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お祭りの起源とは?神話からはじまる日本のお祭りの歴史と意味

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夏祭り フリー素材
フリー素材.comより

日本各地で四季折々に催される「お祭り」は、地域の風物詩として人々に親しまれ、観光や地域振興の場としても大きな役割を果たしています。けれども、そもそも祭りとは何のためにあるのでしょうか?
神様への感謝や祈り、祖先の供養、厄払いや五穀豊穣など、そこには古代から受け継がれてきた日本人の精神性が息づいています。
本記事では、神話に記された祭りの起源から、日本三大祭りの歴史、多彩な祭礼のかたち、そしてユネスコ無形文化遺産にも登録される伝統の継承まで――。
知っているようで知らなかった「お祭りの本当の意味」に迫ります。

 

お祭りとは何か ― 神を祀る「ハレの日」の意味

私たちが「お祭り」と聞いて思い浮かべるのは、にぎやかな屋台や太鼓の音、華やかな花火や踊りかもしれません。しかしその根底には、遥か昔から続く“祈り”と“感謝”の営みがあります。

「お祭り」という言葉は、「祀る(まつる)」に由来します。もともとは神様や祖先の霊に感謝を捧げ、願いを届けるための儀式であり、そこに集落や地域の人々が心を一つにする共同体の営みがありました。

この文化の根幹には、日本人が古くから大切にしてきた「ハレ」と「ケ」の考え方があります。
「ケ」は日常の営みを、「ハレ」はその対極にある特別な非日常を意味し、お祭りはこの「ハレ」にあたります。日常である「ケ」に疲れた人々が、祭りという「ハレ」によって心を解き放ち、新たな活力を得る――。その営みこそが、長く祭りが続いてきた理由でもあります。

神を祀る厳かな儀式だけでなく、賑わいの中に込められた人々の願い、命を敬う心、季節を感じる感性。お祭りは、日本人の精神文化そのものと言っても過言ではないのです。

神話に見るお祭りの起源 ― 天の岩戸と八百万の神々

お祭りの起源をさかのぼると、日本最古の歴史書『古事記』に記された神話「天の岩戸隠れ(あまのいわとがくれ)」にたどり着きます。

物語の主役は、太陽の神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)。その弟・須佐之男命(すさのおのみこと)は粗暴な振る舞いで神々の世界を乱し、怒りと悲しみに打たれた天照大御神は天の岩戸に身を隠してしまいます。すると世界は闇に包まれ、五穀は実らず、災いが蔓延するようになりました。困り果てた八百万(やおよろず)の神々は、天照大御神を外に呼び戻すため、岩戸の前で歌い、舞い、賑やかに宴を催しました。

その楽しげな音と笑い声に興味を持った天照大御神が岩戸から顔をのぞかせた瞬間、力を合わせた神々が岩戸を開け放ち、再び光が世に戻ったといいます。

この「どんちゃん騒ぎ」こそが、お祭りの始まり――。そう語り継がれてきたのです。

この神話が象徴するのは、「祭り=人々の力と喜びが世界を変える」というメッセージです。
どんなに暗い時代でも、知恵を出し合い、心を一つにすれば希望は生まれる。日本の祭りには、そんな普遍的な願いと明るさへの祈りが込められているのです。

そして、この物語を受け継ぐように、古来より日本人は自然や季節の変化を神の働きと信じ、春には豊作を願い、秋には収穫に感謝し、祭りを通じて祈りを捧げてきました。

時代とともに変化したお祭りのかたち

 

神話の時代から続いてきたお祭りは、歴史の流れとともにその形を少しずつ変えてきました。
古代において、お祭りは自然の恵みに感謝し、神に祈る神聖な儀式として営まれていました。春には種まきの成功を願い、秋には五穀豊穣への感謝を捧げる――。こうした農耕儀礼は、村落共同体の心を結び、日々の暮らしを守る大切な節目でもありました。

やがて中世に入り、都市が発展し始めると、お祭りの姿にも変化が現れます。地域の守り神への信仰や、寺社の祭礼に人々が集まるようになり、儀式に加えて賑やかな行事や芸能が組み合わさっていきます。神輿や山車の登場もこの頃から本格化し、人々の信仰と娯楽が重なる「ハレの日」としての祭りが定着していきました。

そして江戸時代になると、お祭りは庶民文化の中心にまで発展します。町ごとに担がれる神輿、絢爛な山車、威勢のいい掛け声やお囃子が町を彩り、観る者をも巻き込む一大イベントとなっていきました。祭りは地域の誇りであり、職人技や芸能、衣装、食文化など、暮らしの中の多様な文化を一堂に披露する場でもあったのです。

しかし、明治時代になると、神仏分離令の影響や都市の近代化により、多くの祭りが縮小や中止を余儀なくされました。それでも、戦後の復興とともに再び祭りは息を吹き返し、地域の活力や観光資源として再評価されていきます。

現代では、伝統的な祭りに加え、桜まつりや雪まつり、外国文化を取り入れたイベント型の祭りなど、多種多様な形で受け継がれています。祈りの場から娯楽へ、娯楽から交流へ――時代によってその姿を変えながらも、「人と人がつながる」場としてのお祭りの本質は、今も変わっていないのです。

