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ESGの温故知新 アンドリュー・カーネギー編(企業価値とESG #23)

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アンドリュー・カーネギー ESGの温故知新

アンドリュー・カーネギーは、19世紀から20世紀にかけて鉄鋼王として名を馳せ、莫大な富を築きました。

その後、慈善活動家としても知られるようになりました。カーネギーの『富の福音』は、富の集中に対する社会的責任を強調し、現代のESG(環境・社会・ガバナンス)の概念にも関わるものです。

本稿では、カーネギーの生涯とその哲学を、現代の企業が直面するESGの視点から振り返ります。

カーネギーの生涯とビジネス哲学

アンドリュー・カーネギーは、1835年にスコットランドで生まれました。貧しい家庭で育ち、1848年にアメリカに移住。

その後、製鉄業に参入し、鉄鋼業界の巨頭へと成長しています。カーネギーのビジネス哲学は、厳しい競争と効率化を推し進めるものであり、彼はこれを「成功のための自己鍛錬」としていました。

カーネギーはまた、富を成すことそのものが目標ではなく、最終的には社会のために富をどう使うかが重要だと考えていました。

この考え方は、現代の企業が利益を追求するだけでなく、社会に対する責任を果たすべきだというESGの原則と共通しています。

カーネギーの企業家精神と社会への貢献は、企業価値を定義する新たな指標を見出すヒントを提供するでしょう。

富の福音とESGの先駆者としてのカーネギー

1889年に発表されたエッセイ『富の福音(The Gospel of Wealth)』は、カーネギーの思想を象徴するものです。

彼は、「富を持つ者はそれを社会の利益のために使う義務がある」と述べており、富裕層が慈善活動を通じて社会的責任を果たすことを説きました。

この考え方は、現代のESGのS(社会)に関連しており、企業が持続可能な社会の構築に貢献するべきだという視点を早くも示していたのです。

カーネギーの慈善活動は、単なる寄付にとどまらず、公共図書館や大学、科学研究の支援など、未来を見据えた投資でした。

彼は、自らの富を後世の人々の教育や知識の向上に役立てるべきだと信じていたのでしょう。この点は、現代の企業がESGの枠組みの中で、長期的な社会的利益を追求する必要性と重なります。

『富の福音』(アンドリュー・カーネギー 著、Kindle版)
『富の福音』(アンドリュー・カーネギー 著、Kindle版)

労働問題とカーネギー

しかし、カーネギーのキャリアには暗い一面もあります。1892年に起きた「ホームステッド・ストライキ」はその象徴的な事件です。

この事件は、労働者がストライキを起こし、カーネギーの会社と対立したことから始まり、最終的には暴力的な衝突に発展しました。

カーネギー自身はこの問題の最中に不在でしたが、彼の経営者としての姿勢が問われました。

この出来事は、現代のESGにおける労働者の権利や企業の社会的責任に通じるものがあります。

企業が利益追求に走る一方で、社員の福祉や労働条件を無視すれば、社会的な非難を受け、結果的に企業価値が損なわれる可能性があるという教訓を残しました。

企業統治とガバナンスにおけるカーネギーの手法と教訓

カーネギーは、競争力を最大化するために縦割りの管理体制を導入し、効率的な経営を行いました。彼は、意思決定の迅速化と経費の削減を追求し、ガバナンスの面でも徹底した管理を行っています。

しかし、その一方で、彼の集中管理が過度に強調されることで、労働者との摩擦が生まれたという側面もあります。

現代のガバナンス(G)は、単に効率性を追求するだけでなく、ステークホルダーの意見を反映し、透明性と公正さを重視するものです。

カーネギーの手法は、効率化とガバナンスのバランスを取る難しさを示しており、企業が短期的な利益にとどまらず、長期的な持続可能性を考慮したガバナンスを築くべきだという教訓を提供しています。

カーネギーの慈善活動と社会的影響

カーネギーの人生の後半は、慈善活動に捧げられました。

彼は自らの富のほとんどを公共の利益のために寄付し、特に図書館の建設や教育機関への支援を行いました。彼の寄付によって設立された図書館は、世界中で1,600以上にも上ります。

これらの活動は、社会に対する責任を果たすことが企業や富裕層に求められるという、現代のESGの原則と合致します。

企業が利益の一部を社会に還元し、長期的な社会的影響を考慮することが、持続可能な社会を築くために不可欠であることを、カーネギーの慈善活動は示しています。

環境問題への無関心

カーネギーの時代には、環境(E)への意識がほとんど存在しませんでした。

鉄鋼業は、大規模な環境破壊を引き起こし、多くの自然資源を消費しましたが、当時のビジネス界ではこれが問題視されることはほとんどありませんでした。

カーネギー自身も環境問題については積極的に関与していなかったとされています。
しかし、現代の企業は、環境問題を無視することができません。

カーネギーの時代と異なり、今日では企業が環境への配慮を怠れば、規制や社会的非難に直面し、結果的に企業価値が下がるリスクがあります。

この点で、カーネギーの時代と現代のESGとの間には明確な違いが見られます。

現代企業におけるESGの実践への影響

カーネギーの思想と行動は、現代の企業におけるESGの実践に多くの影響を与えています。

彼の富の社会的活用の哲学は、企業が利益をどのように社会に還元するべきかを考えるうえで、貴重な教訓を提供しているでしょう。

また、労働者との関係やガバナンスの問題も、現代の企業が直面する課題と密接に関連しています。

カーネギーの功績と失敗の両面を学ぶことで、現代の企業は、利益追求と社会的責任を両立させるためのバランスを見つけ出し、持続可能な企業価値を追求するヒントを得ることができるでしょう。

出典・参考:『富の福音』(アンドリュー・カーネギー 著、Kindle版)
       アンドリュー・カーネギー – Wikipedia

次回のコラムでは、「ブロックチェーンによるインクルーシブな社会の実現」について解説します。

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ライター:

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。 プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。 2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。 現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや企業価値向上、海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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