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U.S.スチールCEO、バイデン政権の日本製鉄による買収阻止決定に「政治的腐敗」と強く非難

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USSのCEOの怒りのプレスリリース
USSのプレスリリースより

2025年1月3日、バイデン米大統領は、日本製鉄によるU.S.スチール(以下、USS)の買収を阻止する決定を下した。これを受け、USSは同日、3本のリリースを公開。CEOの強い非難声明や、今後の法的措置を示唆する共同声明などが発表された。この決定は、米国の鉄鋼業界、そして日米関係に大きな波紋を広げそうだ。

バリットCEOの怒りの声明全文

デビッド・B・バリットUSS社長兼CEOは、以下の声明を発表した。

「バイデン大統領による本日の決定は恥ずべきものであり、腐敗している。大統領は、自らの支持基盤である労働組合の幹部に政治的見返りを与えるために、この決定を下した。しかし、その一方で、我々の会社の将来、従業員、そして国家安全保障を損なうこととなった。

大統領は、日本という重要な経済的・安全保障上の同盟国を侮辱し、米国の競争力を危機に晒した。その結果、中国共産党の指導者たちは北京で歓喜しているだろう。また、我々の側と対話を行うことすらなく、事実確認を怠ったのは遺憾である。

我々の従業員や地域社会は、このような扱いを受けるべきではない。米国にとって最良の取引を引き出し、それを実現するために努力する大統領が必要だったのだ。

しかし、誤解してはならない。この投資こそが、U.S.スチールの輝かしい未来、従業員、地域社会、そして米国全体の未来を保証するものである。我々は、バイデン大統領の政治的腐敗に対して、徹底的に戦う決意を固めている。」

バリットCEOの声明からは、今回の決定に対する強い憤りと、バイデン大統領への不信感が露わになっている。「政治的腐敗」「国家安全保障の損失」といった強い言葉からは、今回の決定が政治的思惑に基づくものであり、米国の国益を損なうものだとするUSS側の主張が読み取れる。企業の開示でここまで強い非難も珍しいものだが、USSにとってそれだけ深刻な事態に陥ったことが伺える。

日米企業の共同声明:法的措置を示唆

もう一つのリリースは日本製鉄とUSSの共同声明で、バイデン大統領の決定に「強い失望」を表明し、「法的権利を守るために適切な措置を講じる」と述べたもの。

声明では、決定はCFIUS(米国外国投資委員会)を規定する法令および適正手続きを逸脱するものであり、大統領の政治的アジェンダを推し進めるために操作された結果だと主張。国家安全保障上の懸念を裏付ける証拠は一切示されておらず、政治的判断であることは明白だと批判。

買収計画は、ペンシルベニア州やインディアナ州など米国の鉄鋼業が根付く地域を再活性化し、米国の鉄鋼労働者に雇用の安定をもたらすものだった。また、米国の鉄鋼サプライチェーンを強化し、中国との競争力を高め、国家安全保障に寄与する計画でもあった。日本製鉄はUSSのモンバレー工場に最低でも10億ドル、ゲーリー工場に約3億ドルを投資する計画を立てており、これまでに約27億ドルの投資を約束していた。

しかし、今回の取引阻止により、老朽化したUSSの施設に対する数十億ドル規模の投資が否定され、何千もの高賃金の雇用が危機にさらされることとなった。

共同声明では、日本製鉄がCFIUSの懸念に対処するため、U.S.スチールの取締役会の過半数を米国市民で構成する、CEOおよびCFOを米国市民が務める、生産および雇用を米国外に移転しない、ペンシルベニア州などの施設での生産能力を10年間維持する、CFIUSへの定期的な報告を行う、CFIUSに取締役会へのオブザーバー参加を許可する、といった複数の緩和策を自主的に提案してきたにもかかわらず、CFIUSはこれらの提案を無視し続けたと主張している。

U.S.スチールの地域貢献計画:トレーニングセンター構想

USSは、取引完了後、西ペンシルベニア州で労働力開発を支援するため、数百万ドルの助成金を活用して労働力トレーニングセンターを設立する計画も発表していた。このセンターは、地元の大学や職業訓練校と提携し、次世代の労働者を育成することを目指すものだった。この計画は、日本製鉄からの投資があって初めて実現可能なものだったと開示している。

中国の思惑、漁夫の利を得る可能性

今回の買収阻止は、米国の鉄鋼業界の競争力低下につながり、結果として中国が漁夫の利を得る可能性がある。米国は、安全保障上重要な産業における中国の影響力を排除しようと試みているが、今回の決定は、その努力を阻害する可能性がある。

日本は、米国にとって重要な同盟国である。今回の決定は、同盟国からの投資を阻害するシグナルとなり、米国の経済安全保障に悪影響を及ぼす可能性がある。この買収阻止劇は、米中対立の激化、そして世界経済の不確実性をさらに高めるものとなるだろう。

【日本製鉄とUSSのその他の報道はこちらから】

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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