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Netflix10周年イベント開催 ― 『地面師たち』大根仁監督らが語る現場と次回作

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Netflixは9月4日、日本でのサービス開始10周年を記念した特別イベント「Creator’s Spotlight(クリエイターズ・スポットライト)」を都内で開催した。

登壇者には、ドラマ『地面師たち』の大根仁監督や、『今際の国のアリス』シリーズの佐藤信介監督、11月配信予定の『イクサガミ』の藤井道人監督、さらに『全裸監督』主演の山田孝之らが集結。過去作品の裏話から次回作の展望、さらにはNetflixへの要望まで率直な言葉が飛び交った。

 

Netflix、日本国内登録者1,000万人突破と「民放離れ」

Netflixは2024年前半までに、日本国内の登録者数が1,000万人を突破した。わずか4年で倍増した数字であり、日本語オリジナル作品やアニメへの投資が確実に成果を挙げている。

背景には、若い世代を中心とした「民放離れ」がある。地上波のゴールデンタイムでも1桁台の視聴率が目立つ一方、配信では一気見や好きな時間に視聴できる利便性が支持を集めている。SNS上でも「テレビは見なくなった。面白いのは配信で探す」という声が多く、視聴スタイルの世代間格差が鮮明になりつつある。

民放キー局の関係者は「視聴率が取れるのはスポーツや一部報道番組だけ。ドラマ制作の体力は奪われつつある」と危機感を示す。広告収入も減少傾向にあり、制作費を十分に確保できない現実がある。


一方、Netflixは潤沢な制作予算を背景に大胆な企画を実現し、結果として視聴者の流れを加速させている。10周年イベントは、日本の映像産業における構造変化を象徴する場でもあった。

 

アニメと実写 ― 世界で存在感を増す日本発作品

Netflix全世界の総視聴時間は2024年前半で940億時間を突破。その中で日本発コンテンツ、とりわけアニメの成長が顕著だ。2024年にはアニメの視聴回数が10億回を突破し、過去5年間で3倍に拡大。

「アニメはもはや主流」とNetflix自身が位置付けるほどで、世界の利用者の半数以上がアニメを視聴している。

実写作品でも、日本発の成功例が相次いだ。山田孝之主演の『全裸監督』は国際的注目を集め、佐藤信介監督の『今際の国のアリス』は世界70以上の国と地域でトップ10入り。日本の映像作品がグローバル市場で存在感を放つ時代に突入している。

『地面師たち』で実感したNetflixのスピード感と自由度

大根仁監督は『地面師たち』制作を振り返り、「映画やテレビで通らなかった企画をNetflixに持ち込んだら、その場で“やりましょう”と即決された。企画と脚本を優先し、キャストは後から考えるという姿勢は国内の制作環境と大きく違った」と語った。
この「スピード感」と「自由度」は、既存メディアにはないNetflixの特長として多くのクリエイターに支持されている。

世界基準の演出 ― 佐藤信介監督『今際の国のアリス』

佐藤監督は「海外の観客でも理解できる脚本づくりを意識したのは初めて」と回想。従来の国内作品では「明るく分かりやすく」と求められることが多かったが、Netflixでは「ダークで上質なルックを」と提案され、新たな挑戦が可能になったという。世界を前提とした制作手法が、日本発作品を次のステージへ押し上げている。

山田孝之『全裸監督』から『国民クイズ』へ

山田孝之は『全裸監督』出演を決めた当時を「撤退説が囁かれていたが、だからこそチャンスだと思った」と語った。海外進出を意識して英語を学んでいたが、「日本語の題材で世界に挑戦できることに気づいた」と、Netflixがキャリアの転機になったと明かす。

次回作『国民クイズ』では司会者K井K一を演じると同時に脚本開発にも参加。「マンガ的要素をどこまで実写に落とし込むかが難しかった」と挑戦の難しさを語った。

 

各監督が挑む新作 ― 「Sci-Fi」「自然環境」「世界規模」

  • 大根仁監督は「東京の現代劇とは180度違う、自然環境で“とんでもない敵”に立ち向かう物語」に挑戦。
  • 佐藤監督は『今際の国のアリス』チームとともに「日本発の本格Sci-Fi作品」を制作中で、Netflixの髙橋真一氏は「ターミネーター×ストレンジャー・シングスのような作品」と説明。
  • 藤井道人監督は「世界を舞台に戦える日本作品」を目指し、激しいアクションで“日本人にとっての豊かさ”を問い直す。

新作群は、日本発コンテンツをさらに世界市場に押し広げる試金石となりそうだ。

山田孝之「俳優のギャラを上げてほしい」

イベント終盤、山田は「日本の俳優ももう少しギャラを上げてほしい」と直言。
「Netflixは他より条件が良いが、依然として俳優はCM頼み。スキルで稼げる環境が必要」と訴えた。

大根監督や佐藤監督からも「スタッフの健康や労働環境の改善」が求められ、制作環境をどう整えるかが今後の課題に浮かび上がった。

 

結び

『地面師たち』『全裸監督』『今際の国のアリス』は、日本発コンテンツが世界で通用することを証明した。登録者数1,000万人突破の裏側には、民放の苦戦と広告収入減少という現実がある。
SNSでは「テレビよりNetflix」という声が一般化しつつあり、視聴習慣の変化が業界構造を根底から揺るがしている。

次の10年、Netflixには作品のグローバル展開と同時に、俳優やスタッフの待遇改善を含めた持続可能な制作環境づくりが求められる。日本の映像産業は、民放の危機感と配信の躍進が交錯する大きな転換期に立っている。


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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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