
第76回NHK紅白歌合戦の出場歌手発表は、祝福と落胆が交錯する一日となった。初出場勢や返り咲き組が大きな話題をさらう一方、今年は例年以上に「選ばれなかった理由」に関心が集まった。タトゥーへの姿勢、旧ジャニーズの動向、そして星野源の不出場――。その背景には、紅白が抱える“見えないルール”が透けて見える。
タトゥーへの慎重姿勢がより鮮明に
NHKが紅白歌手に求める基準は明確にされていないが、今年ほど「タトゥー」が注目された年も珍しい。音楽関係者はこう話す。
「公共放送として、NHKがタトゥーについて慎重であることは以前から知られています。しかし今年は、その姿勢がいっそう際立った印象です」
象徴的なのが、YOASOBIではなく幾田りらの“単独名義”での出場だった。YOASOBIのAyaseは指先から首にかけて広範囲のタトゥーが知られ、昨年の落選時も「タトゥーが影響したのでは」との臆測が飛び交った。同様に、SEKAI NO OWARIのFukaseも今年は選に漏れた。
過去には、安室奈美恵の出演時に「タトゥーが見えていた」と議論を呼んだこともある。アーティストの表現が多様化し、タトゥー文化自体は広がりを見せている。しかし、家族で楽しむ大みそかの番組という性質上、「過度に露出されるタトゥーは慎重に判断される」と見る関係者は多い。
男性アイドル枠で見えた“意外な落選”
男性アイドル枠ではKing&Princeが6度目の出場。旧ジャニーズグループとして3年ぶりに名前が並んだ。一方で、関係者が「最大の意外」と口を揃えたのがtimeleszの落選だ。
Netflixで配信された新メンバーオーディション番組は大きな社会現象となり、音楽番組への出演も増加。世間的な露出は増していただけに「当確」と見られていた。
しかし裏側には、ファン層の複雑な受け止め方がある。
「旧ジャニーズグループは長い下積みを経てデビューするケースが多く、その過程が“推し要素”として根強い。対してtimeleszには、オーディション合格後すぐにスポットライトを浴びたメンバーもいる。大舞台に立つたびに一部からブーイングが起きてしまう現状を、事務所がどう捉えるか。今回の落選は、そうした空気を考慮した判断とも見られています」(芸能関係者)
星野源の不出場が呼び起こした“昨年の禍根”
そして今年、最も大きな反響を呼んだのが星野源の不出場だ。2015年の初出場以来、一度も途切れず紅白の舞台に立ち続けてきた常連。
SNSでは、「あの出来事があったんだから無理もない」「昨年のあれを思い出す」といった声が相次いだ。
昨年、星野はNHKの要望に応える形で映画『地獄でなぜ悪い』の主題歌を弾き語りする予定だった。
しかし、その作品の監督をめぐり性加害疑惑が報じられ、曲の選択が“二次加害になるのでは”との批判が噴出。直前で『ばらばら』へ曲目が変更される異例の事態となった。
迎えた本番では、星野が約10秒の沈黙の後に歌い始め、表情からも緊張が滲んだ。
「今年はアルバムも発表し、国内外のツアーも成功。NHKで冠番組も持つことを考えれば、不出場の理由は見当たりません。だからこそ、昨年の件が本人の決断に影響した可能性は否定できないでしょう」(音楽ライター)
星野は現在、映画『平場の月』の主題歌『いきどまり』が高い評価を受けており、紅白での歌唱を期待したファンからは残念がる声が続いた。
白組が3枠少なかった理由と“嵐待ち”の憶測
今年の出場者一覧で注目されたのが、白組が紅組よりも3枠少なかった点だ。芸能関係者は、次のような見方を示す。
「来春で活動終了が決まっている嵐のための枠では、との憶測が広がっています。活動休止以降、5人そろって音楽番組に出演しておらず、お茶の間からは“紅白でラストステージを”という声が根強い」
ただし、実現した場合は演出面での調整が必要になる。
今年の紅白は、広島出身の有吉弘行と綾瀬はるかが司会という布陣からも「戦後80年」を意識した企画が予想され、長崎県出身の福山雅治とMISIAがトリに濃厚との見方が強い。
「ここに嵐が加われば、番組の構成が大きく変わる可能性がある。福山やMISIAへの説明も必要になり、現場は頭を抱えているという話も耳にします」(同関係者)
“国民的イベント”の裏側で
視聴率が下がりつつあるとはいえ、紅白が抱える重圧や期待は依然として大きい。出場者の選定には、ファンに見えない多数の調整があり、そこに大人の事情が絡む。
だからこそ、毎年発表のたびに驚きと意外性が生まれ、そして議論が尽きないのだろう。



