ウォール・ストリート・ジャーナルとCNNの報道によると、CIA(米国の中央情報局)の全職員に早期退職勧奨策を提示した。トランプ政権の「小さな政府」方針の一環であり、情報機関を含む連邦職員の整理が進んでいることがわかった。
CIAの全職員に退職勧奨策を提示
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とCNNによると、2月4日、CIAの全職員を対象に早期退職を促す通知を発した。このプログラムに応じた場合、職員は約8カ月分の給与を受け取ることができる。CIAに採用予定だった求職者の内定を凍結し、一部の採用を取り消す方針であることも報じている。
CIAの広報担当者は、「この措置は、CIA職員が政権の国家安全保障の優先事項に適応できるようにするための包括的な戦略の一環である」とコメントした。しかし、具体的にどの職種の職員がこの勧奨の対象となるのかは明らかにされていない。
トランプ政権の政府改革と人員整理
トランプ政権は、連邦政府の人員削減を積極的に推進している。ホワイトハウスは先週、全米の200万人の連邦職員に対し、今週中に退職を申し出れば、9月30日まで給与と福利厚生を受け取る機会を提供すると発表した。WSJによれば、政府は「プロジェクト2025」と呼ばれる保守派の政策綱領を掲げ、広範な行政機関の再編を目指している。
また、トランプ政権はこれまでに数百人の公務員を解雇または閑職に配置換えし、官僚機構の縮小と忠誠心の高い人材の登用を進めてきた。CIAの早期退職勧奨策も、この流れの一環とみられる。
影響と懸念 国家安全保障への影響は?
CIAの人員削減は、国家安全保障にどのような影響を及ぼすのか。
政府関係者の間では、情報機関が適切な人材を維持できるのかという懸念が広がっている。ある関係者はCNNに対し、「特定の作戦や専門分野の職員が除外される可能性がある」と指摘した。
一方で、CIAのラトクリフ長官は、「新たなCIAの戦略目標に適応できない人材は、新たな道を探すべきだ」と述べている。WSJの報道によれば、CIAの新たな戦略には、麻薬カルテルの取り締まり、トランプ政権の貿易戦争、中国の弱体化が含まれるとされる。
労働組合の反発と法的措置
この退職勧奨策に対し、連邦職員の労働組合は強く反発している。労組は、「政府職員に対するこのような大規模な整理は不当であり、労働環境の安定性を損なう」として、法的措置を検討している。
さらに、トランプ政権の一部の国家安全保障関係者は、近年のCIAが分析部門に偏重し、秘密情報収集や covert operations(秘密作戦)を担う「作戦部(Directorate of Operations)」の機能が低下していると主張している。今回の措置がCIAの役割を再定義する一環なのかどうか、今後の動向が注目される。
今後の見通し
CIAの全職員を対象とした退職勧奨策がどの程度の職員に受け入れられるかは、現時点では不透明である。しかし、今回の動きは、連邦政府全体に波及する可能性がある。WSJによると、期限後にはさらに大規模な人員削減が行われる可能性があると報じている。
トランプ政権が推進する「小さな政府」の方針が、今後どこまで拡大するのか、またそれが国家安全保障や行政の効率にどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視する必要がある。
【参照】
・CIA Offers Buyout to Entire Workforce as Part of Trump Makeover(WSJ)
・CIA sends ‘buyout’ offers to entire workforce(CNN)
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