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伊藤詩織監督『Black Box Diaries』公開 「一線を越えた」表現と元弁護団からの批判、未解決の法的懸念

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伊藤詩織氏のBlack Box Diaries
伊藤詩織氏のBlack Box Diaries(株式会社スターサンズのHPより)

ジャーナリストの伊藤詩織氏(35)が初監督を務めたドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』が12月12日、日本国内での公開初日を迎えた。都内で行われた舞台挨拶で伊藤氏は、自身の性被害体験を映像化することへの葛藤と決意を語る一方、元弁護団やジャーナリストからは、映像の無断使用問題に加え、裁判で明らかになった「不都合な事実」が映画から排除されている点について厳しい指摘が相次いでいる。

 

「ジャーナリストとしてではなく、私自身として」

12日にT・ジョイPRINCE品川で行われた舞台挨拶で、伊藤氏は「日本へのラブレターと思って10年かけて作った」と笑顔を見せた。本作は2015年に元テレビ局員から受けた性被害と、その後の真相究明の過程を6年にわたり記録したもので、米サンダンス映画祭での上映やアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門のノミネート(ショートリスト選出)など、国際的に高い評価を受けている。

制作の背景について伊藤氏は「ジャーナリストとしては作っていない。一線を越えて、私自身がストーリーテリング(物語の語り手)をしている」と説明。「自分のストーリーを語ることの尊さを届けたい」と、客観報道の枠を超えた当事者発信の意義を強調した。

 

焦点となる防犯カメラ映像と「CG再構成」

本作の公開を巡っては、伊藤氏の民事裁判を担当した元弁護団の西廣陽子弁護士らが、関係者のプライバシー侵害や誓約違反について繰り返し懸念を表明していた。

これに対し伊藤氏は公開初日、公式サイトおよび舞台挨拶で説明を行った。批判を受けていた防犯カメラ映像については「オリジナル版から、プライバシー保護のために外観・内装などをCGで差し替えた『再構成映像』である」と明かした。オリジナルの映像ではないため、ホテル側と交わした「裁判以外では使用しない」という誓約には抵触しないとの見解を示している。

 

小川たまか氏が指摘する「映画で描かれなかった不利な証拠」

こうした制作手法上の問題に加え、ライターの小川たまか氏は、映画の内容そのものが裁判の事実関係から乖離している点を詳細に記事で指摘している。

小川氏によれば、映画では「決定的な証拠があったのに検察が不当に不起訴にした」という印象を観客に与える構成になっているが、実際には伊藤氏側に「致命的と言ってもいい不利な証拠」が存在し、それが司法判断を難しくさせた側面が完全に捨象されているという。

小川氏が挙げた具体的な「不利な証拠」は以下の通りだ。

 

産婦人科カルテとの矛盾
伊藤氏は被害時刻を「早朝5時頃」と証言していたが、事件後にアフターピル処方のために受診した産婦人科のカルテには、性行為の時間が「AM2:00〜3:00」と記載されていた。これは被告側の「2〜3時頃に同意の上で行為があった」とする主張と一致しており、裁判では伊藤氏の記憶や証言の信用性を揺るがす大きな要因となった。

当日の飲酒状況と行動
映画では薬物使用(レイプドラッグ)の可能性が強く示唆されるが、事件直前に訪れた串カツ店や鮨屋では、伊藤氏が手酌で積極的に飲酒していたことや、店内で他の客に話しかけたり素足で歩いたりする伊藤氏に対し、被告側が呆れて先に帰ろうとしていたことなどが証言されている。これらは「少量の酒で意識を失った」とする伊藤氏の主張とは食い違う事実として裁判で扱われた。

レイプドラッグの認定
伊藤氏は薬物を使われた可能性を主張し続けているが、裁判ではレイプドラッグの使用は認められておらず、この点に関する名誉毀損裁判では伊藤氏側が敗訴している。

小川氏は、映画がこれらの「都合の悪い証拠」を一切伏せ、インパクトのある映像や感動的な場面をつなぐことで、検察の判断や背景に政権の関与があるかのようなミスリードを誘っていると批判。「証拠の半分を隠した映画が『真実』と言えるのか」と疑問を呈している。

 

元弁護団「法的な問題は解決していない」

元弁護団の西廣陽子弁護士も公開前日の11日に声明を発表し、伊藤氏側の対応への不信感を露わにしている。「防犯カメラ映像を使わないでほしいという約束が守られなかった」「無断録音が行われた」等の経緯を挙げ、「法的な問題は解決されていない」と指摘。

また、こうした手法が今後の性被害救済における協力関係(ホテルや第三者からの証言協力など)を阻害しかねないと警鐘を鳴らした。

 

伊藤氏は15日に日本外国特派員協会(FCCJ)での会見を予定しており、改めて一連の問題について説明するものとみられる。「個人的な物語」としての表現の自由と、客観的な事実や他者の権利との整合性をめぐり、議論は今後も続きそうだ。

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ライター:

女性向け雑誌にて取材・執筆及び編集に従事。独立後は、ライフスタイルやファッションを中心に、実体験や取材をもとにリアルな視点でトレンドを発信。読者が日々の生活をより豊かに楽しめるような記事を提供し続けていることがモットー。

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