12月18日午前11時、和歌山県串本町の「スペースポート紀伊」から打ち上げられた小型ロケット「カイロス」2号機は、飛行中断措置が取られ、打ち上げは失敗に終わった。開発元の宇宙ベンチャー企業スペースワンは、ミッション達成困難と判断し、詳細については調査中としている。午後2時半からの会見では、状況説明が行われた。
打ち上げ直後に姿勢の乱れ
カイロス2号機は、全長約18メートルで、5基の人工衛星を搭載していた。民間単独の打ち上げで人工衛星の軌道投入に成功すれば、国内初の快挙となるはずだった。当初14日に予定されていた打ち上げは、上空の強風のため2度にわたり延期されていた。
打ち上げ中継映像では、リフトオフ直後は安定していたロケットの姿勢が、約1分半後から乱れ始めた。1段目、2段目の分離前にはすでに正常な姿勢ではなく、これが飛行中断の直接的な原因となった可能性が高い。
スペースワン、会見で説明へ
スペースワンは午後2時から会見を開き、飛行中断の詳しい原因について説明した。姿勢が乱れた原因が推力不足か姿勢制御システムの問題かはまだ不明だが、3月の1号機打ち上げ失敗の原因が自律飛行安全システムの設定ミスだったことから、システム面での問題が再び発生した可能性も否定できない。
14時半からの会見で、豊田社長は「失敗こそしたが、フェアリング開頭のステップ3まで前進することができた。原因究明し、再発防止策を明らかにする」「打ち上げから3分7秒後に飛行中段」と発言している。
打ち上げ失敗を受けて、武藤容治経産相からは「スペースワンの皆さまには決して諦めることなく、次の成功に繋げてほしい。宇宙産業に携わる皆さまには挑戦をし続けてほしい」とのメッセージがでている。
岸本和歌山県知事「めげずに挑戦を」
和歌山県の岸本周平知事は、「衛星を軌道に乗せるというミッションは達成できなかったという意味では残念だが、かなり進歩した」とコメント。スペースワンが3月の1号機失敗からわずか9ヶ月で2号機の打ち上げにこぎつけたことを評価し、「一歩前進二歩前進ぐらいの感じで、今日は和歌山県にとって記念すべき日になった」と述べた。また、子どもたちへの教育的効果についても触れ、「失敗してもめげずに挑戦する大人の姿を見せることは重要」と語った。
日本の民間宇宙開発、課題は山積み
カイロス2号機の打ち上げ失敗は、日本の民間宇宙開発の難しさを改めて浮き彫りにした。国際競争が激化する中、安全性を確保しつつコストダウンを図るという課題は、容易に解決できるものではない。
今回の失敗の原因究明と対策はもちろん重要だが、JAXAの固体ロケット「イプシロンS」も地上試験で苦戦している現状を踏まえ、固体ロケット技術の継承と発展を包括的に推進していく必要性も高まっている。
中国の躍進との差広がる
一方、中国は12月16日、国有企業の中国衛星網絡集団が低軌道通信衛星の打ち上げに成功したと発表。アメリカに対抗し、5万基以上を打ち上げて世界をカバーする独自の通信網構築を目指すという。日本の民間宇宙開発の遅れは深刻で、中国との差は開く一方だ。優秀な人材が医学部に集中し、工学系が弱いという構造的な問題も指摘されている。
カイロス2号機の失敗は、日本の民間宇宙開発にとって大きな痛手となった。しかし、岸本知事が述べたように、挑戦を続けることが重要だ。原因究明と対策を迅速に行い、早期の再挑戦が期待される。同時に、政策レベルでの支援や人材育成など、日本の宇宙開発を底上げするための取り組みも不可欠となるだろう。