代表的な日本三大祭り ― 祇園・天神・神田

全国に約30万件あるとも言われる日本のお祭り。その中でも“日本三大祭り”と称されるのが、京都の祇園祭(ぎおんまつり)、大阪の天神祭(てんじんまつり)、東京の神田祭(かんだまつり)です。いずれも1000年を超える歴史を持ち、都市の文化と信仰、そして民の誇りが結晶した、まさに日本を代表する祭礼です。

祇園祭(京都府・八坂神社)

京都の夏を象徴する祇園祭は、869年、疫病の流行を鎮めるために始まったとされます。ひと月にわたり様々な神事が行われ、なかでも7月17日と24日の「山鉾巡行」は圧巻。絢爛豪華な山鉾が都大路を巡る姿は“動く美術館”と呼ばれ、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

この祭りの根底には、疫病退散と都市の平穏を祈る「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」の精神が息づいており、現代のコロナ禍を経験した私たちにとっても、時代を超えて共感できる祈りの形といえるでしょう。

天神祭(大阪府・大阪天満宮)

大阪の夏の風物詩として知られる天神祭は、学問の神様・菅原道真を祀る大阪天満宮の神事です。951年に始まり、今なお毎年7月24日と25日に盛大に開催されます。特に見どころは、大川を100隻以上の船が行き交う「船渡御(ふなとぎょ)」と、夜空に咲く奉納花火の共演。火と水が織りなす幻想的な光景は“浪速の夏のハイライト”ともいえます。

この祭りのルーツもまた、疫病鎮静の祈願にあり、古代からの信仰と、庶民のにぎわいが融合した祭りの典型です。

神田祭(東京都・神田明神)

江戸時代から“天下祭”と呼ばれた神田祭は、江戸総鎮守・神田明神の祭礼で、徳川将軍家からも崇敬を集めていました。2年に1度、5月に開催され、氏子108町会を巡る神幸祭や、200基を超える神輿が一斉に神社へ戻る神輿宮入は、まさに江戸の粋と活気を今に伝えるものです。

歴史的にも、徳川家康が関ヶ原の戦勝祈願をしたと伝えられ、その勝利によって江戸幕府が開かれたことから、“天下統一の縁起祭”とも称されます。


三祭りに共通するのは、「神を迎え、街を巡り、祈りとともに賑わいを届ける」という構造です。そしてそれぞれが、地域の気質や文化を映し出す鏡でもあります。
都の雅、大阪の人情、江戸の粋――。
三大祭りは、ただの観光イベントではなく、都市の精神そのものが詰まった、壮大な文化遺産なのです。

文化をつなぐ ― 無形文化遺産と祭りの未来

長い年月をかけて地域に根付き、世代を超えて受け継がれてきた日本のお祭り。その価値は国内にとどまらず、世界からも注目されています。なかでも「山・鉾・屋台行事」は、18府県33件がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本の祭礼文化を象徴する存在となっています。

「無形文化遺産」とは、技術や芸能、習慣など、形のない文化を未来へ残すために定められた国際的な保護制度です。お祭りの中に込められた祈りや信仰、職人の技術、地域の結束力――それらすべてが人類共通の財産として評価された結果とも言えるでしょう。

たとえば、京都の祇園祭に登場する山鉾や、秩父夜祭の屋台には、漆芸・金工・染織などの高度な伝統工芸技術が集結しています。単なる行事ではなく、「生きた総合芸術」としての側面も持ち合わせているのです。

しかし一方で、現代の社会ではお祭りの存続が危ぶまれる声も少なくありません。少子高齢化、都市化、働き手不足、担い手の減少、そして伝統技術の継承困難など、地域の祭りは多くの課題に直面しています。祭りに関わる人たちの「継ぎ手がいない」という現実は、全国各地で共通する悩みとなっています。

それでも、多くの地域では工夫と挑戦を続けています。地元の若者や移住者を巻き込んだ担ぎ手育成、観光客や外国人の参加を促す開放的な祭りづくり、デジタルアーカイブやVRによる記録と継承――。伝統を守るだけでなく、「続けるために変わる」努力が始まっているのです。

お祭りは、ただ懐かしむための文化ではありません。人と人をつなぎ、地域を元気にし、未来に希望を託す力を持っています。形は変われど、その心――「祈り」「感謝」「つながり」を大切にする精神が受け継がれていく限り、日本のお祭りはこれからも生き続けるでしょう。

さいごに:お祭りから見える日本人の心と文化

お祭りとは、単に賑やかで楽しいイベントではありません。そこには、自然や神仏への祈り、祖先への敬意、そして地域の人々とのつながりといった、日本人の精神文化の根幹が宿っています。

神話の時代から続く“祀る”という営みは、やがて共同体の節目となり、都市の大衆文化へと発展し、現代では観光や国際交流の場にまで広がってきました。祭りの姿は時代とともに変わりながらも、「人々の祈り」と「感謝の気持ち」を形にするという本質は今も変わっていません。

お祭りは、心をひらき、人と人をつなぎ、私たちに“生きる力”を与えてくれる存在です。
次にあなたがどこかの祭りに出会ったとき、そこにある祈りと歴史に少しだけ思いを馳せてみてください。
きっと、その瞬間から祭りの見え方が変わるはずです。

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ライター:

女性向け雑誌にて取材・執筆及び編集に従事。独立後は、ライフスタイルやファッションを中心に、実体験や取材をもとにリアルな視点でトレンドを発信。読者が日々の生活をより豊かに楽しめるような記事を提供し続けていることがモットー。

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