
神戸市で起きた女性殺害事件で逮捕された谷本将志容疑者(35)。3年前の裁判で「再犯が強く危惧される」と指摘されながらも執行猶予付きの有罪判決を受けていた。今回の凶行は、その警告が現実となった形だ。なぜ再犯を防げなかったのか。司法判断の在り方や制度の限界が、改めて問われている。
事件の概要
神戸市中央区のマンションで、会社員の片山恵さん(24)が殺害された事件で、警察は東京都新宿区の会社員・谷本将志容疑者(35)を殺人の疑いで逮捕した。
捜査関係者によると、谷本容疑者は片山さんの退勤直後から行動を共にし、阪神電鉄やポートライナーを乗り継いで自宅マンションまで追跡したとみられる。防犯カメラには、片山さんと同僚3人が会社を出た直後に、後をつけるように歩く男の姿が記録されていた。その後、片山さんが1人になったところを追い続け、マンションへ侵入したとみられる。
過去の前歴と判決
谷本容疑者は2022年、神戸市内で女性に対するストーカー規制法違反、住居侵入、傷害などの罪で起訴された。被害者女性に対して約5カ月にわたり付きまといを繰り返し、住居に侵入して首を絞めるなど危険な行為に及んだとされる。
当時の神戸地裁判決では、安西二郎裁判長が以下のように指摘していた。
「被告人の思考の歪みは顕著であり、再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」
しかし、判決は懲役刑に執行猶予を付ける内容だった。
今回の行動と計画性
新たな捜査で、谷本容疑者は事件の3日前から神戸に滞在していたことが分かった。宿泊先は片山さんの勤務先から数百メートルしか離れておらず、事件当日も予約を入れていたが、犯行後は宿泊せずに東京方面へ逃走した。
奥多摩町で身柄を確保されるまでの2日間の行動は不明だが、犯行のために神戸へ滞在した可能性が高いとみられている。
司法判断への疑問
判決で「再犯が危惧される」と指摘されながらも執行猶予が付与されたことについて、司法判断の妥当性に疑問の声が上がっている。
ネット上では、
- 「加害者を守る司法に納得できない」
- 「再犯リスクを認識しながら執行猶予を付けたのは間違い」
- 「被害者を守る制度に改めるべきだ」
といった意見が多く寄せられている。
再犯防止制度の課題
日本では刑事裁判において「更生の可能性」を重視し、初犯や被害者に命の危険がなかった場合には執行猶予が付くケースが少なくない。しかし、ストーカーや性犯罪など特定の犯罪は再犯率が高いと指摘されており、再発防止策が十分に機能していない現実がある。
今回の事件は、司法制度が被害者を守ることに十分な役割を果たしているのか、改めて議論を呼んでいる。
なぜ防げなかったのか?社会に突き付けられた課題
今回の神戸女性殺害事件は、3年前の裁判で「再犯が強く危惧される」と指摘された人物が執行猶予中に再び凶行に及んだという点で、大きな衝撃を与えている。司法判断が妥当であったのか、また再犯を防ぐ仕組みが十分に機能していたのかという問題は、今後の社会全体の議論を避けて通れないだろう。被害者の命を守るために、判例に依存した量刑判断の在り方や、再犯防止の監視・支援体制の強化が求められている。