企業における労使コミュニケーションの円滑化に、社会保険労務士(社労士)が大きく貢献している実態が、12月16日、全国社会保険労務士会連合会が実施したWeb調査で明らかになった。
調査結果からは、社労士が労使協定の締結や人事制度の作成に深く関与し、企業と労働者の双方にとってバランスの取れたアドバイスを提供している様子が浮かび上がった。
社労士関与先企業における労使コミュニケーションに関するWeb調査の概要
今回の調査は、社労士が関与先企業の労使コミュニケーションに与える影響を把握することを目的として、2024年7月から8月にかけて実施された。Web回答形式で、社労士380人、社労士の関与先企業144社から回答を得た。
社労士の活動実態
回答した社労士の8割以上が、月に1回以上のペースで関与先企業から相談を受けている。アドバイスや助言を行う際のスタンスとしては、84%が「会社と労働者双方のバランスをとったアドバイス、助言を行っている」と回答。
約6割の社労士は一般従業員との接触機会があり、「従業員からの相談の申し入れ」(65.1%)や「個別面談への同席」(40.6%)といった形で、従業員の声を直接聞いている実態も明らかになった。
労使協定締結への関与
回答者の約9割が「労使協定内容に関する助言、作成業務」、約8割が「労使協定の届出業務」を行っていると回答。さらに、「労使協定締結の労働者側当事者への説明」についても26.6%が実施していることが分かった。
人事制度策定における社労士の関与
人事制度の作成・見直しにおいても、社労士は重要な役割を担っている。企業からの依頼のタイミングは、「作成・見直しの必要性が発生した段階」が65%と最も多く、初期段階から関与するケースが多いことが分かった。
人事制度策定における従業員への事前意見収集についても、社労士の関与が影響を与えている。社労士に関与してもらった企業では、73%が何らかの形で意見収集を実施していたのに対し、関与してもらっていない企業では43%にとどまり、実施率に大きな差が見られた。
意見収集の方法別に見ると、「労働組合に意見を求める」「従業員アンケート」「従業員面談」を実施した場合、「従業員側からの意見を制度に一部反映させた」割合が高かった。一方、「過半数代表者に意見を求めた」場合は、「制度に影響する意見はなかった」割合が比較的高くなっている。
企業側の評価
企業が感じている社労士のスタンスは、「会社と労働者双方のバランスをとったアドバイス、助言を行っている」が85%を占め、社労士自身の回答と一致する結果となった。社労士への期待としては、「法制度等の知識に基づく助言」(89%)が最も多く、次いで「他社の情報などに基づくアドバイス」(49%)が挙げられた。
まとめ
今回の調査結果から、社労士が労使コミュニケーションの円滑化に大きく貢献していることが改めて確認された。労使協定の締結や人事制度の策定において、社労士は企業と労働者の双方に配慮したアドバイスを提供し、円滑なコミュニケーションを促進している。今後、労働基準関係法制の改正議論が進む中で、社労士の役割はさらに重要性を増していくと考えられる。