日産自動車が9000人規模のリストラを発表。
中間決算では大幅減益となり、構造改革を迫られている。米国でのハイブリッド車戦略の遅れ、中国市場での価格競争激化に加え、過去のガバナンス問題の影響も影を落とす。
ESG経営への転換が急務となる中、日産の再生への道は険しい。
米中市場での苦戦響く
日産自動車は2024年9月中間決算で大幅な減益を発表し、世界で9000人の人員削減を柱とするリストラ策を打ち出した。純利益は前年同期比93.5%減と深刻な状況だ。
背景には、米国と中国という二大市場での苦戦がある。
米国市場では、電気自動車(EV)人気が一巡し、燃費効率と利便性を兼ね備えたハイブリッド車(HV)の需要が高まっている。
しかし、日産はHVの品揃えが乏しく、この市場機会を逃している。
一方、中国市場ではEVが主流だが、比亜迪(BYD)などの現地メーカーとの価格競争が激化し、苦戦を強いられている。
製品戦略の迷走:市場ニーズへの対応遅れ
日産はEVに注力する戦略を掲げてきたが、米国市場ではHV需要に対応できず、中国市場では価格競争に敗北した。
内田誠社長自身も「お客様のニーズにお応えする商品をタイムリーに提供できていないことも大きな課題となっています」と認めているように、市場の動向を読み誤ったことが業績悪化の大きな要因となっている。
社内からも「売れる車がない」との声が上がるなど、製品戦略の迷走は明らかだ。加えて、経営陣の中に「クルマ好き」がいなかったことが、魅力的な商品開発を阻害したという意見も存在する。
消費者の嗜好や市場トレンドを的確に捉え、競争力の高い商品を開発していくためには、経営陣の意識改革も必要となるだろう。
ゴーン体制からの脱却と新たな課題
日産はかつてカルロス・ゴーン元会長の下で販売台数世界一を目指した拡大路線を突き進んだ。
しかし、ゴーン体制崩壊後、度重なるリストラや生産体制の見直しを余儀なくされている。
2019年には1万2500人の人員削減計画を発表、2020年にはコロナ禍の影響もあり、世界の生産能力を20%縮小する構造改革を公表した。
今回の9000人削減は全従業員の約7%にあたり、ゴーン体制からの脱却を図るも、縮小均衡から抜け出せない状況が続いている。
コーポレートガバナンスの課題
ゴーン体制下で発生した不正会計問題は、日産のコーポレートガバナンスの脆弱性を露呈した。独裁的な経営体制が、社内の健全な議論や意思決定を阻害したとの指摘もある。
ESG経営の重要性
自動車業界では、環境問題への対応が喫緊の課題となっている。
日産はEVに注力してきたものの、HV戦略の遅れなど、ESG経営への取り組みが十分とは言えない状況だ。
今後は、環境性能だけでなく、社会的な責任やガバナンスの強化にも力を入れる必要がある。
再生への道筋
日産は、リストラや生産能力削減といった痛みを伴う構造改革を進めている。
しかし、真の再生のためには、魅力的な商品開発、市場ニーズへの的確な対応、そしてコーポレートガバナンスの強化が不可欠だ。
ESG経営を推進し、持続可能な成長を実現できるか、日産の未来は正念場を迎えている。