補助金2355万円を東京都が返還命令 元職員の薬物事件受け

公益社団法人「日本駆け込み寺」(代表理事・清水葵)に対し、東京都は6月30日、交付済み補助金計2355万円の返還を命じた。対象となったのは2023年度の一部と2024年度の全額で、元事務局長・田中芳秀容疑者が麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたことを受けた対応となる。
都の福祉局は、田中容疑者が相談者の若年女性に薬物を勧めたと認定。職員が個人携帯で相談者とやり取りしていた実態も「安心できる支援体制に反する」と判断され、交付要綱に違反するとして補助金の取り消しと返還が決まった。
玄秀盛氏が代表辞任 新団体を立ち上げ再起を誓う
こうした経緯を受け、「日本駆け込み寺」の創設者である玄秀盛氏は、5月31日付で代表理事を辞任。7月1日、自身のFacebookで新団体「聖菩蓮新宿駆込寺(セイボレンシンジュクカケコミデラ)」の立ち上げを発表した。
玄氏は「23年間の駆け込み寺活動をこのまま終わらせるわけにはいかない」と語り、原点回帰の姿勢で活動再開を誓った。6月中は謝罪と支援金の募りに奔走し、全国からの寄付によって7月以降の活動資金を確保。「天は見離さなかった」と感謝の言葉を述べた。
歌舞伎町で再び始まる「たった一人を救う」活動
新たに設立された「聖菩蓮新宿駆込寺」は、東京都新宿区歌舞伎町の林ビル2階を拠点とし、30代以上を対象にした有料・会員制の相談所として再始動した。玄氏が直通で対応し、引きこもりやDV、出所者支援など、既存制度では救いきれない層に向けた支援を掲げる。
団体名の「聖菩蓮」は、「聖人」「菩薩」「蓮華」「駆込寺」の4語を合わせた造語で、「煩悩の泥の中でも咲く蓮の花のように、歌舞伎町の若者たちを導く」という理念が込められている。
「日本駆け込み寺」はZ世代に特化 路上の若者支援続ける
一方、公益社団法人「日本駆け込み寺」は代表理事・清水葵氏(26)のもとで継続し、Z世代を主軸とした若年女性の支援に重点を置く方針。電話、メール、LINEを通じた無料相談に加え、歌舞伎町では一日2回の清掃活動も継続する。
若年女性の路上売春や「トー横キッズ」などの支援は、引き続き法人側が担う形となり、玄氏の新団体とは対象層と支援形態を分けて展開する構図となった。
表と裏の社会を知る玄氏 23年の活動に新たな一歩
玄氏は、大阪市西成区出身。28種の職業経験を経て、2002年に白血病の診断を受けたことを機に「駆け込み寺」活動を開始した。2011年には日本財団の支援により公益法人化。2013年には日本国籍を取得し、刑務所出所者支援や悪質ホスト問題、風営法改正などにも尽力してきた。
Facebookでは、「解決できないものはない」「たった一人のあなたを救う」といった座右の銘を再掲し、「命尽きるまで、不惜身命で邁進する」と表明した。
今後の活動と支援体制に注目
新設された「聖菩蓮新宿駆込寺」では、予約制で一日5組までの面談を受け付けており、講演や出張相談にも対応する。活動の資金源として、1口1,000円・5,000口の寄付募集も行っている。運営は個人ベースながら、弁護士や司法書士など支援者が集まりつつあるという。
なお、日本駆け込み寺の補助金返還問題については、都政の制度設計の甘さや、支援現場における倫理体制の見直しも今後の焦点となりそうだ。