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「みんなで大家さん」破綻危機──成田27商品遅配、1000人提訴、行政処分、旧統一教会疑惑の泥沼

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みんなで大家さん

「年7%利回り」の美辞麗句に酔いしれ、1560億円もの巨額資金が吸い寄せられた不動産投資「みんなで大家さん」。舞台は成田空港隣接地に建設予定の巨大ホテル・展示場プロジェクトだった。しかし今、約束された配当は次々と途絶え、遅配は27商品に拡大。返金を求めて1000人規模が裁判に突入し、行政処分、ポンジ疑惑、さらには旧統一教会との関係説まで飛び交う。投資家を飲み込む“利回り地獄”の実態とは何か。

 

成田開発は張り子の虎だった

「東京ドーム10個分の土地にホテルや展示場を建設」──そう謳われた成田シリーズは、全国の投資家に夢を見せた。年7%という異例の高利回りを保証するかのようにうたい、出資金はあっという間に1560億円超に膨れ上がった。だが工事は3度延期され、現地はいつまでも更地のまま。夢の計画は現実から遠ざかり、ついに配当が止まった。

7月には成田の9商品で未払いが発生し、8月には偶数月配当予定の9商品も同様に支払われなかった。看板案件の崩壊は、不信の連鎖の始まりにすぎなかった。

9月には鹿児島のバナナ熟成施設や三重のテーマパークなど、成田以外の9商品でも遅配が起きた。奇数月分配の18商品と偶数月分配の成田9商品を合わせると、合計27商品が未払いに。投資家たちは「配当が止まっただけでなく、返金手続きすら進まない」と憤る。

事業者側は「提訴で事業に影響が出ている」と釈明したが、肝心の資金繰りや計画の詳細は一切示さない。説明にならない言い訳が怒りに火を注ぐだけだった。

 

「元本を返せ!」怒号渦巻く法廷

全国の被害者はついに立ち上がった。大阪地裁では出資者5人が6000万円の返還を求めて提訴。東京地裁でも1億円規模の訴訟が起きた。被害対策弁護団によると、相談者はすでに900人超、うち500人が総額47億円をかけて提訴の準備を進めている。

東京弁護士会所属の弁護士のもとにも130件以上の相談が殺到し、44人が個別に7億円超を求めて訴え出た。福岡の50代女性は1600万円を投じたが、解約書類すら届かず「生活資金も不動産売却益も投じた。元本だけでも返してほしい」と訴える。投資家の悲痛な声は、すでに社会問題の様相を呈している。

東京都と大阪府は2024年6月、都市綜研インベストファンドや販売会社に不動産特定共同事業法違反で業務停止処分を下した。契約書に虚偽があり、投資家への説明は著しく不十分。行政が「信頼を裏切った」と認定したのである。

にもかかわらず、事業者は「前向きな事業活動が提訴で阻害された」と責任を外に押しつけた。資金繰り破綻を覆い隠すかのように、解約や譲渡の申し込みを「一時停止」と称して遮断し、出資者の資金を凍結した姿は、まさに末期的である。

 

ポンジ疑惑と「幻の1兆円契約」

「後からの出資で前の配当を払っていたのではないか」──。出資者の間で囁かれるポンジ疑惑は日に日に強まっている。新規商品を次々と投入し、利回りの約束を繰り返すやり方は、典型的な構図と重なる。

さらに飛び出したのは「米国法人ロイズ・キャピタルとの1兆円契約」という荒唐無稽な話。資金調達の裏付けを装ったが、公的証拠はなく、むしろ資金難を糊塗する幻想と化した。壮大な数字で投資家の不安を抑え込もうとした姿は、事業者の追い詰められた実情を露わにする。

 

旧統一教会との関係説が浮上

ここにきて投資家を震撼させているのが、旧統一教会との関係説だ。「幹部が信者だった」「合同結婚式に参加した」「社員は信者で固められていた」──。匿名掲示板やブログにはそうした証言が次々と書き込まれている。

もちろん裏付ける一次資料や公式報道はなく、現時点では疑惑の域を出ない。しかし宗教的共同体を思わせる勧誘手法や、ネットワークによる資金集めの構図が重なり、噂は一層現実味を帯びて広がっている。疑惑を払拭する唯一の方法は、事業者自身が登記情報や役員経歴を開示し、透明性を示すことだろう。

 

司法は投資家を救えるのか

不動産特定共同事業法は事業者に説明義務や財務報告義務を課している。今回の行政処分はその怠慢を理由に下された。今後の裁判では債務不履行や資金流用、計画不履行が争点となるが、匿名組合契約という枠組みは投資家保護に弱く、勝訴しても資金が残っていなければ返還は絶望的だ。

被害を食い止めるには、出資者が勧誘資料や契約書、通知メールを証拠として保全し、早急に法的措置を取る必要がある。行政の規制強化、業界全体の透明性向上も欠かせない。

 

幻の利回りが残したもの

「年7%」の約束は投資家に希望を抱かせた。だが残ったのは27商品の遅配、1000人を超える被害者、行政処分、宗教的疑惑の泥沼だ。生活資金を投じた人々は絶望に沈み、「元本を返せ」と叫ぶしかない。

「みんなで大家さん」は、もはや一企業の失敗ではなく、制度の不備と人々の欲望を突いた社会事件だ。幻の利回りに惑わされた末に残ったのは、壊れた生活と失われた信頼。再び同じ悲劇を繰り返させないために、行政と司法が動き、投資家もまた冷静な眼を持つことが求められている。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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