
ハンバーガーチェーン「ロッテリア」が2026年3月までに国内全店を閉店し、新ブランド「ゼッテリア」へ転換される。半世紀に及ぶ歩み、急減した店舗数、ゼンショー傘下入り後の戦略、そして広がる惜別の声を検証する。
ブランド消滅という決断 ロッテリア全店閉店へ
ハンバーガーチェーン「ロッテリア」が、その歴史に幕を下ろす。運営するゼンショーホールディングスは、ロッテリアの国内全店舗を2026年3月までに閉店し、新業態「ゼッテリア」へ順次切り替える方針を示した。
1972年の創業から54年。日本独自のハンバーガーチェーンとして一定の地位を築いてきたブランドは、グループ再編という経営判断のもとで看板を降ろす。
外食チェーンのブランド消滅は珍しい話ではないが、ロッテリアの場合、その名前が長年にわたり生活風景に溶け込んでいた点で影響は小さくない。駅前、ショッピングセンター、ロードサイドと全国各地に店舗を構え、世代を超えて利用されてきた存在だった。
国産バーガーとして歩んだ54年 ロッテリアの存在感
ロッテリアは、日本発のハンバーガーチェーンとして独自の市場ポジションを築いてきた。1972年の創業当時、日本のハンバーガー市場は外資系ブランドが主導しており、味付けや商品構成も欧米基準が色濃かった。
そうした中でロッテリアは、日本人の味覚に合わせた商品設計を前面に押し出し、差別化を図ってきた。
代表例が「エビバーガー」である。魚介を主役に据えたバーガーは当時としては異色で、肉中心だった市場構造に新たな選択肢を提示した。「てりやきバーガー」「チキン竜田バーガー」「リブサンド ポーク」など、甘辛い和風ソースや日本的食材を積極的に取り入れた商品群も、ロッテリアの特徴を明確にした。
これらは単なるメニュー開発にとどまらず、「ハンバーガーは洋食」という固定観念を和らげ、日本の外食文化に適応させる試みだった。
価格戦略も中庸だった。極端な低価格競争には踏み込まず、一定の品質と価格のバランスを重視した構成は、学生からファミリー層まで幅広い利用を想定したものだった。出店立地も駅前や商業施設、住宅地周辺が多く、日常消費を前提とした設計が一貫していた。
この点で、全国一律の大量販売モデルを強めてきたマクドナルドとは性格を異にする。
マクドナルドが標準化とスケールを武器に市場を拡大してきたのに対し、ロッテリアは商品構成や売り方に日本的解釈を残し、ローカル市場への適応を優先してきた。その結果、爆発的な店舗拡大には至らなかったものの、国産バーガーとしての独自性は維持されてきた。
一方で、この路線は市場環境の変化に対して脆弱でもあった。健康志向の高まり、カフェ需要の拡大、SNSを意識した商品開発など、新たな価値軸への対応は後手に回り、結果としてブランド単体での成長余地は限界を迎えていた。
ロッテリアの54年は、日本流ハンバーガーの可能性を示すと同時に、外食産業における国産ブランドの難しさを体現した歩みでもあった。
ゼンショー傘下入り後に進んだ急速な縮小
状況が大きく動いたのは2023年である。ロッテリアは、「すき家」などを展開するゼンショーグループに買収され、同年からグループ傘下での営業に移行した。
しかし、その後の店舗数の推移は厳しいものだった。2023年1月時点で358店舗あった国内店舗は、2025年6月時点で222店舗まで減少。約2年半で4割弱が姿を消した計算となる。
背景には、原材料価格の高騰、人件費の上昇、ハンバーガー市場全体の競争激化がある。加えて、既存ブランドを維持したままの立て直しが難しいと判断された可能性もある。閉店が相次ぐ一方で、ゼンショーは単純撤退ではなく「業態転換」という形で次の一手を打ってきた。
業態転換の中核「ゼッテリア」 効率化と刷新、そして価格戦略の再設計
ロッテリアに代わる新たな中核業態として位置づけられているのが「ゼッテリア」である。これは単なる店名変更ではなく、ゼンショーグループが進める事業再構築の象徴と言える。
最大の狙いは、ブランド統合による原材料の共同仕入れや、店舗運営の標準化によってコスト構造を抜本的に見直す点にある。旧ロッテリア店舗を居抜きで転換する手法も、初期投資を抑えながら再編を進めるための現実的な選択だった。
その上でゼッテリアは、ロッテリアとは異なる価値軸を明確に打ち出している。価格帯自体は大幅に引き上げられているわけではないが、設定の意味合いは明確に変えられた。
ロッテリアが単品400円前後、セット700円前後という「日常消費の中庸価格」を軸にしてきたのに対し、ゼッテリアでは単品400円台後半から、セットで800円前後が中心となる。差額は100円程度に収まるが、体感的には一段上の位置づけだ。
重要なのは、この価格が単なる値上げではない点である。ゼッテリアでは、バーガーそのものの見せ方や盛り付け、ポテトの食感、店内の内装や照明といった要素を組み合わせ、「少し高くても納得できる」体験型の業態へと転換している。
急いで食事を済ませるファストフードではなく、軽食と休憩を兼ねたカフェ的利用を想定することで、価格に対する心理的抵抗を下げる設計となっている。
この価格戦略は、安売り競争から距離を取る意図とも重なる。原材料高騰や人件費上昇が続く中、従来の中庸価格帯は最も利益を圧迫しやすいゾーンだった。ゼンショーは、ロッテリアが抱えていたこの構造的な弱点を、業態ごと作り替えることで回避しようとしている。
ゼッテリアはすでに全国70店舗超を展開しており、ロッテリアの定番メニューを一部継承しながらも、価格と体験の再定義を進めている。今回の業態転換は、ブランドを延命させるための応急処置ではなく、採算性と市場適応力を同時に高めるための再設計と位置づけられる。
惜別の声と合理化の現実 残るのは記憶かブランドか
ロッテリアの全店閉店を受け、SNSでは惜しむ声が相次いだ。
「学生時代の思い出」「初めて食べたハンバーガーがロッテリアだった」といった投稿が並び、ブランドが個人の記憶と強く結びついていたことが浮かび上がる。
一方で、「このまま続けて赤字を積み上げるより、形を変えて残す方が現実的だ」といった冷静な見方も少なくない。
外食産業は今、感情だけでは維持できない局面にある。効率化と再編は避けられず、その過程で長年親しまれた名前が消えていく現実も突きつけられている。
ロッテリアの54年は終わるが、その味や記憶がゼッテリアの中でどこまで生き続けるのか。今回の転換は、外食産業における「ブランドとは何か」を改めて問いかけている。



