石破総理、中小企業支援を強化へ 下請法改正で賃上げと価格転嫁を後押し
石破茂総理大臣は1月16日、中小企業の経営者らと会談し、下請法の改正を通じて賃上げや価格転嫁を支援する方針を示した。石破総理は「日本経済全体の活力向上、地方創生を優先課題としています」と述べ、中小企業の持続可能な成長を目指す考えを示した。
「『雇用は守るから賃金は上がらなくても勘弁してほしい』という発想を改め、価格転嫁を阻害する商習慣を一掃する」と発言し、対応を赤沢経済再生担当大臣に指示した。
さらに、適切な価格転嫁の実現や生産性向上、従業員のスキル高度化が中小企業の発展に必要であるとの見解を示したが……
中小企業を取り巻く厳しい環境
民間調査会社「東京商工リサーチ」の調査によれば、2024年の倒産件数は前年比15%増の1万6件となり、2013年以来11年ぶりに1万件を超えたとのこと。エネルギー価格の高騰や景気の低迷が背景にあり、中小企業の経営環境は厳しさを増している。
これを受け、政府は価格転嫁や取引の適正化を図るための下請法改正案を早期に国会に提出する方針を示している。また、「省力化投資促進プラン」を春に策定し、生産性向上を支援する体制を整備する計画を明らかにした。
中小企業を取り巻く厳しい現実:具体的な事例
cokiで取材したある地方の製造業者は、「コストの上昇に伴い価格を見直そうとしたが、大手取引先から価格据え置きを求められた」と苦悩を語る。この企業は原材料費が20%以上増加したにもかかわらず、値上げの交渉が難航している。
一方で、地域の素材を活用した高付加価値商品を開発し、価格転嫁を成功させた食品メーカーもいる。この企業は新商品のパッケージを工夫し、販売価格を10%引き上げたことで利益率を確保した。
専門家の視点:賃上げと価格設定がカギ
武蔵野大学教授で企業支援の専門家である秋元祥治氏は、「賃上げは経済成長に極めて重要だが、それを可能にするには中小企業が付加価値を高める努力が必要」との見解をYahoo!コメントで示した。秋元氏は省力化や人材育成の重要性を認めつつ、「適切な価格で商品を販売することも重要だ」と述べ、マーケティングや商品開発力の強化が中小企業の課題であると指摘している。
また、SNSでは、所得の増加に伴う税負担の増加やブラケットクリープ(段階的税率引き上げ)が家計に与える影響についても懸念を示す声がある。せっかく給料が上がっても、税金のせいでかえって手取りが減ることを嘆く人は当然だが、多く、これに対応するため、税制の抜本的見直しが求められているのではないだろうか。
賃上げの流れ、大手企業が牽引
一方で、大手企業では賃上げの動きが加速している。ファーストリテイリングは初任給を月額30万円から33万円に引き上げると発表した。また、三井住友銀行も来年4月の新入行員初任給を30万円に引き上げる方針を固めた。このような大手企業の賃上げが中小企業にも波及するかが注目されている。
武藤経済産業大臣は「賃上げの動きを定着させるため、今年は重要な局面」と述べ、中小企業への波及を後押しする政策の重要性を強調した。
日本経済の今後を占う賃上げの行方
新年早々に始まった賃上げの動きは、春闘などを通じて中小企業にも波及することが期待されている。政府、企業、そして市場全体が一体となり、成長と賃上げの好循環を生み出せるかが、日本経済の未来を左右する重要な試金石となる。
さて、読者の中小企業経営者に問いかけたい。価格転嫁や賃上げに対して、あなたの会社ではどのように対応しているだろうか?
民間調査会社の統計によれば、全国の中小企業の約60%が「価格転嫁の実現に課題がある」と回答している。一方で、賃上げを実現した企業は取引先との関係強化や新商品の開発に成功していることが多いそうだ。生き延びるためには、やるしかないのだ。