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ZUUが経済界を子会社化、伝統メディアの未来はどうなるのか

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経済界HPより
経済界のHPより

3月19日、フィンテック・メディアを展開するZUUが、老舗経済誌「経済界」を発行する株式会社経済界を子会社化することを発表した。これにより、ZUUは40.3%の議決権を取得し、3月末までに取締役の過半数を選任する予定である。

経済界は60年の歴史を持つ出版社であり、経済誌の出版だけでなく、「経済界大賞」や「経済界倶楽部」といった経営者向けのネットワークを構築してきた。ZUUによる買収は、伝統的なメディアとデジタルメディアの融合という新たな試みであるが、果たしてどのようなシナジーが生まれるのか。

 

財界の「三鬼」、経済界の「佐藤」

戦後の高度経済成長期、企業経営者と対等に渡り合い、鋭い視点で報道を展開してきたのが「経済界」だった。財界の「三鬼」(三鬼陽之助)と並び称される存在として、経済界の「佐藤」こと佐藤正忠主幹は、日本経済の最前線を走る企業人と対話し続けた。

近年では、佐藤氏の長女有美さんが率いる形で、しっかりと経済界倶楽部などで数多くの企業経営者を集客しているイメージがあった。筆者もホテルニューオータニの講演会に参加し、交流会で多くの人との名刺交換の機会を得た思い出がある。ただ、一般の人にとっては、人気YOUTUBE番組の「政経電論」の佐藤尊徳氏のイメージの方が経済界を象徴するものと映るかもしれない。

2024年には経済界の60周年を記念した特別講演会が開催され、GMOインターネットグループの熊谷正寿氏が講演していた。経済界は華々しいコミュニティに映っていたのだが……。

 

ZUUの狙いと経済界の課題

一方のZUUは元野村證券のトップ営業マンであり、『鬼速PDCA』の著者としても知られる冨田和成社長が率いる上場ベンチャー企業だ。同社は金融メディア「ZUUオンライン」などを運営し、フィンテック分野におけるメディア展開を強化してきた。今回の買収によって、経済界が持つ経営者ネットワークとZUUのデジタル基盤を融合し、新たな価値創出を狙う。

しかし、経済界の経営状況は決して楽観視できるものではない。ZUUの開示情報によれば、近年は経営環境が厳しく、収益性の低下が見られた。特に紙媒体を中心としたビジネスモデルは、デジタルメディアの台頭により収益性が問われている。

一方で、経済界の読者層は高齢化しており、ZUUの若年層向けのデジタル戦略とどのようにシナジーを生むのかが鍵となる。

 

シナジーとPMIの課題

ZUUと経済界の統合において、最も重要な要素となるのはPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)が上手くいくのかどうかだろう。ZUUはデジタルネイティブな組織であり、ベンチャー気質の強い企業文化を持つ。若い社員が多い。一方の経済界は、高齢層の読者とともに伝統的な経営スタイルを維持してきた。社員で知っている人たちもそれ相応な年齢層である。

これら二つの企業文化をどう統合するかは、けっこう難しそうで、ZUUの若手中心の組織と、経済界の年長層が中心の組織の融合は容易ではないだろう。意思決定プロセスの違いや、デジタル対応のスピード感のギャップが問題となる可能性がある。また、経済界の従来の読者層がZUUのデジタルコンテンツにどこまで順応できるかも課題の一つだ。

一方オールドメディアとベンチャー企業の融合によって、どういった展開が開けるのかを想像すると、ワクワクする。具体的なシナジーとしては、経済界の読者基盤とZUUのフィンテック領域の強みを活かし、経営者向けのオンラインコンテンツを強化することが考えられる。

例えば、「ZUUオンライン」内に経済界の特設ページを設け、プレミアムコンテンツを提供することで、デジタル化を加速する。また、経済界倶楽部のデジタル化を推進し、ウェビナーやオンデマンド配信を導入することで、新たな会員層を取り込む。さらに、ZUUのフィンテック・トランザクション事業と経済界の経営者ネットワークを連携させ、企業向けのファイナンス支援や事業承継コンサルティングを提供することも視野に入るのではないか。

 

未来への展望

ZUUの冨田社長は「経済界の伝統を活かしながら、新たな挑戦をしていく」と意気込みを語る。経済界が持つ「経営者との深い関係性」をZUUがどのように活用し、デジタル時代に適応したビジネスモデルを構築するかが、今回の買収の成否を分けるポイントとなるだろう。

企業文化の違いを乗り越え、新たな経済メディアの形を築けるのか。ZUUと経済界の統合は、日本の経済メディア業界において、一つの試金石となることは間違いない。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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