ミンテルジャパンレポート 『不確実性時代のライフスタイル 2024年』・『食品・飲料におけるサステナビリティ 2024年』より

市場調査会社ミンテルジャパン(以下、ミンテル)が発表した2024年度版の「不確実性時代のライフスタイル」「食品・飲料におけるサステナビリティ」レポートによると、日本では地震や台風などの自然災害に対する不安が高まっている一方で、防災対策が不十分である現状が明らかになった。同レポートでは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機に、消費者の防災意識に変化の兆しが見られることも指摘されている。
こうした現状は、企業がBCP(事業継続計画)を策定し、災害に強い組織づくりを進める必要性を改めて示唆していると言えるだろう。
「災害大国」の意識と現実
ミンテルの調査によると、日本の消費者は、地震や台風などの自然災害を不安に感じている人が多い。
Z世代では35%、ミレニアム世代では44%、X世代では49%、そしてベビーブーマー世代では53%が不安を感じており、世代を超えて自然災害に対する不安が広がっている。

これは、毎年のように自然災害が発生し、甚大な被害をもたらしている「災害大国」であるという現実を反映していると言えるだろう。
一方で、一条工務店の「防災に関する意識調査2023」によると、「防災セットの準備をしている人」が約半数にとどまるなど、意識と現実のギャップが浮き彫りとなっている。

パンデミックが変えた備えの意識
このような現状ではあるものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機に、防災意識に変化の兆しも見られる。
日本でも、栄養バランスの整った「おいしい非常食」が徐々に普及すると同時に、普段の生活の中で無理なく備蓄を行う「ローリングストック」という備蓄方法も浸透してきている。
「ローリングストック」は、単に食料を備蓄するだけでなく、賞味期限切れによる廃棄を減らし、食品ロス削減にも貢献できる点で、持続可能な社会の実現にも寄与する考え方と言えるだろう。
ミンテルの調査では、パンデミックの影響で長期保存可能な食品のニーズが高まっており、普段から無理なく備蓄を行う「ローリングストック」に「備えたい、または増やしたい」と回答した人が、ミレニアル世代以降の女性では4割以上に達している。また、サステナブルについての考え方の変化も要因の一つといえる。

企業BCPは「なぜ必要」なのか
自然災害リスクの高まりと、それに伴う人々の防災意識の高まりを踏まえ、企業はBCPの策定を喫緊の課題として捉えるべきである。
BCPとは、企業が自然災害や感染症の流行などの緊急事態に直面した場合でも、重要な事業を中断させずに継続または早期復旧を可能にするための計画である。
BCPを策定する意義は、事業継続性の確保だけにとどまらない。
従業員の安全確保、取引先との関係維持、企業ブランドの保護など、多岐にわたる。
防災意識の高まりを好機に
自然災害は、いつどこで発生するか予測が難しい。企業は、いざというときに備え、事業の継続と早期復旧を図るための準備をしておくことが重要である。
今回のミンテルのレポートは、消費者の意識の変化とともに、企業がBCPの必要性を再認識し、具体的な対策を講じるべきであることを示唆しているとも言えるだろう。