに手当の受給が可能となる。また、訓練期間中に本来の給付日数が終了しても、講座修了まで支給が継続される点も見逃せない。

 

教育訓練給付制度の拡充と新設「教育訓練休暇給付金」

学び直しを後押しする制度も強化された。2024年10月からは、厚生労働大臣指定の講座を受講するために休暇を取得した場合、失業手当に相当する金額が支給される「教育訓練休暇給付金」が新設される。

また、2023年10月には、在職中に対象講座を受講する際に受け取れる「教育訓練給付金」の給付率が引き上げられた。これにより、子育てを終えた主婦や定年後の再チャレンジを目指す高年齢者にとって、キャリア再構築の選択肢が現実味を増す。

実際にどれくらいもらえる?パート主婦のシミュレーション

ケース年齢勤務先時給勤務時間勤続年数基本手当日額給付日数受給総額
A子さん50歳飲食店1,200円1日5時間×週4日4年2,560円90日約23万円
B子さん60歳スーパー1,500円1日4時間×週5日12年3,200円120日約38.4万円
C美さん63歳私立学校事務2,000円1日5時間×週5日20年4,789円150日約71.8万円

65歳定年退職は「1日の違い」で50万円の差も

退職日が65歳の誕生日またはその前日になると、通常の失業給付ではなく「高年齢求職者給付金」の対象となる。こちらの給付日数は50日と少なく、誕生日の“前々日”までに退職することで、最大150日分の給付を受けられる可能性がある。

以下の表は、退職日によってどれほど受給額に差が出るかを示したものである。

ケース月収退職日給付種別給付日数受給総額差額
D男さん40万円誕生日の前々日まで失業給付150日(例)約89.9万円
D男さん40万円誕生日以降高年齢求職者給付金50日約33万円約56万円差
E太さん50万円誕生日の前々日まで失業給付150日(例)約115万円
E太さん50万円誕生日以降高年齢求職者給付金50日約39万円約76万円差

日本の法律では、年齢の加算は誕生日の前日に行われる。このため、65歳の誕生日「前々日」までに退職日を設定することが、満額の失業給付を受けるうえでの重要なポイントとなる。

制度を知らなければ「取りこぼす」リスクも

制度の利用は申請ベースであるため、知識がなければ1円も受け取ることができない。特にハローワークは「再就職の場所」とのイメージが強く、退職直後に訪れることに抵抗感を持つ人も少なくない。しかし、失業給付は老後の生活資金にも直結する制度である。

社会保険労務士でブレイン社会保険労務士法人の北村庄吾氏は「自ら制度を理解し、賢く使いこなすことで、人生の転機や不安な時期に大きな安心を得られます」と語る。

 

雇用保険は「働く人のセーフティネット」

雇用保険は、失業手当だけではなく、教育訓練や再就職支援といった多様な制度を含む、働く人のための包括的なセーフティネットである。正社員はもちろん、短時間労働者にとっても、将来を見据えたライフプラン設計において、活用価値の高い制度だ。

2025年4月の改正を機に、いま一度、自身が制度の対象かどうか、どのような支援が受けられるのかを確認し、取りこぼしのない活用を心がけたい。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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