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ファナック、20年以上続いた組織的不正が発覚 ガバナンス体制と説明責任が問われる重大事態

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日本を代表する工作機械メーカー大手のファナックで、欧州向け製品に関する20年以上にわたるEMC試験の不正が発覚した。
特別調査委員会の設置や再発防止策を公表したものの、コーポレートガバナンスや説明責任の課題が浮き彫りになった。

EMC試験で発覚した組織的不正

ファナックは、放電加工機「FANUC ROBOCUT」を製造する過程で、欧州市場に必須のEMC指令に適合させるための試験において不正を行っていたことが発覚した。

同社は20年以上にわたり、EMC試験で合格しやすい条件を意図的に選択し、最大ノイズが発生する負荷条件を避けた試験データを採用していた。結果として、欧州規格(EN規格)に適合しない製品を出荷するという重大な問題に発展していた。

EMC指令は欧州経済地域(EEA)の市場で販売される電子機器に課せられる厳格な規制であり、電磁波干渉を防止することを目的としている。ファナックの不正は、適正な試験を行わず、この指令に適合しない製品を出荷し続けていた点で、極めて重大な品質不正とされている。

不正の背景とその手法

不正の中心となったロボカット研究開発本部では、試験の実施において負荷条件を誤魔化す手法が取られていた。EN規格では、最大ノイズが発生する条件を事前に特定し、その条件下で試験を行うことが求められる。しかし、同部門はこの手順を省略し、顧客が頻繁に使用すると思われる条件を負荷条件に採用。さらには、無負荷の状態で試験を行うケースもあったとされる。

これにより、試験結果は信頼性を欠いたものとなり、EMC試験に合格しやすくなる一方で、実際の製品が規格の要件を満たさない状況が生じた。このような試験条件は記録にも残されておらず、不正の発覚を避けるための隠蔽工作が行われていたことも明らかとなっている。

特別調査委員会の設置と再発防止策

不正が発覚した後、ファナックは2024年4月に特別調査委員会を設置し、問題の調査に着手した。同年11月には報告書を受領し、調査結果を公表した。報告書によると、試験の不適切な実施が長期間にわたって行われていたこと、そしてこれが組織的な問題であったことが明らかになった。

同社は再発防止策として、以下の施策を発表した:

  1. 法令遵守意識の向上と教育の充実
  2. EMC試験時の独立した監視体制の構築
  3. 試験データの適切な記録と保管
  4. 社内ガバナンスの強化と内部監査の徹底

さらに、役員報酬の一部減額を決定し、経営責任の明確化にも取り組むとのこと。

特別調査委員会の調査結果報告書の受領及び今後の対応について(ファナック)
※サムネイル画像にも引用

株主・ステークホルダーへの説明責任

今回の不正により、ファナックのコーポレートガバナンス体制への疑念が浮上している。同社は「厳密と透明」を経営理念として掲げてきたが、それが十分に機能していなかったことが明らかになった。ステークホルダーの信頼回復を図るためには、再発防止策の実行に加え、ガバナンス体制の見直しや透明性の向上が必要不可欠である。

特に、株主や顧客に対して継続的な情報発信を行い、説明責任を果たすことが求められる。企業としての信頼性を回復するためには、不正の事実を隠蔽するのではなく、問題が発生した背景やその改善策を率直に伝えることが重要である。

求められる信頼性

ファナックが再発防止策を実行する中で、企業全体の文化や組織風土を変えることが大きな課題となる。法令遵守や品質管理に対する全社的な意識改革は、短期間で達成できるものではない。製造業における信頼性は、長年にわたる実績の積み重ねによって築かれるものであり、今回の事件はその根幹を揺るがすものであった。

ファナックにとって、長期的な視点での改善が求められる。その成否は、企業としての持続可能性に大きく影響を与えるだろう。

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ライター:

coki編集部の報道部門。最新ニュースを中心にESG、SDGsなどのサステナビリティでの視点やcoki報道部としての視点を発信します。

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