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大都市でネズミが増加 背後には気候変動の影響 今後の衛生リスクと経済損失の懸念拡大

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温暖化で世界の大都市にネズミが増加
DALL-Eで生成

CNNが発表した米リッチモンド大学の研究によると、世界の主要都市でネズミの個体数が急増していることが明らかになった。この背景には気候変動が大きく影響しているという。特にワシントンD.C.やニューヨークではネズミが爆発的に増加し、インフラや公衆衛生に深刻な問題をもたらしている。

ネズミの増加が都市に与える影響とは何か、そして今後の対策はどうあるべきかを考察する。

ネズミの増加が都市部で深刻化

研究結果によると、ネズミ増加の主な要因として気候変動による気温上昇を指摘している。特にワシントンD.C.、ニューヨーク、トロント、アムステルダムなどの都市では、過去10年間でネズミが急増しており、衛生リスクの拡大、インフラ破壊、経済損失など深刻な影響をもたらしているとのこと。

世界のネズミ増加傾向 ワシントンでは390%増

米リッチモンド大学のジョナサン・リチャードソン教授(生物学)らの研究チームは、米国内13都市に加え、東京(日本)、トロント(カナダ)のデータを分析。
その調査結果は、2024年1月31日付の科学誌「Science Advances」に発表された。

16都市のうち11都市でネズミが増加。特に増加が顕著だった都市として以下の都市が挙げられた。

  • ワシントンD.C.(390%増)
  • サンフランシスコ(300%増)
  • トロント(186%増)
  • ニューヨーク(162%増)

一方で、東京、ニューオーリンズ、ルイビルでは、ネズミの減少が確認されたそうだ。

主な要因は気候変動と都市環境の変化

気温上昇が繁殖期間を延長

研究によると、ネズミの増加を最も説明できる要因は「気温上昇」だった。
ネズミは寒さに弱く、特に冬場の気温が高くなることで活動期間が延び、年間の繁殖回数が増加しているとのこと。

都市部のヒートアイランド現象

気温の上昇幅が大きい都市ほど、ネズミが増加していることが確認された。
コンクリートやアスファルトが蓄熱し、気温が高くなることで、ネズミの生存環境が整いやすくなっている。

ゴミの匂いが広がり、ネズミを誘引

気温が高いと食品廃棄物やゴミの臭いが広範囲に拡散し、ネズミを呼び寄せる要因となる。
特にゴミの管理が不十分な都市では、ネズミが集中しやすい状況が生まれている。

ネズミ増加がもたらす経済損失と衛生リスク

経済損失は年間270億ドル(約4兆円)に

今回の研究では、米国内だけでネズミによる損害額は270億ドル(約4兆円)と推計されている。
農作物の破壊、食品の汚染、建築物やインフラの損傷、健康被害に伴う医療費の増加などが主な要因とされる。

また、電線や配管をかじることで火災や停電のリスクが高まり、ゴミ箱や建物の損傷が増えるなど、インフラへの影響も深刻である。

健康被害:ネズミは50種類以上の病原菌を媒介

専門家によると、ネズミは50種類以上の病原菌を媒介しているという。
感染症に関しては以下のような感染症を引き起こす可能性がある。

  • レプトスピラ症(ワイル病)(Leptospirosis)
    ネズミなどの哺乳動物の尿から排泄された細菌が土壌や水を汚染し、これらに接触した際に皮膚や粘膜を通じて感染する。まれにヒトからヒトへの感染も報告されている。
  • サルモネラ症(Salmonellosis)
    ネズミの糞尿に含まれるサルモネラ菌に汚染された食品や水を摂取することで感染し、発熱や腹痛、下痢、嘔吐などの症状を引き起こす。
  • ハンタウイルス肺症候群(HPS)(Hantavirus Pulmonary Syndrome)
    ネズミの尿や唾液、糞が乾燥して空気中に飛散し、それを吸い込むことで感染し、重症化すると肺水腫や呼吸困難を引き起こす。
  • ペスト(Plague)
    ネズミに寄生するノミを媒介に感染し、発熱やリンパ節の腫れ、敗血症などを引き起こす。かつて14世紀に「黒死病」として大流行した。
  • リンパ球性脈絡髄膜炎(LCMV)(Lymphocytic Choriomeningitis Virus)
    ネズミの尿や糞、唾液との接触で感染し、発熱や頭痛、髄膜炎を引き起こす可能性がある。妊婦が感染すると胎児に影響を与える場合もある。

ネズミ対策の成功事例と今後の課題

ネズミ対策に成功した都市もあり、それぞれの取り組みが効果を上げている。

例えば東京では飲食店のゴミ管理の徹底や定期的な害獣駆除、街路の清掃強化などが実施されているなど厳格な衛生基準がネズミの発生を抑制している。

また、アメリカでの成功事例として、ルイジアナ州ニューオーリンズでは、市民への啓発活動を強化し、ネズミの発生源となるゴミの管理や衛生環境の改善に重点を置いている。特に飲食店や住宅エリアでのゴミの適切な廃棄を促進し、ネズミが繁殖しにくい環境を維持するためのガイドラインを策定している。

他にも、ケンタッキー州のルイビルでは、建築物の隙間をふさぐ対策や、ゴミ捨て場の密閉管理を徹底することで、ネズミが住みつきにくい環境を整えている。さらに、公共スペースの衛生管理を強化し、ネズミの餌となる食品廃棄物が外部に放置されないよう対策を講じている。

まとめ:温暖化がもたらす新たな課題

気候変動によって都市のネズミが増加し、衛生リスクや経済損失の拡大が見込まれる。「ネズミを根絶することは難しいが、管理可能なレベルに抑えることはできる」と専門家は指摘する。今後は都市ごとの対策強化が求められ、気候変動への対応も不可欠となるだろう。

【参照】
These cities have big rat problems, and there’s one thing to blame(CNN)
地球温暖化は都市にいるネズミを増加させる(東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部)

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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