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ヤマト運輸のヤマトHD、中間決算で赤字転落 現場の疲弊と経営陣の認識のずれ

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ネット通販低迷、単価下落響く 2024年問題、不動産ID活用で活路見いだせるか

ヤマトHDのHP
ヤマトHDのHP(スクリーンショット)

宅配便大手のヤマトホールディングス(HD)は5日、2024年9月中間連結決算で111億円の純損失(前年同期は53億円の黒字)を計上したと発表した。

インターネット通販の荷物量の伸び悩み、想定を下回る荷物単価に加え、人件費増加や貨物専用機の先行投資が業績を圧迫。中間決算の赤字転落は2019年以来となる。

現場の声は悲痛 経営陣との乖離鮮明に

ヤマトHDの栗栖利蔵副社長は記者会見で「顧客との交渉で単価アップが見込めず、収益が追いつかなかった」と説明したが、SNSなどのコメントを見ていると、現場からは不満の声が噴出しているようだ。

「単価は市況に左右されるので仕方ないとして、取扱数量が計画より少ないのに現場が疲弊していということは、経営上とてもまずい状態だと思う」「安くて良いから荷物持ってこいと言ってるのは経営陣。 副社長が言ってることは現場とかけ離れてる」と配達担当者の方と思わしきコメントが散見される。

また、クール便騒動など過去の施策の失敗や、大きくて単価の安い荷物の増加による生産性低下を訴える声も聞かれる。さらに、「上の頭の良い中間管理職は『配達増やせ!生産性上げろ!』しか言わない」「利益も出ないなら野球大会とか辞めろ」など、経営陣への不信感をあらわにする指摘も見受けられる。

「上が数字でしか判断しない。現場を知らない。稼働の台数減らされ、最近ではセンターも減らされて一軒目まで40分掛かるのに物量は増える」「 何が、カーボンニュートラル配達だ」「 午前中間に合わないから飛ばして配達。そもそもジェット機なんて買う必要ない! 現場は、故障しまくりの車両で仕事してる」と数多くのネガティブなコメントが続いていた。

統合報告書は楽観的? 実態との乖離はどこまで

ヤマトHDは、2023年10月に発行された統合報告書では、中長期の目標として、2027年度の連結営業利益率7%、ROE13%達成を掲げている(価値創造プロセスより)。また、CFOも兼ねる先述した副社長の来栖氏は中期経営計画「Oneヤマト2023」の進捗について、「満足のいくものではないが、拠点の集約・大型化、管理・間接業務の集約・標準化を着実に実行しており、成果が段階的に創出できると考えている」と説明していた。

社長の長尾裕氏も2024年問題については、パートナー企業との協議、法人顧客への提案を通じた「サステナブルな物流」の追求を強調していた。しかし、約1年経ってみて、これらの見解と、疲弊する現場の実態との間には大きな乖離があるように見える。

2024年問題と不動産ID 未来への鍵となるか

かねてより、2024年4月からの時間外労働の上限規制は、ドライバー不足と輸送コスト上昇を招く可能性が指摘されてきたが、実際に大きな課題に直面しているのだろう。事実、統合報告書で社長は、「企業間物流においては、小口・多頻度化に伴うチャーター便の積載効率低下や、契約外の荷役作業、長い荷待ち時間など、従前からの課題である非効率な商慣行の改善が特に必要と感じており、法人顧客に対して、このような課題を解決するための提案を行っていく」ともコメントしていた。

こうした状況下で注目されるのが、「不動産ID」を活用した配送効率化だ。不動産IDとは、 建物や部屋ごとに番号を振って識別できるようにする仕組み。 番号を起点に民間や行政のデータとつなぐことで、不動産や建設分野のDXのカギになると期待されている。

2024年6月に、ある実証実験の結果がヤマトHDより開示されている。不動産IDの活用が住所問題の解消に資することと、それによる配送業務効率への影響を検証する実証実験だった。結果によると、住所表記の揺れや不備による配送効率の悪化を、不動産IDによって一定レベルで解消できる可能性が示されたようだ。住所表記揺れによる調査業務が不要になる割合は、不動産IDの取得で53%得られたこと、伝票上住所に表記揺れが発生していても不動産IDにより配送が可能なことが実証されている。

実証実験を踏まえた不動産IDの評価では、住所不明荷物調査業務時間が月に約48,000時間かかっているものを0に削減できる可能性があること。および、不動産IDに座標データを連携させることで、ドローン配送やロボット配送といった新たな技術との連携によるラストワンマイル配送の革新も期待されるようだ。しかし、トラックドライバー視点での手順増加といった課題も残されている。

ヤマトHDの未来はどこに

ヤマトHDは今、大きな岐路に立たされている。ネット通販の低迷、現場の疲弊、2024年問題など、多くの課題を抱えている。経営陣は現場の声に真摯に耳を傾け、現実的な解決策を提示する必要がある。不動産IDの活用は、その一手となる可能性を秘めているが、更なる技術開発と現場への浸透が不可欠だ。

ヤマトHDの今後の動向は、日本の物流業界全体の未来を占う試金石となるだろう。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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