
ホテルが高すぎる、空いていない──そんな悩みに、まさかの場所が応えた。ローソンが始めるのは、店舗駐車場を活用した「車中泊サービス」。24時間営業の安心感と手頃な価格が魅力だ。旅人、ビジネス出張者、物流業界…さまざまなニーズに寄り添う“泊まれるコンビニ”の可能性と課題とは?
コンビニが一晩の宿になる時代
2025年7月、ローソンは全国の店舗駐車場を活用した車中泊サービスの実証実験をスタートさせた。1泊2,500〜3,000円、1店舗1日1台限定というかたちで、まずは千葉県内の6店舗から始まる。
サービス対象となるのは、観光やドライブの拠点として人気の高い房総半島エリアを中心とした以下の6店舗だ。
- 一宮東浪見店(長生郡一宮町)
- 御宿新町店(夷隅郡御宿町)
- 天津小湊店(鴨川市)
- 富浦インター店(南房総市)
- 南房総岩井海岸店(南房総市)
- 富津湊店(富津市)
いずれも観光地や海岸線に近く、キャンプや海水浴、ドライブ旅行などに訪れる人が多いエリア。ホテルや旅館の数が限られていたり、宿泊費が高騰していたりする場所で、コンビニが“泊まれる拠点”になるというのは大きな価値がある。
予約は「RVパーク.jp」で事前に決済し、当日は店舗で本人確認をすればチェックイン完了。トイレ・電源・ごみ処理が利用可能で、24時間営業の店舗という安心感も大きなポイントだ。
利用するのは、旅人だけじゃない
一見すると旅行者向けのサービスのようだが、実際にはそれ以上に幅広いニーズが想定されている。
たとえば、郊外の工業団地へ出張に訪れたビジネスパーソン。遅い時間まで仕事をして、帰れなくなったときにホテルが見つからない…そんなとき、“泊まれるコンビニ”があることは大きな助けになる。
また、トラックドライバーや配送業の人たちにとっても、長時間の運転の合間に安心して休憩・宿泊できる場所は貴重だ。これまでは「暗黙の了解」でコンビニの駐車場に車を停めていた人も多かったが、今回のサービスによって、正式に予約して滞在できる選択肢が生まれることになる。
加えて、鉄道やバスの終電を逃した人、週末の軽い旅行や釣り・キャンプ帰りなど、「今夜だけ、手軽に・安全に・静かに過ごしたい」という人にとっても、このサービスはフィットする。
夏場のアイドリングなど、課題もある
一方で課題もある。とくに夏場の車中泊では、エアコンを使うためにアイドリング状態を続けなければならず、周辺住民への騒音や排気ガスといった迷惑につながる可能性がある。今後は「アイドリング制限」や「電源による冷房支援」などの対策が求められるだろう。
また、トイレや電源があるとはいえ、シャワーやベッドといった設備はない。あくまで短時間の滞在向けの設計であり、快適さよりも“緊急時や最低限の宿”としての役割を担うサービスだといえる。
“新しい宿泊インフラ”としての可能性
ローソンの車中泊サービスは、単なるサービス拡充ではない。都市部と地方の格差、ホテル価格の高騰、そしてモビリティの多様化といった社会背景のなかで、「泊まる場所がない」問題に一石を投じる取り組みだ。
全国に展開するコンビニというインフラが、観光地や郊外の“宿不足”を支える役割を果たす。今後、他社が追随すれば、「コンビニで泊まる」というスタイルが当たり前になる日も近いかもしれない。