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【2025年関税ショック】トランプ政権の「解放記念日」政策に世界が反発 日本への24%関税と分断される米世論

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トランプ政権、突如発表の「相互関税」政策

トランプ関税 日本24パーセント
DALL-Eで作成

4月2日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、全輸入品に一律10%の「基本関税」を課すとともに、中国、日本、ドイツなど特定国からの輸入に最大24%の追加関税を課す「相互関税」政策を発表した。政権はこれを「経済的主権の回復」と位置づけ、「解放記念日」と銘打って全米に向けて宣言。国際秩序を揺るがす一手となった。

ホワイトハウスは声明の中で、長年続いた「誤った自由貿易政策」からの脱却と、国内産業の再興を掲げた。通商代表部は「米国経済と国家安全保障の再設計」とまで述べ、国家政策としての関税導入に本腰を入れた姿勢を明確にしている。

 

「公平な貿易」を掲げる支持者たち──ホワイトハウスに並ぶ賛同の声

今回の政策には、超党派の政治家や産業界、保守系シンクタンクから多数の支持が寄せられた。民主党のジャレッド・ゴールデン下院議員は、トランプ大統領の構想が自身の「BUILT USA法案」に通じるとし、「関税による環状フェンスが、製造業の再建と貿易赤字の是正につながる」と歓迎した。

業界団体もこぞって賛同する。全米牛肉生産者協会は「海外での不公正な扱いに対抗する正当な措置」とし、鉄鋼製造業者協会のフィリップ・ベル会長は「関税によって200億ドル超の投資が鉄鋼業界に呼び込まれた」と効果を訴える。さらに、アメリカ製造業連盟のスコット・ポール会長は「ようやく労働者に公平な競争の機会が訪れた」と、トランプ政権の決定を歴史的転換点とみなした。

ホワイトハウスの公式サイトには、電気工事業者、繊維業界、乳製品、建設資材、農業関連団体など、各業界代表が名を連ね、関税の効果を称賛している。「中流階級への投資」との声も上がり、かつて製造業に従事していた「忘れられたアメリカ人」への再投資として評価する向きもある。

 

分断されるアメリカ国内──食料品価格上昇に懸念も

しかし、米国内の世論は一枚岩ではない。ロイター/イプソスが4月に実施した最新の全国調査によれば、70%のアメリカ人が「関税は消費財や食料品の価格上昇を招く」と回答している。共和党支持者に限っても62%が同様の懸念を示しており、今回の政策が生活コストに直結するという認識は広く共有されている。

加えて、53%が「関税は利益より害が大きい」とする見方に同意し、肯定派(31%)を大きく上回った。さらに、「関税でアメリカの労働者が有利になる」との命題にはわずか31%しか賛同せず、48%が否定的だった。

エコノミストの間でも「関税は実質的に国内消費者への課税に等しい」との指摘が相次ぎ、生活者負担の増大が予測されている。世論は、経済ナショナリズムと現実的な購買力の間で、大きく揺れている。

「Made in USA」回帰の裏で、日本経済にも暗雲

こうしたアメリカの通商政策の矛先は、日本にも向けられている。今回、日本は最大24%の相互関税の対象国とされ、特に自動車、鉄鋼、機械部品の輸出が直撃を受ける見込みだ。これを受けて、日本政府は「極めて遺憾」とする声明を発表し、関税免除に向けた交渉を開始した。

一方、民間企業ではトヨタ自動車、日立製作所、コマツなどのグローバル製造企業が、対米輸出戦略の見直しを急ぐ。サプライチェーンの組み替えや米国内での生産シフトが再び議論され、短期的な対応が迫られている。

日本銀行が4月に発表した短観では、大企業製造業の景況感が一転して悪化。日経平均株価もこの関税発表を受けて一時4.6%下落し、投資家心理にも影を落としている。

 

世界に広がる「貿易戦争」──米国主導の経済再編はどこへ向かうのか

中国と欧州連合(EU)は即座に「報復措置」を示唆し、世界貿易秩序の崩壊を危ぶむ声が広がっている。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は「世界経済に深刻な打撃を与える」と述べ、緊急首脳会談の開催を示唆した。

貿易摩擦が拡大すれば、グローバル経済の成長減速は避けられない。世界銀行やIMFもすでに「2025年の世界成長率見通し」を引き下げる準備に入ったと報じられており、相互関税は単なる国内政策にとどまらず、地政学的な波紋を広げている。

 

「グローバル」と「生活コスト」のはざまで

本稿では、政策発表当日の声明や産業界の反応だけでなく、アメリカ国内における「関税と生活者のリアルな接点」に焦点を当てた。支持と反発が激しく交錯するいま、重要なのは「誰のための政策なのか」を見極める視点である。

企業ではなく、家庭にとっての影響。短期の政治的得点ではなく、中長期の産業構造の帰結。経済安全保障と生活者の財布、この二つの天秤の揺れは、やがて選挙という形で現れるだろう。


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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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