
鳩山由紀夫元首相(78)が中国・北京で行われた「抗日戦争勝利80年」の軍事パレードに出席したことで、国内外で波紋が広がっている。元首相という肩書きが中国側のプロパガンダに利用されるのではとの懸念が噴出する一方、歴史に向き合う姿勢への評価もある。
さらに、長男の鳩山紀一郎衆議院議員や国民民主党・玉木雄一郎代表らからも「中止すべき」との声が上がり、家族や政界内でも意見の隔たりが浮き彫りになった。
突然トレンド入りした“元首相の中国出席”
3日午後、SNSや検索トレンドに「鳩山由紀夫」の名前が急浮上した。背景にあるのは、中国・北京で行われた軍事パレードへの出席報道だ。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」で青山和弘氏は「中国にとって、元首相という肩書は利用価値が高い」と指摘し、プロパガンダ利用の懸念を示した。日本政府の公式関与はないが、国際社会には「日本の元首相も参加している」という印象が広がることになった。
鳩山外交の軌跡と「友愛」理念の継続
鳩山氏は2009年の民主党政権において「東アジア共同体」構想を提唱し、米国偏重の外交からアジア重視の外交へと舵を切ったが、普天間基地問題で退陣。
その後も「友愛外交」を掲げ、2013年には南京大虐殺記念館で謝罪の意を示し、中国で歓迎された一方、日本国内では批判を受けた。2015年には抗日戦争勝利70周年式典にも出席しており、今回の80周年パレードへの参加はその延長線上と見ることができる。
息子・紀一郎議員が“中止要請”、政界からも批判
長男で国民民主党の鳩山紀一郎衆議院議員(49)は、父の参加予定について「中止を要請した」と明かし、「元首相が中国政府の戦勝行事に出席する必要はない」と主張した。
国民民主党の玉木雄一郎代表も「インドでさえ欠席している中、参加は中国のプロパガンダに利用されかねず遺憾だ」と苦言を呈し、党内でも否定的な見解が確認された。家族と政党双方からの“ブレーキ”がかかっていたにもかかわらず、鳩山氏は参加を強行した形となった。
2009年の衆院選で民主党は自民党に圧勝し、戦後初めて本格的な政権交代を実現した。
その象徴的存在が鳩山由紀夫氏であった。掲げた「脱官僚依存」「政治主導」は国民の期待を集め、子ども手当や高校授業料無償化など生活支援政策が打ち出された。しかし、財源問題や実現可能性の欠如が露呈し、政策は次第に批判を浴びた。
特に普天間基地移設を巡る「最低でも県外」の公約は守られず、迷走の末に辞任。
鳩山退陣後、菅直人、野田佳彦と首相が交代したが、民主党政権は一貫して「理想と現実の乖離」に苦しんだ。鳩山政権はその幕開けを飾り、同時に期待と失望の落差を象徴する存在となった。
政治家・鳩山由紀夫の経歴と退任後の活動
鳩山由紀夫氏は1947年生まれ。祖父は首相の鳩山一郎、父は外務大臣の鳩山威一郎という政治家一族の血筋に育った。東京大学工学部を経て米スタンフォード大学で博士号を取得、1986年に政界入りした。
退任後は「友愛」を理念に掲げ、独自の政治活動を展開。2013年には一般財団法人「東アジア共同体研究所」を設立し、地域統合や歴史認識問題に取り組んだ。またロシア・クリミアを訪問するなど外交的に物議を醸す行動も多く、そのたびに国内では批判と議論を呼んだ。こうした歩みは、今回の軍事パレード出席を理解するうえで欠かせない背景である。
ネットの賛否と今後の含意
SNSでは「歴史を学ぶ姿勢は評価できる」と肯定的な声もある一方、「また波紋だ」「嫌な予感しかしない」と否定的な意見が多数を占める。
特に「元首相の肩書きがついて回る以上、個人の自由にとどまらない」との指摘が目立つ。
今後、政府が公式なコメントを出すかは不明だが、国際報道を通じ「日本の元首相が抗日戦争勝利を称賛」と受け止められる可能性は残る。理想主義と現実政治のギャップをどう埋めるのか――鳩山氏の存在は今もなお日本政治に問いを投げかけ続けている。